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土壌解析がもたらすロジカル農業が切り拓く未来

土壌解析がもたらすロジカル農業が切り拓く未来

土の中に生息する微生物のDNAを解析することで土を見える化し、ロジックに基づいた農業を可能にしようとするプロジェクトがクラウドファンディングサイト「クラマル」に掲載され、達成し終了されています。幼少の頃自然の豊かさに触れて環境問題に取り組もうとした二人が出会い、挑戦するプロジェクトの姿に迫りました。

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微生物のDNAを調べることで、土の状態が見える

土壌解析

「例えば、1グラムの土の中に数十億個体の微生物がいると言えば、イメージをつかみやすいでしょうか。この土の中に大量に生息している微生物のバランスを見ることで、今の土の状態を把握することができるんです」。

説明をしてくれるのはCycle株式会社の中野諭一(なかの・ゆいち)さんと本郷真理(ほんごう・まさみち)さん。土の中のDNA解析を行うことで微生物の生息状況を測定する土壌分析のプロジェクトをクラウドファンディングサイト「クラマル」で達成させました。(編集部注:現在は募集を締め切っています)

土壌解析

「この微生物がいるとこの作物が育たない、またはその逆もあります。『ただこの種類がいれば良い』ということではなく、さまざまな種がバランス良くいるのが土が豊かな状態です。豊かな土というのは体づくりにも似ていて、体ができていれば多様なスポーツができるように、土がうまくできていればスムーズに良い作物が育つようになります(本郷さん)」。

土壌解析

「僕たちがこのプロジェクトでやろうとしているのは、農家さんの土を土壌分析にかけデータをお渡ししようというものです。土の状態がデータで可視化されると、データに基づいたロジカルな農業を行うことができます。例えばデータをもとに肥料計画を立てることができたり、合う作物を育てたりすることができます。土壌データを見ながらロジックに基づいて打ち手を考えられる、データドリブンな農業をしていただくことを目指しています(中野さん)」。

環境問題に取り組むには、まず農業から

土壌解析

同社の代表を務める中野さんは、幼少期に昆虫採集に夢中になったことから、自然や環境問題に興味を持つようになったのだそう。起業をすることになったきっかけは、図書館でたまたま読んだ「ナショナルジオグラフィック」。気候変動について取り上げられた記事を読み、インターネットのオープンソースの概念やコミュニティを用いて環境問題に取り組もうと一念発起しました。

「土壌の状態を知り、微生物を生かした環境負荷の低い農法が広がれば、地球温暖化や気候変動にもポジティブな影響を与えられると考えています。一つ一つは小さくてもそれらを積み重ねて社会や環境にいい影響を与えたいと思っています(中野さん)」。

土壌解析

一方で、独学で農業について勉強するには限界を感じた場面もあったのだとか。

「農家さんに話を聞いて回ったり本を読んだりしていましたが、専門的な知識や農業経験を持たず自力で進めることに限界を感じていました。そこで、自然栽培で4年間農業に携わり年間50種の野菜を育てた本郷と出会ったんです(中野さん)」。

滋賀県で生まれ、琵琶湖で釣りをするのが趣味だった本郷さんは、ある日書物で見たかつての美しい琵琶湖の姿に驚き、環境問題に意識を向けるようになったのだそう。大学で魚のDNAの研究をする傍ら、大学在学中に農家を回るなかで、後の師匠となる農家に出会いました。

「面積がすごく狭いのに、年商800万円を超えるというすごい農家さんでした。そこでネギを食べた時『こいつ生きてる』と衝撃を受けたのを覚えています。それから自分が農業をバイトにしている学生のロールモデルになろうと思い立ち、畑を借りて、自分で学費をまかなえるほど野菜を育てることができていました。畑を借りるのは大変で、数年通ってようやく貸してもらうことになりました(本郷さん)」。

もともと栽培管理アプリを開発している中野さんのもとに本郷さんが加わり、今回の微生物を調べ土壌解析をするという新たなアイデアが生まれました。土壌分析だけではなく、データで農業をサポートするアプリの開発も視野に入れているといいます。

農業のブラックボックスの蓋をあける

土壌解析

挑戦していたクラウドファンディングでは実際に土壌分析検査ができるお返しが用意されているなど、その第一歩となりそうです。

 
「農家さんの中でブラックボックス化され明らかにされてこなかったものの蓋をあけるようなプロジェクトです。『このプロジェクトがあったから自分の土にどう働きかければいいかがわかるようになった』と言ってもらえたら嬉しいですね。とにかく農業の実践で使ってもらいたいです(中野さん)」。

「これにより、土のなかにいる微生物に関する議論が農業の現場で増えて欲しいです。農家さんが作業したデータと微生物の関係についてどこかの大学のチームと組み、土壌の特徴や傾向を示すことができたらという展望もあります(本郷さん)」。

実際に野菜を育てた経験と、土壌分析データや農業データを解析し最適解を編み出す理論が結実し、未来の農業を切り拓いていきます。現在、プロジェクトを進めるスタッフや微生物の専門家が多く所属している訳ではありません。そのため、お二人が望むことは、このプロジェクトにより多くの人が自由に関わり、みんなで一緒にその未来を作っていくことです。

 
Cycle株式会社では、この土壌解析プロジェクトでも利用する、誰でも簡単にデータ・ドリブンな栽培をはじめられるモバイルアプリ「Grow」のテストユーザーを募集しています。リリース前に試してみたい方は下記の申込みフォームより応募できます:
https://goo.gl/forms/M7nXDnwiwPk05d493

 
土壌微生物研究所 問い合わせフォーム

(写真・文/出川 光)

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