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東京のど真ん中から野菜の魅力を発信【八百屋ファイル:槇村野菜笑店】

東京のど真ん中から野菜の魅力を発信【八百屋ファイル:槇村野菜笑店】

近年、独自の目線で野菜をセレクトするこだわりの八百屋さんが都内を中心に増えています。今回は、2つのレストランを併設し、卸と小売の両方を手がける「槇村野菜笑店(まきむらやさいしょうてん)」を紹介します。東京都港区外苑前という意外なエリアに八百屋を開いた理由や、併設するフレンチレストランについて、代表の槇村賢哉(まきむらかつや)さんに話をうかがいました。

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昼は卸と小売・テイクアウトを行い、夜はフレンチレストランを運営

東京都港区南青山に位置する、東京メトロ外苑前駅周辺は、ファッションやグルメなどオシャレで感度の高い情報発信地です。そんな八百屋のイメージとはかけ離れたエリアに、2017年5月「槇村野菜笑店」はオープンしました。黒を基調としたスタイリッシュな店舗は、街の雰囲気同様にオシャレで、一見するとレストランのようです。

それもそのはず、卸兼小売の八百屋として営業するかたわら、夜は星付きレストランなどに長く在籍した富樫陸也(とがしりくや)さんが腕を振るうフレンチレストラン「naître(ネトル)」としても営業しています。

さらに昼間は、オーガニックの野菜をたっぷりと使ったランチボックスの販売とイートインも行っています。八百屋という枠には収まりきらない、様々な角度から野菜を味わい尽くせるお店です。そこには、槇村さんのこれまでの経験から培った、野菜に対する思いが込められていました。

力強い味わいに一流のシェフたちが絶賛

槇村さんと野菜との付き合いは長く、1999年に東京都福生市でオーガニックの八百屋を立ち上げたことから始まります。ところが、当時はまだオーガニックや無農薬といった言葉もあまり認知されていなかったので、運営がうまくいかずに3年ほどでお店を閉じることになりました。

その後、オーガニックレストランでの勤務やIT関連の仕事をするかたわら、休日に全国の生産者さんを訪ねて回ったり、自宅用にオーガニック野菜を買い求めたりしていたそうです。野菜や農家の研究を続ける中で、知人から「レストランのシェフに、その野菜を紹介してみたら?」と言われたことが、大きな転機となります。

「紹介していただいたシェフに、僕が個人的に知っている野菜を持っていったら、『こんなおいしい野菜、食べたことがない』と喜んでくださったのです。そして『僕の知っているシェフにも紹介してあげるよ』と、少しずつ口コミで卸先が広がっていったんです。そういった経緯があって、2014年から再び卸として八百屋を始めました」。

卸先は料理にこだわりを持つシェフたちがいるミシュランの星付きレストランをはじめ、一流のお店ばかりです。

「『こういう農家さんがいるけど、槇村さんのところでとりまとめて他のレストランにも届けたら?』とシェフたちからお話をいただくこともあり、農家のネットワークも広がっていきました。現在、うちで取引をしている農家さんは全国で100件を超え、すべて直送なので新鮮です」。

野菜のおいしさの決め手は土作りと情熱

一流のシェフたちが絶賛する野菜とはどんな味なのでしょうか。取り扱う野菜を一口食べてみると、誰もが納得。野菜一つひとつの味わいが甘みも酸味もしっかりと濃く、食べると元気が湧いてくるような力強いおいしさを感じます。

「おいしさの理由の一つは土作りですね」と槇村さんは言います。その土地にあった土の特性をきちんと理解して努力を重ねている農家がおいしい野菜を作れると感じているそうです。

「たとえば、千葉県の平地と長野県の高地では、土の質も気候も全然違いますよね。それぞれの条件の中で、その土地と向き合えてどこまで栽培できているかが野菜の味の決め手になると思います。

1年目は良くなかった部分を、2年目はこう改善したらうまくいった。3年目はそれを踏まえてさらにうまくいった。というふうに、農業は年間を通じた記録の積み重ねで成り立っています。もし4年目は気候が悪くて失敗したとしても、3年間の蓄積と4年目の経験があれば、新たな予測を立てて5年目は成功へとステップアップする可能性があります。

そうした学びの苦労を乗り越えてでも『絶対においしい野菜を作るんだ』という信念を持っている方が、誰もが認めるような野菜を作っているに違いないと実感しています」。

おいしい野菜を食べる提案したい

そんな情熱の詰まったおいしい野菜を、楽しみ方も含めて提案したいと2017年5月にオープンしたのが「槇村野菜笑店」です。昼間はオーガニック野菜をふんだんに使ったカラフルなランチボックスを販売しながら、イートインでランチメニューも提供しています。

「オーガニック野菜は健康にいいですよ、そして野菜は土作りが大切です、といった難しい話からではなく、楽しみながら『おいしい』と感じてもらいたい。そんな、おいしい食べ方や調理方法を知ってもらう場所としてレストランも兼ねた八百屋を始めました。

お弁当やレストランで野菜のおいしさを知っていただき、メニューに使った野菜を購入して自宅で再現してみる。そういったプロセスで利用してもらえたらうれしいですね」。

「おいしいからまた行ってみよう」「おいしいから自分でも作ってみたい」をきっかけに、野菜を食べることを日常の習慣にしてほしい、と槇村さんは言います。

「朝起きて飲む一杯の水にレモンをぎゅっと絞って飲んだり、コンビニ弁当の代わりにうちのお弁当を食べたり、そういった人が少しずつ増えていくといいなと思っています」。

おいしい野菜を届けて20年 たどり着いた場所

外苑前というエリアを選んだ理由も、そうしたおいしさや習慣を世界に向けて発信していきたいという思いがあるからなのです。

「八百屋としては最適な場所ではないかもしれません。ですが東京オリンピックの開催が決まった2013年から、この辺りでスタートしたいと考えていました。国立競技場からも近く、これからますます注目度も高まるエリアです。多くの情報が集まる外苑前だからこそ、オーガニック野菜のおいしさを多角的に発信することは大きな意味があると思います」。

まもなく2周目を迎える槇村野菜笑店は、今後はともに働く仲間を増やしていきます。そして、デモンストレーション形式の料理教室や野菜の即売会、企業とのコラボレーションなど八百屋の枠を超えた多角的な展開を考えています。日常生活に溶け込む野菜を販売しながら、大きな未来も見据えている槇村野菜笑店の次なる展開が今後も楽しみです。

槇村野菜笑店

naître(ネトル)

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