【プロフィール】
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野菜料理家 庄司 いずみ 野菜料理やベジタリアン料理のレシピを、本や雑誌、テレビなどを通じて発信。東京、代々木上原の『庄司いずみ ベジタブル・クッキング・スタジオ』で定期的にヴィーガンの料理教室を開催、人気を集める。オリンピックに向けてベジタリアン対応のニーズが高まる現在、中食や外食のレシピ監修やメニュー開発にも力を注ぐ。 |
ベジタリアン、ヴィーガンとは?
——ベジタリアンの方はどういうものを食べているのでしょうか?ヴィーガンとはどう違うのでしょう。
ベジタリアンといっても、いくつかタイプがあるんです。
ペスコ・ベジタリアン・・・肉を食べないで魚、卵、乳製品を食べる
ラクト・オボ・ベジタリアン・・・肉、魚は食べないが卵と乳製品を食べる
オボ・ベジタリアン・・・肉、魚、牛乳は食べないが卵は食べる
ラクト・ベジタリアン・・・肉、魚、魚と卵は食べないが牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品は食べる
ヴィーガン・・・肉、魚、卵、乳製品、はちみつなども食べずに植物性食品のみを食べる
さらに、ヴィーガンにもタイプがあります。
フルータリアン・・・収穫を通じて植物を殺すことがない果物や種子、ナッツのみを食べる
ダイエタリー・ヴィーガン・・・動物性食品を口にしない
エシカル・ヴィーガン・・・動物由来のものを使わない生活スタイルを実践する
「エシカル・ヴィーガン」は、食品だけでなく、レザーや毛皮などの動物製品も使用しないので、健康のためというより生活の哲学のようなものですね。
それぞれ実践している背景も違います。
訪日観光客も多いアジアでは、仏教由来の「オリエンタル・ベジタリアン」も多いです。
五葷(ごくん)といって、ネギ・にんにく・にら・らっきょう・浅葱(あさつき)といった香りが強い野菜を食べないスタイルです。
台湾では、人口の14%が「オリエンタル・ベジタリアン」といわれています。私はヴィーガン料理専門家ということで様々な相談を受けます。最近は「オリエンタル・ベジタリアンの方をどの程度気にしたらいいですか?」といった問い合わせも受けるようになりました。色々な食のスタイルを日本も受け入れ始めていると感じます。
参照:「多様な文化・慣習を持つ外国人旅行者受入のためのおもてなしガイドブック」(公益財団法人横浜観光コンベンション・ビューロー)
新しい食の流行は、ゆるい菜食主義「フレキシタリアン」
——庄司さんが最近感じている食のトレンドはありますか?
「フレキシタリアン」です。
特に外食において、日常生活では肉や魚も食べて、フレキシブル(柔軟)にベジタリアンライフを楽しむスタイルです。日本では「ゆるベジ」なんて言われています。
2017年頃に欧米で「フレキシタリアンダイエット」というものが流行ったのがきっかけのようですが、確かに、極度な食事制限や1つの食材しか食べないダイエットよりも健康的ですよね。
私は肉や魚が苦手で、野菜が大好きなのでベジタリアンという食のスタイルが心地良いのですが、そうではない人が「野菜しか食べません!」となると続かないですし、何より食事が楽しくないですよね。時々ゆるくベジタリアンをする、というのが、無理せず健康でありたい現代人の流れにも合っているのだと思います。

出典:日本のベジタリアン・ビーガン・ゆるベジ人口調査 by Vegewel/2017年)
——上記の日本人の食生活アンケートからも、「ゆるベジ」を取り入れている人が多いことが分かります。実際に「ゆるベジ」を身近で感じることもありますか?
私が主宰する料理教室は、教室を始めた10年頃前はモデルさんやベジタリアンの方が中心でしたが、今では20人位入るスタジオにベジタリアンが4,5人いたら多いほう。野菜をもっと楽しみたい、定番の料理以外においしく食べる方法を知りたいという方が増えています。

庄司さんの料理教室の様子
肉や魚に頼らずに成立する野菜が欲しい
——訪日観光客の増加や食のトレンドの変化で、野菜へのニーズが高まっていることがうかがえます。野菜で食事を楽しみたい人のために、どんな野菜があると嬉しいですか?
外せないのは、旬で新鮮な野菜だということです。そして、野菜本来の味がしっかりとすること。ルッコラであれば「辛い!」と感じる程のパンチが欲しいですし、ニンジンであればニンジンの香りがするものが好ましいです。
魚や肉の旨味に頼らず、野菜だけでおいしい食事を摂りたい時に、味の濃さや野菜そのもの個性は必要不可欠なんです。

料理教室でも人気の「野菜のお寿司」
これまでは日本にベジタリアン料理を出す店が少なかったので、レストランでベジタリアン料理を出してもらえるだけで有難かった。正直、おいしさを追求していないと感じるベジタリアン料理もありました。
でも時代の流れで、ベジタリアンやヴィーガンに対応する店も増えてきて、これからもっとおいしさが求められてくると思います。
——農家の方に求められることも変わってくると思いますか?
野菜を中心に食事を楽しみたい人にとって、おいしい野菜の価値は上がっていくと思いますし、価値を上げていくべきだと思います。
農家さんは職人だと思うんです。
私たちが急に野菜を作っても農家さんが作る味のようにはできません。
おいしい野菜を食べると、当然なのですが「プロの農家さんはやっぱり違う。凄いな」と感じます。
だからこそ、おいしい野菜を作れる農家の方には、自信を持って値段をつけていただきたいですね。
【取材協力・写真提供】
庄司いずみ ベジタブル・クッキング・スタジオ
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