農場経営に
女子力を。

株式会社百姓屋

谷口未佳(25歳・右)

飯塚智美(32歳・左)

PROFILE

作物:花苗、ブロイラー

1994年、谷口さんの父親が家業の養鶏業を継ぐ形で、百姓屋を創業。当初は養鶏のみだったが、後に谷口さんの母親が花苗部門を設立。谷口さんは高校卒業後、姉と共に花苗部門を継ぐ。2012年に法人化。産前産後休暇、育児休業制度の他、時差出勤制度などを取り入れ、子育て中の女性にも働きやすい環境を実現した。社員のキャリア形成のために、ガーデンコーディネーターなどの資格取得もサポートし、平成28年度の「農業の未来をつくる女性活躍経営体100選」(日本農業法人協会主催)に選ばれている。市場に出荷するだけでなく、ビニールハウスを開放しての寄せ植え体験、ガーデニング教室など、人々に花の楽しさを伝える活動を積極的に展開。谷口さんの夫は、谷口さんの父や義兄と共にブロイラー部門を担当している。

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INTERVIEW

農家を継ぐことに抵抗はなかった?

農家の娘さんはよく「農家には嫁ぎたくない」と言うみたいですが、うちは父も母もみんな楽しそうに農業していたので、特に抵抗はありませんでした。水害で全部駄目になったり、大変な面もいっぱい見てきたんですけど、それよりも楽しそうにしていることの方が多くて「やってみたいな」って。小学生の頃なんて、学校が終わるとランドセル背負ったままビニールハウスに行って、従業員と一緒にお手伝いしていました。

花苗を作っている農家は
女性が多いんですか?

いや、もう基本男性ですね。女性は店舗を持っている方しか出会わないです。同業者の勉強会にも参加していますが、花を生産している方は、私たちの親世代の男性が大半。年齢が離れているせいか、子供感覚でかわいがってもらっています。男性同士だと敵対心みたいなものが湧くみたいですが、私たち相手だと感じないようで、普通にいろいろ話を聞けるのがありがたいです。

女性の就農者の方に
増えてほしいですか?

増えてほしいですね。何人か若い方に来てもらったことはあるんですが、冬は寒くて、夏は暑いこの仕事は割と大変みたいで。私たちは小さい頃からこういう環境が普通な感じで育っているので、大変さがよく分からないんです。ただ、ビニールハウスよりブロイラー部門の鶏舎の方が、はるかにいい環境だということは分かります(笑)。ニワトリをストレスフリーで育てるために、鶏舎はものすごく快適なんですよ。ビニールハウスなんて、真夏は入れないくらい暑いのに。

それでも、花苗部門の方が好き?

好きですね。お花は何の縛りもないから。「これ作りたい」とか、「これきれいだね」とか、「これ人気でそうだね」とか、自分たちで調べて、自分たちの好きなように量も、時期も決められる。出荷だけじゃなくて、多肉植物の寄せ植えとか、自分たちで商品化して販売もしているんですよ。ふるさと納税の返礼品にも利用してもらっています。できた商品に対して、「良かとができとるたい」と声をかけてもらったり、「花は心がきれいになるもんね」と言われたりすると、自分たちの勘を信じて花を選んで良かったなと思います。

姉妹で継いでいるのは珍しいですよね。

姉とは結構年齢が離れているんですが、「姉が継いでいるから私はいいや」なんて思わず、一緒にやりたいという気持ちの方が大きかったです。実は、私が子供の頃ビニールハウスに通ったように、私の子供もここに来て、一緒にやりたがるんですよ。ゴールデンウィークや保育園がお休みの日になると、「今日、行かんと?」「お手伝いするけん、一緒に行かせて」。割と何でもお手伝いしてくれますし、花を持って帰るとポットに飾ってくれたりします。もしかしたら、私みたいに「やりたい」と継いでくれるかもしれませんね。

谷口さんの、今後やりたい事は?

昨今の若い方は、観葉植物とか、おうちにポンと置くだけでいいようなものが好きみたいです。手間はかけたくないけど、ちょっと部屋に緑が欲しい、みたいな。そういう方たちに向けて扱い始めたのが、多肉植物のセダムです。年に2回あるビニールハウスの開放日には、このセダムの寄せ植えも、来場者の方に体験してもらっています。割とリピーターさんも多くて、「去年作って感じ良かったけんが、友達にやるけんもう一回作りにきた」と来てくださった方も。そんな感じで、少しずつ植物の魅力を広めていけたらうれしいです。