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売上が25倍に!地元素材を使用した「カクテル梅酒」ヒットの理由

売上が25倍に!地元素材を使用した「カクテル梅酒」ヒットの理由

最終更新日:2018年09月14日

中野BC株式会社は和歌山県海南市にある酒造会社です。元々は清酒を主に製造販売していましたが、「和歌山にある企業だからこそ」と紀州のウメの需要拡大を図り、1971年に梅果汁の製造をはじめ、その後、梅酒の製造に着手しました。現在では梅果汁は全国90%(梅濃縮果汁原料用果汁のJAS格付実績)のシェアを誇り、2010年に開発された「カクテル梅酒」は見事ヒット製品に。代表取締役社長・中野幸治(なかのこうじ)さんに話をうかがいました。

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「カクテル梅酒」はどのように生まれたのか

昨今は人口減少や若者の消費の多様化で、もの作りにおいても対応力や状況に応じた変化が求められています。

老舗酒造の中野BC株式会社では、これまで「長久」、「紀伊国屋文左衛門」、「超久」、「文」の4銘柄の日本酒を製造販売。2008年には「紀伊国屋文左衛門」が、ISC(International Sake Challenge)に入賞。2017年にはフランスで初めて開催されたコンテスト、フランス人がフランス料理と合う日本酒を選ぶ「Kura Master」にて、幻の酒米・愛山を使用した「純米大吟醸 紀伊国屋文左衛門 愛山全量使用」がプラチナ賞を受賞しています。

中野BC株式会社の長久邸 庭園

その一方で、“若者の酒離れ”が進み、特に清酒売り上げ低迷が進んでいきました。その打開策として取り組んだのが、バリエーションに富んだ「カクテル梅酒」の商品化でした。試行錯誤の甲斐あって、梅酒カテゴリーの売り上げは2004年から2009年の5年間で約25倍にも急伸し、起死回生の大きな一手になりました。ニーズを掴みヒット商品を生みだした背景には、どのようなきっかけがあったのでしょうか。

和歌山にある企業の特性を活かした豊富な商品

和歌山県といえば全国一のウメの生産地です。中野BC株式会社では地域の素材を活かし、またその品質の良さを広めるため、昭和の時代から梅果汁や梅酒の製造を手掛けてきました。

「当初、梅酒の売り上げは思ったように伸びなかったものの、1970年代から『赤い梅酒』、『蜂蜜梅酒』、『緑茶梅酒』と、次々と自信作を世に送り出してきました。転機が訪れたのは2003年ごろ、健康志向の高まりで緑茶や梅酒が注目を集めるようになったことです。原酒の仕込みタンクは4倍以上に増え、今だに根強い人気製品となっています」。

じわじわと売上げを伸ばした梅酒のカテゴリーは、その後、梅酒が女性に人気が出始めたことに着目して2010年からカクテル梅酒を作りはじめました。

「フルーツや野菜を使った梅酒や、さくらなどの香りを楽しめる梅酒などを新たに開発しました。地元の果物であるブルーベリーやイチゴ、ハッサクを使った梅酒や地元名産の山椒を使った梅酒、国産のユズ、シークワーサーを使ったものなど。様々なニーズに合わせて1年間に4アイテム以上、商品化をしました。現在、梅酒は全部で約40種類あります。

売り上げの基幹となったのは、昭和の頃から造り続けている『赤い梅酒』、『蜂蜜梅酒』、『緑茶梅酒』。これに次いで『紀州のゆず梅酒』や『紀州のはっさく梅酒』など、サッパリした梅酒があげられます。やはりトータル的な商品数があってこそ、売り上げが伸びていったと考えています」。

スムーズな増産と、熟練の味わいを生む技術

カクテル梅酒がヒットした背景には、第一に「過不足なくウメが供給でき、増産ができたこと」にあります。そして、ウメの産地ゆえに「地元で梅酒が売れない」ジレンマに悩みながら、試行錯誤することで味わいに磨きがかかりました。

「ウメを扱えることは、和歌山の農協、農家さんとのつながりがあってこそ。数年前より『カクテル梅酒』が売り上げをけん引していますが、それもウメの供給体制が整っているからこそできたことです。

