台湾発の遮光カーテンでイチゴの収穫を7月まで延ばす 目指すは冬春と遜色ない品質

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台湾発の遮光カーテンでイチゴの収穫を7月まで延ばす 目指すは冬春と遜色ない品質

窪田 新之助

ライター:

台湾発の遮光カーテンでイチゴの収穫を7月まで延ばす 目指すは冬春と遜色ない品質
最終更新日:2021年05月14日

国産イチゴは6月に入ると市場に出回る量が極端に少なくなる。7月まで収穫を延長することで、付加価値を生み出せないか。そのために中村商事有限会社(埼玉県春日部市)は園芸施設で日射を制御する実験を始める。使うのは日差しの強い台湾でよく見かけるという屋外用の可動式の遮光カーテンだ。

室温の上昇や巻き込みを防ぐ台湾製の装置

中村商事は施設園芸の資材の販売や施工、農業経営の支援のほか、イチゴの新品種の育種や観光農園の運営など幅広い事業を展開している。遮光カーテンを導入するのは観光農園用として完成したばかりの40アールの施設。

屋根の外側に設置する屋外用の可動式遮光カーテンとしては、国内ですでに普及している別の装置がある。ただ、ある資材は屋根面に密着させるため熱がこもり、室温の上昇を招いてしまっている。別の資材は2枚のカーテンを巻き取る構造で、開閉時に片方のカーテンがもう片方のカーテンを巻き込みやすい。その場合は屋根に上って直さなければならない。

中村商事が導入するのはそうした課題を解消できる台湾製の装置。これは2枚のカーテンをそれぞれ隙間(すきま)を空けて設置する。屋根にも密着させないため風通しが良く、熱がこもりにくい。開閉はスライド式になっているので、カーテン同士で巻き込む心配もない。
カーテンは遮光率の違いに応じて複数の商品がある。2枚のカーテンは個別に動かせるので、開閉する枚数によって遮光率を変えられる。

適切な管理法を見極める

 中村商事が新たに建てた観光農園用の施設(撮影時点では遮光カーテンは未設置)

中村商事が40アールの施設でイチゴを定植するのは9月。遮光カーテンを使い始めるのは2022年3月中旬か下旬の予定。その理由について代表の中村淑浩(なかむら・よしひろ)さんはこう説明する。
「この時期になると、光合成で必要とする量以上の光が入ってきます。放置すればイチゴは呼吸量が増えて、代謝が旺盛になってしまうんです。そうならないように遮光カーテンで調整することで、品質の良い甘いイチゴを長期にわたって取りたい。併せて花芽分化の花の出蕾(しゅつらい)間隔も縮めたいと考えています」

遮光カーテンを取り付ける40アールの施設は3棟に分かれ、いずれの棟でも同じ6品種のイチゴを栽培する。日射量や室温、湿度などで棟ごとに多少の変化を持たせながら、適切な管理法を見極める。

既存の施設には設置できないのが難

この施設で観光農園としての来場者が見込めるのはゴールデンウイークまで。これ以降は自社で収穫して、青果物として販売する予定。6月以降になると、主産県の出荷量は少なくなる。
中村さんは「冬や春に収穫する分と比べても遜色ない上級な果実が生産できるなら、業務用や家庭消費用としても評価されると思っています。そうなれば遮光カーテンにかかった経費のもとは取れるのでは」と見ている。

この資材に難があるとすれば、基本的に国内の既存の施設には設置できないこと。というのも施設の屋根の谷底を基部にして骨組みを造らなければならないからだ。国内の施設はそうした構造を有していない。

胡蝶蘭(こちょうらん)では冷房代2割減

中村さんによると、この装置は台湾では一般的に普及している。国内でもすでに複数の導入事例がある。いずれの施設でも作っているのは冷涼な環境を好む胡蝶蘭で、冷房代の削減に効果を上げている。

このうち中村商事が施工を請け負った森田洋蘭園(埼玉県川越市)は導入した初年度、冷房にかかる電気代を少なく見積もっても2割は減らせた。

 森田洋蘭園が中村商事に依頼して施工した遮光カーテン

社の経営面積は50アール。2019年秋に、老朽化した計11.5アールの4棟を順次取り壊して1棟にまとめた。同時に台湾製の遮光カーテンを設置した。新築の施設は軒高が5メートル。以前は2.7~3メートルだった。軒を高くしたことも冷房代の削減に貢献した。

もう一つ言い添えておきたいのは、2019年と2020年の気温の違いについて。気象庁が公開している気象に関する地点データの中で、川越市に最も近い地点であるさいたま市の月平均気温を4月から8月までで見ると、2019年よりも2020年の方がわずかに高い傾向にあった。こうした点を加味すると、この装置による電力代の削減効果は「2割以上になる」(森田洋蘭園)という。

中村さんは屋外に設置する可動式の遮光カーテンがトマトやキクの栽培でも高温対策として使えると見ている。暑さが年々増している気配がある日本で今後、この装置が活躍する場面が増えていくに違いない。

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