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実家のレシピで熊本県表彰事業金賞受賞 未来へ伝えたい「農家のおやつ」

実家のレシピで熊本県表彰事業金賞受賞 未来へ伝えたい「農家のおやつ」

熊本県のある農家で代々受け継がれてきた、素朴なおやつが人気を呼んでいます。甘夏の生産からスタートした農家の4代目である濱崎智久(はまさきともひさ)さんは、自分の田畑で育てた農産物を自ら加工し、パッケージ製作、販売まで一貫して行う6次産業化に取り組んでいます。2014年に自社ブランド「田舎工房~農家のおやつ」を立ち上げた濱崎さんの工房にお邪魔してきました。

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子どものころから慣れ親しんだ「農業」と「我が家のおやつ」

熊本県南部に位置し、海と山に囲まれた葦北郡芦北町(あしきたぐんあしきたまち)。八代海に面する美しいリアス式海岸は県立自然公園に指定されており、夏になると海に訪れる多くの人々で賑わいます。

温暖な気候に恵まれ、甘夏や不知火などの柑橘を始め、様々な果物や野菜の栽培が盛んなエリアです。中でも1948年に栽培が始まった甘夏は、現在、出荷量全国1位を誇る特産物です。そんな自然豊かな町の中に、実家である古民家の一角を改装した濱崎さんの工房があります。

濱崎さんは、3人兄弟の長男として芦北町に生まれました。柑橘類やダイコン、ホウレンソウなど季節の野菜を手掛ける農家を生業としていた祖父母と父母は、収穫した甘夏やサツマイモ、ソラマメなどを使って毎日のように子どもたちのために、おやつを作っていたそうです。お彼岸など四季折々の行事の際には、手作りの団子や饅頭を近所の人にふるまっては喜ばれていました。濱崎さんも、弟や妹と共に幼い頃から台所に立ち、団子を丸めたり柏の葉でくるんだりといったお手伝いをやっていたといいます。

地元の短大卒業後は、熊本市内でサラリーマンとして勤務。休日は実家に戻って農作業を手伝う日々を送っていましたが、4年前の2013年に父親が亡くなったことをきっかけに、腰を据えて農業に取り組み始めました。

芦北には何でもある その豊かさが強み

農業従事者として改めて故郷を見まわした時、芦北の魅力をもっと外部にアピールできないだろうかという思いが湧いてきたという濱崎さん。「こっちに戻ってきたのはこの町と農業が大好きだと気付いたから。自分を育ててくれたこの町に何か貢献できないかと考えたんです」。そんな中、思い浮かんだのが、昔から周囲の人たちが喜んでくれた濱崎家の手作りおやつでした。

「芦北は食材の宝庫です。地元の食材で地域性の高い味を作り、それで皆を幸せにできればいいなと思ったんです」。そこで、物心ついたときから食べ慣れた我が家のおやつの販売に乗り出しました。

現在は、甘夏、不知火、スイートスプリング、スモモ、レモンなどのドライフルーツ、甘夏、不知火などのピール、そのほか柑橘のかりんとう、ジャム、季節の饅頭や団子、おはぎ、など、約30種類作っています。祖母直伝の製法と味を守り、無農薬、減農薬の食材を使って無添加で仕上げた、優しい味わいのおやつです。

ドライフルーツは、そのまま食べるのはもちろん、ミネラルウォーターや炭酸水を注ぎ、冷蔵庫で3時間ほど冷やしてデトックスウォーターにするのもおすすめです。

隣接する水俣市の和紅茶とコラボレーションしたフルーツティー、焼酎のお湯割りや水割り、サラダのトッピングに使うなど、パンフレットやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)で様々な楽しみ方を発信しています。

30年前のレシピが県の「優良新商品表彰事業」金賞に輝く

国産小麦の生地に、水の代わりに甘夏果汁を練り込み、地元の御立岬の塩で味付けをしたかりんとう『あまかりっ』は、平成29年度の熊本県優良新商品表彰事業の食品部門で、優良商品の金賞を受賞しました。地元物産館やネット通販でも高い人気を誇ります。

歯ごたえが良く、噛むほどに爽やかな甘夏の風味が広がる味わいは「いくらでも食べてしまいそうになるおいしさ」と高評価を得ました。濱﨑さんは「30年以上前から食べている我が家の定番おやつが、まさか金賞をいただけるとは驚きました。亡き父も、このかりんとうが大好きでした。この受賞は父のお蔭かもしれません」と、顔をほころばせます。

事業を通じて地元を盛り上げていきたい

材料は可能な限り、芦北産にこだわります。果物や豆、野菜などの材料は、ほぼ濱崎さんの畑で育ったものですが、不知火など少量しか栽培していない品種は、近所の農家から分けてもらいます。

「近所の農家さんが傷やサイズ違いで出荷できない農産物を捨てているところを見て、『おっちゃん、なんで捨てるとね?』と尋ねると『買ってもらえんし、近所に配るばっかりだけん』との答えでした。

食べてみると味には全く遜色がないんですよ。ジャムなどの加工品には十分なクオリティです。なので、僕が買い取らせてもらって商品の材料として使っています。廃棄されるはずのものも、ちょっとした付加価値をつければ再び活かすことができる。それで芦北地域が元気になれば嬉しいと思うんです」。

おやつで親子のコミュニケーションを

野菜ソムリエの資格も持つ濱崎さん。最近は地域の小学校で、総合学習の外部講師として、甘夏かりんとうの作り方を教えています。

「レシピもどんどん公開しますよ。そして帰ったら家の人に作ってあげてね、と伝えます。すると子どもたちから『作ったよ。おいしいって言ってもらえた』と嬉しそうに報告が来るんです。僕自身がこのおやつ作りを通じて親や祖父母とのコミュニケーションを取っていたように、家族の触れ合いを生み出すツールのひとつとして、我が家のレシピを使ってほしいです」。

今後は芦北の温暖な気候風土を活かして、パッションフルーツやライチ、チェリモヤなど、外国産の流通が多い珍しい南国フルーツを自ら栽培し、安心安全な新商品開発にチャレンジしていきたいと語ります。

濱崎さんのおやつは、Facebook(フェイスブック)の他、芦北町の道の駅「芦北でこぽん」、インターネットでは無印良品のネットストアと、オンワードマルシェなどで取り扱っています。芦北の恵み満載のおやつをぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

田舎工房~農家のおやつ
https://www.facebook.com/inakakoubu/

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