農家の
働き方改革?

黒木農園

黒木洋人(33歳)

PROFILE

作物:ヘベス、ズッキーニ、ミニトマト

20歳の時に農業を知り、23歳で就農。農業歴13年。宮崎県日向市原産の果物「ヘベス」を栽培。知人と共同で、ヘベスの抗酸化作用に目を付け、吉祥寺界隈で流行させる。現在では吉祥寺の50店舗に出荷。ブログやWEB、SNSを通じて情報を発信している。農業に加え、古民家をリノベーションしたカフェ「MORIMICHI」を設立。

→ http://superyasaijin.com/

INTERVIEW

以前から農業に
興味を持っていたんですか?

実家は農家でしたが、20歳くらいまでは絶対に農家はやらないと言っていたんですよ。農業系の学校にも通っていませんでした。少しずつ興味を持つようになったのは、部屋のインテリアのアイテムとして観葉植物を自分の手で増やすようになってからです。観葉植物の増やし方を調べる過程で、野菜も自分の手でどんどん増やしていけることを知って魅力的な仕事だと感じ、実家を継いでもいいかなと思うようになりました。

『ヘベス』とは、どんな果物ですか?

江戸時代から宮崎県日向市で栽培されている伝統的なかんきつ類です。皮が薄くて果汁が多く、そして種が少ないのが特徴で、主にレモンのように料理やドリンクに搾り入れて使います。私の実家では祖父の代から栽培をしていました。専門学校に通っていた頃、全国から集まっていたクラスメートに『ヘベス』を見せたことがあります。すると、「なにこれ?」「こんなの食べたことないよ」「知らないよ」という反応で新鮮な驚きを感じました。身近すぎて気付かなかったへべスの希少性や独自性を誇りに感じ、地元に帰ったらこの手で育てたいと考えるようになりました。

ヘベスの知名度を
どうやって上げていったんですか?

以前はブログやFacebook、Instagramで地道にヘベスの情報を発信していました。流行し始めたのは一昨年、地方の起業家を育成するNPO法人「まちづくりGIFT」代表の齋藤潤一さんに、ヘベスをプッシュしてもらってからです。その後、東京ハーヴェスト(食の作り手の方たちへ感謝の気持ちを伝えるイベント)に出たり、メディアに取り上げてもらったりした結果、流行に火が付きました。

ヘベスを育てている人は
増えているんですか?

定年退職をした方が栽培を始めたケースや、ヘベスを栽培していた奥さんの実家にご主人がIターン移住してきたケースなど、少しずつ増えています。Iターン移住してきた方はヘベスから採取したアロマと塩を混ぜて“ヘベスsalt”を作っているそうです。今後、宮崎県では、へべスをマンゴーのように県の特産品として売り出していく動きがあるので、県内でヘベス農家が一気に増えるでしょうね。

農作業の後には、
カフェでシェフをされているとか?

自分が立ち上げたカフェでシェフをしていましたが、東京でカフェを経営していたご夫婦が地元に帰ってくると聞き、今はその方たちに店の経営を任せています。今後もカフェのような新しい箱を作り、誰かいい人に引き渡したいと考えています。地元をクリエーターやアーティストなど、独自のセンスを持った人たちが集まるような面白い村にするのが夢なんです。そして手が空いたときに、息抜きで農作業してもらえればいいですよね。

これから先の展望を
聞かせてもらえますか?

ヘベスやカボス、すだち、レモンなどの香酸かんきつ類の価値というのは、料理に大きなアクセントを加えられるところにあると思います。お肉にかけてもいいし、デザートにしてもいいし、ドリンクにしてもいい。食事の中で香りを楽しんだり、酸味を楽しんだりすることが日常になるような文化を創ることができればと思っています。