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日本農業の未来は明るい!IoTが切り拓く新たな可能性

NEXT AGRI  PROJECT 明日の日本農業を語る活性化会議

日本の農業活性化への提言

NEXT AGRI PROJECTに向けて

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター
シニアスペシャリスト 
三輪 泰史 氏

Yasufumi Miwa

長らく低迷していた日本の農業が転機を迎えています。就農者の高齢化と企業の参入増加によるプレーヤーの入れ替わり、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」など新技術の登場―。変化の波を上手くとらえれば、「成長産業」への可能性が見えてきます。
こうした中、マイナビ農業が、生産者や支援者、消費者が集う「NEXT AGRI PROJECT」をスタートさせます。新たな農業を実現させるために、私たちはどう考え、行動すべきなのでしょうか。このフォーラムの監修を務める日本総研の三輪泰史さんに方策をうかがいました。

家族型農業からの脱却と新しい就農のカタチ

 「これからの10年間で農業構造は劇的に変わる」と三輪さんは予測します。農業者の平均年齢は66.8歳。この10年で個人事業主の農業者の多くは、後継者に譲るか離農するかの大きな選択を迫られます。つまり、日本の農業を支えてきた家族型農業が変化の時を迎えているのです。
 一方で、新規就農者がなかなか定着しないという問題もあります。「国の規制緩和を受けて、2000年前後から全国各地のスター農家が“新しい農業”のイメージを作ってきました。憧れを抱いて農業に参入する若者も増えましたが、実際には数年でやめてしまう人も多く、農業ブームの追い風を十分には生かし切れていませんでした」と三輪さん。
 特に、新規就農の壁となるのが、農地の購入・借地や高額な農機の導入などの準備資金です。個人でやっていては技能習得にも苦労が尽きません。これらの問題を改善しようと、政府は個人でリスクを負わなくても農業に関われるよう、「組織体」としての農業を推進する方向に舵を切りました。結果、ここ数年で農業法人数が飛躍的に増加し、新規就農しやすい環境ができてきた、と三輪さんは言います。

IoTとICTがこれからの“農業”を変える

 農業法人が増えたことで、企業で就農するという選択肢も増えました。「実は、これまで企業が農業に参入しなかった理由に、農業はリスクコントロールできないというものがありました。天候などの不安定要素が多く、広大な農地では生産管理も難しいという現実です」と三輪さん。その状況を変えたのが、IoTやICTなどの新しい技術です。より精度の高い天候予測をもとに生産計画を立て、データを駆使した工程管理でPDCAを回すことにより、ビジネスとして利益を追求する見通しが立ってきました。
 恩恵を受けるのは企業だけではありません。これらを活用すれば、個人農家同士が連携を強め、ビジネスを拡大させることも可能です。例えば、あるブランド作物のスター農家が、その地域のパートナー農家とチームを組みます。スター農家がキャプテンとなり、カメラやデータで栽培状況を確認して品質管理を行えば、エリアのブランド作物として販売先を開拓できます。
 ほかにも農作業日誌を電子化する、SNSを通じて個人農家が思いやこだわりをPRする、ということはもはや現場に浸透しています。こうした動きについて「単に価格で勝負するという従来型農業とは違う世界が見えてきた」と三輪さんは評価します。

来年はロボット元年、スマート農業もますます進化

 日々全国を飛び回り、農業の現場を見ている三輪さん。最近では、70代のベテラン農家がドローンを飛ばしている様子を目の当たりにすることもあるそうです。スマートフォンやタブレットを使いこなす農家も増え、新技術が現場に受け入れられつつあると実感しています。
 来年は、草刈りロボットといった農業ロボットが現場に本格導入される「ロボット元年」になる見通しです。三輪さんは「来年1年間で手間がかかる作業と重労働はかなり機械化、自動化が可能な状況になるのではないか」と語ります。
 一方、農業に関連する企業や研究機関などの協力を得て、土壌データ、農地データなどの提供や栽培情報の集積(農業者の同意がある場合に限る)を行う「農業データ連携基盤」を立ち上げました。農業データ連携基盤では、例えば農作物の生育状況を予測することが可能です。利用者は適切な栽培方法を知り、熟練者のように農業を営めるようになります。年内にもサービス提供が始まる予定で、新規就農者を支援する強力なツールとして注目されています。

成長には消費者の声が不可欠

 新技術を通じて、日本のやり方で作物を育てる「日本式農業」を海外で展開できる可能性も広がると三輪さんは指摘します。
 今、アジアの一部では、日本の農業技術を用いて現地で育てた「メイド・ウィズ・ジャパン」の農産物が人気です。農業IoTの普及により、このような農業モデルが拡がると予想されています。例えば、海外に構えた農地に自動運転農機やドローンを配して、作業は日本から遠隔操作する、といったことが近い将来実現可能になります。さらに、日本のベテラン農家の技術をロボットに教えこませれば、それを『のれん分けビジネス』として海外で展開することも夢ではありません。
 転換期にある日本の農業。成長には消費者の声も不可欠です。IoTやICTを使いこなせば、消費者一人ひとりの細かいニーズに、生産者側が応えられるようになります。たとえば、こんな味の〇〇が食べたい、糖度15度の〇〇をお菓子に使いたい、という声は貴重です。三輪さんは、「スマートフォンが消費者の声に揉まれて急成長したように、農産物に対しても消費者サイドの意識を高め、積極的に声を上げてほしい」と呼び掛けています。
生産者と消費者、支援者の三者を繋げることで、日本の農業の未来はより明るくなるはずです。

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター
シニアスペシャリスト 三輪 泰史 氏

1979年生まれ。広島県出身。
2002年、 東京大学農学部国際開発農学専修卒業。
2004年 東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修士課程修了。
同年 株式会社日本総合研究所に入社。
農林水産省、内閣府等の有識者委員を歴任。主な著書に『次世代農業ビジネス経営 成功のための“付加価値戦略』『IoTが拓く次世代農業-アグリカルチャー4.0の時代(共著)』(以上、日刊工業新聞社)ほか。

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