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ピーマン。

せじやまハウス園芸

瀬治山悟(43歳)

PROFILE

作物:ピーマン、完熟キンカン

元ウェディングプランナー。脱サラ後、30歳で就農。農業暦13年。法人ではなく、個人事業主としてパートスタッフ4名と家族で経営。収穫の際は15名程度の臨時応援部隊が加わる。IoT会社の製品のモニタリングにも参加。圃場の温度・湿度・CO2・水は自動で管理している。瀬治山さんが大切にしている視点は、『植物生理』と『物理』の2つ。化学農薬は一網打尽に益虫までも殺してしまうが、まれに害虫の中で生き残る個体が生じ、その子孫が繁栄してしまい、その結果“技術”として安定しない事例が多い。そのため化学農薬は使わないという。ヒメカメノコテントウやダニ、クモ、アリなど、小さく多彩な生態系が、せじやまハウス園芸のハウス内のあちこちで命のドラマを展開している。「アリがいるとアブラムシに気付きやすくなる」(瀬治山さん)。ピーマンの栽培を始めてから虫が大好きになったそうだ。

→ https://www.facebook.com/sejiyama.gh/

INTERVIEW

ウェディングプランナーから
農業に転身のワケは?

父がビニールハウスでピーマンとキンカンの栽培をしていました。そばで見ていて、自分は長男でもあり、農業もいいなと考えていました。前職の経験をそのまま生かすことはできませんが、今うちにいる従業員は皆さん女性。プランナー時代に女性チームのリーダーだったので、お茶菓子の選び方から、どのようにお願いすれば気持ちよく仕事をしてもらえるかというところまで、お姉様方にたたきこまれました。それが今すごく生きていると思います。営業的なことも含めて前職で培った経営的な感覚もそのまま使うことができていますね。

現在はどんな仕事をしているんですか?

管理に専念しています。最初は業務内容を把握するため、3年ぐらいほかの従業員と一緒に作業をしました。すると、作業に夢中になって、外気などの周辺環境の変化や、温度管理などの自動化システムのトラブルに気付けず、大きなダメージを受けてしまったんです。それからは、アウトソーシングをできることはほかの人にお願いをして、自分は一番大事な管理に集中しようと方針転換しました。

宮崎県内のピーマン農家では
トップクラスの収穫量だとか?

全ての作物は取り巻く環境が急に変化すると、それに対応しきれなくなってしまいます。そこで、環境の変化をいかに緩やかにしてやるかを考え、対策を繰り返すんです。人間の世界でいえば介護みたいなものです。あるいは、より居心地の良い環境を作り続ける執事と言ってもいいかもしれないですね。ほかの農家と何かが違うのであれば、環境の変化をいかに和らげて、作物を快適にしてあげているかというところの差だけだと思います。

温度・湿度・CO2・水の管理を
自動化しているそうですね。

温度管理など、一部は以前から自動化されていて、手動のものと自動のものを並行して使っていました。ただ、農作物なので光の加減が変わったり、風向きや外の温度が変わったりすると手動で対応しないといけません。その煩雑さと、タイムラグがもったいないという理由で、どんどん自動化を押し進めているところです。

農家って、「自然と共に生きる」
イメージがありますが?

確かに、自然と共に生きるというイメージがたぶん大正解なんですよ。でも、実際の栽培の現場は経済合理性を考えないといけないから非自然なんです。それをいかに自然に近づけるかという管理の改善の繰り返しなんですよね。単に作物がしおれなければいいとか、枯れてしまわなければいい、低温にあたって障害が出なければいいという管理だけをしていると、作物が我慢しているだけで快適ではないかもしれない、ということなんですよね。

これから日本の農業は
どうなっていくべきでしょうか?

可能であれば今の形のまま、みんなが経営的に笑えるような状況になるといいなと思います。ITを活用して生産の効率を引き上げていくような経営的な農家が、もっと増えるといいなと思います。