イチゴの高設栽培でさらに収量を上げる秘訣

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イチゴの高設栽培でさらに収量を上げる秘訣

イチゴの高設栽培でさらに収量を上げる秘訣
最終更新日:2020年10月12日

イチゴの高設栽培では「むしろ収量は増える」と明言する中村商事(埼玉県春日部市)の代表・中村淑浩(なかむら・よしひろ)さん。前編で紹介した水と肥料以外に気を付けるべきことに湿度がある。湿度の管理に加えて、環境制御機器を適切に使いこなすために気を付けるべきこととは。

気孔を閉じさせない湿度管理

湿度などの環境データは頻繁に確認している

湿度などの環境データは随時確認しながら、適切な範囲に収まるようにしている

「作物は蒸散しないと、水と肥料を吸えず、光合成しなくなりますよね」。イチゴの高設栽培において気をつけるべきことを聞いたとき、中村さんはこう前置きしたうえで、「とにかく大事なのは蒸散させ続けること」と強調した。水を蒸発させる蒸散が止まる、つまり気孔が閉じる回数が多くなるほどに、増収への道は遠くなる。なぜか?
「気孔は一度閉じても、またすぐに開くと思っている人は多い。でも、それは違うんです。どれだけいい環境に戻しても、一度閉じたら再び開くのに45分から60分くらいかかってしまいます」

土壌中の水分量が少なかったり湿度が低かったり、強風が吹いたりすると、気孔は閉じてしまう。今回の主題である湿度についていえば、60分以内に相対湿度が20%下がると、ほとんどの気孔は閉じてしまうそうだ。それを防ぐには「換気をこまめにして、小刻みに温度を下げながら、湿度を維持しないといけません」と中村さん。モニタリングして特に下がり方を見守る必要がある。

蒸散を止めさせない最適な相対湿度は「60%から75%が望ましい」。ただ、湿度は変化しやすく、この幅に収めることは決して容易ではない。それでも「多少ずれたとしても驚かず、統合環境制御技術を駆使してゆっくり戻してあげること。暖房機を使ったりカーテンやサイドを開閉したりすることで、湿度をなんとか逃がさないようにしなければいけません」

さらに中村さんはこう繰り返した。
(60%から75%の幅から多少ずれたとしても)「とにかく半開き状態でも踏みとどまらせることが重要なんです。1日に2回、3回と気孔を全閉させれば、その間だけハウス内にある光は一切無駄になってしまいますから。そうなると収量を高める栽培ではなく、まったく逆のストレス栽培に向かっていってしまいます」

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環境制御機器の状態を毎日確認すべし

チェックポイント

中村商事が顧客に普及を図っている「チェックポイント」

統合環境制御技術を活用するうえで、とくに高設栽培をするうえでもう一つ基本的な順守事項があるという。それは環境制御機器の状態を毎日欠かさず確認することだ。
中村商事は環境制御機器の確認事項をまとめた紙「主要チェックポイント」を顧客に渡している。自社で運用する観光農園と研修施設を兼ねた「ヒロファーム」の施設内の壁にはそれが貼ってあった。たとえば「電源タイマー類」については「主電源は来ているか?」「各盤のタイマーの現在時刻と設定時刻は正常か?」「停電はなかったか?」の3点が書いてある。

「夜中に落雷でブレーカーが落ちたとします。次の日に誰もブレーカーを確認しなかったら、水や肥料が供給されず、作物は枯れてしまいますから、しゃれになりませんよ。それが高設栽培の怖さなんです。土耕ならそのリスクは小さい。雨が何日も降らなくても、とりあえず生きてますから」。最近の機器の中には停電すると携帯電話に知らせてくれる機能があるものもあるので、活用を進めているという。

中村商事は、顧客のハウスに「主要チェックポイント」の紙を持ち込み、一つ一つのポイントをチェックしてもらっている。毎週、1週間分の紙をファクスやLINEで送ってもらう。もしチェックを付けていなかったり、漏れている箇所があったりしたら、すぐにその原因を追究する。「担当者は誰なのか」「なぜチェックが完璧ではなかったのか」といったことだ。顧客がチェックする癖を付けるまで追究の手は止めない。

「たとえばボイラーなどに油が入っていなかったなんてことは、たまにあるんですよ。お客さんには聞きます。『それでいいんですか』『作物が育つことで、あなたの給料が湧いてくるんじゃないんですか』って」
このほか機器の異常に気付いたら、ささいなことでも知らせてもらう。たとえばある種の異常音は壊れることの前触れだからだ。その場合、中村商事は予備の機器を顧客に送るようすぐに手配をする。

環境制御機器の状態を毎日確認すべし

前編から紹介してきた話は「オランダの農家だったら当たり前に知っていること」と中村さん。一方、日本の農家は「ハウス内環境のメカニズムや植物生理の話を説明すると、『なにそれ、聞いたことがない』という方が多いですね。たとえある分野は知っていても、ほかの分野は知らなかったり。日本には環境制御技術を総合的に学ぶチャンスがあまりないのかな、という気はします」とのこと。ただ、中村さんの話では、一部の県はこうした事態に危機感を募らせ、研究開発や普及の体制を変え始めている。いずれそうした県の動向を紹介したい。

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