また品質や味わいにおいても社内で研究所があり、商品開発が出来る設備が整っています。そのことにより、1979年から梅酒に携わってきた製造のノウハウを持つ部署があることが強みとなっています。ウメの産地で、舌の肥えた地元の人に梅酒を買ってもらうため、『家庭でつくれない味わいの梅酒』を常に意識してきました」。

さらに梅酒文化の変化も「カクテル梅酒」のヒットにつながったと分析しています。

「梅酒の飲み方に変化があり、それまでの『食前の1杯の梅酒』から、食中にも食後にも飲まれるようになっていきました。そんな市場の流れにあわせて、メーカーとして欠品させることなく、製造量を増やしたり、ニーズに合わせた商品化をしたり、お客様の要望に合わせて造ったことがヒットにつながったのでしょう。

地元で栽培したウメを扱える環境にある、和歌山の会社だからこそ梅酒へのプライドがあります。こうした市場の動きと私たちのもの作りと合致したことが、売り上げ増の大きな理由だと思います」。

梅酒は本格志向へ、和歌山素材のクラフトジンへの新たな挑戦

現在、市場としては梅酒の移出数量(※)は落ち着いてきており、力を入れていこうというのが原点回帰ともいえる本格梅酒です。

(※)移出:酒税法で、酒類が製造場から出されること。

「梅酒ブームが定着し、競合商品も増えてきて、梅酒全体のシェアも落ち着いてきました。ここからは、全国のウメの収穫量シェア65%を誇る(※1)和歌山県にしかできない商品化にスイッチしていこうと考えています。

具体的には和歌山の素材の原点に返り、紀州梅酒 紅南高(べになんこう)、月向(げっこう)など、ウメの味にこだわった本格派の商品に注力して行きます。

また、梅酒全体に一定の需要があり市場が落ち着いてきていることから、他カテゴリーにも着目しています。最近、酒類業界では『クラフトジン』に脚光が当たっています。そして蒸留酒は弊社の原点であることから、独自性の高い新商品を開発しました」。

2017年11月1日に、高野山に多く見られる常緑針葉樹であるコウヤマキを使用したクラフトジンを発売。創業者が酒蔵として始めた焼酎(蒸留酒)を使い、今の時代に合わせた、日本発・和歌山発である和製クラフトジンの『槙-KOZUE-』が誕生しました。

コウヤマキの葉、温州みかんの皮、レモンの皮、山椒の種などの和歌山素材とジュニパーベリーを組み合わせた和歌山県産クラフトジンということで、海外の反響も上々だということです。

地域性を活かした独自の物作りで未来を描く

時代のニーズをうまく掴み、成長してきた中野BC株式会社。今後は海外市場の開拓と、より一層、国内でも基盤を強めていく構えです。

「クラフトジンもそうですが、近年では、ウイスキー、ジンなど高アルコールの酒類が好まれる傾向があります。チューハイやハイボールなど、蓋を開けてすぐにそのまま飲める、割る手間のかからないRTD系(Ready to Drinkの略)も10度を超えるものが多く出てきています。そして、低アルコールを好む日本人にも徐々に飲まれてきたことから、市場の変化が表れています」。

また、若者のお酒離れや高齢化により、将来的にも酒類全体のシェアは下がっていくと感じています。「そのため、海外への展開にも力を入れています。国内においては独自性を出していくことや、地域性を出した酒の商品化をしていくべきだと考えます」。

「梅酒自体も弊社の独自性を追求してきたカテゴリーですし、2017年発売した『槙-KOZUE-』についても、和歌山のコウヤマキを主として、和歌山の素材を使った商品であります。『槙-KOZUE-』は『富士白蒸留所』というブランドを、初めて立ち上げた時の製品に位置付けられるもので、今後は様々な富士白蒸留所のブランドの商品数を増やしていくことを考えています」。

「今後もお客様のニーズの多様化に合わせた、オンリーワンのもの作りを目指していきたい」と中野さん。同社では、お酒以外にも和歌山の素材を使ったアロマオイルなども手がけています。お酒だけではなく、他業種へも目を向けた一歩先をゆく着眼点が時代のニーズを掴んでいくことでしょう。
 
中野BC株式会社
 
参考
※1 平成28年産うめの結果樹面積、収穫量及び出荷量(農林水産省 近畿農政局)

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