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有機野菜農家 田中千春さん

山梨で生きる就農ライフ -Live in yamanashi-

INTERVIEW 12
有機野菜農家
田中 千春さん
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山梨県に就農したきっかけ、経緯は?

東京都に住み金融機関に勤めていましたが、ふと田舎で農業体験をしてみたくなり、社会人向けインターンシップに参加しました。2013年に埼玉県の有機農家で5日間ほどお世話になり、そこで循環型農業の仕組みを知って感銘を受けました。様々なタイプの農家さんで体験させて頂き徐々に自然の中で働く気持ち良さを感じるようになりました。そんな中、友人に誘われて北杜市を初めて訪れ、風光明媚な景色に一目ぼれしまして、そこから北杜市に住み農業で生きていきたい、と本気で考えるようになりましたね。
山梨県は果樹王国ですから果樹を見ないのは野暮だと、山梨県立農業大学校(以下、農大)の週末農業塾(モモコース)に通ったらとても面白く、農大の職業訓練果樹コースを受験するつもりで準備をしていました。しかし願書を提出する直前、新・農業人フェアの農大ブースで野菜コースの講師の方と話をする中で、自分が何をしたいのか、どんな生活をしたいのかを改めて考えさせる言葉を頂き、たくさん考えた末に、北杜市で有機野菜を栽培することに決めました。

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営農形態はどのように決めましたか?

当初は雇用就農で2~3年経験を積んでから独立したいと考えていましたが、有機農家の正社員募集は少ないという現実を知りました。5反ぐらいで小さく始めて、確実な現金収入を得るために「半農半X」(兼業)を考え就職活動もしましたが、本気で農業に向き合うには二足のわらじは無理だと悟り、独立就農しようと覚悟を決めました。

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農地はどう探しましたか?

農大に通っている間に山梨県農業振興公社(以下「公社」という)へ一度足を運んでみました。風光明媚な景色に惚れて北杜市へ来ましたので景観の良い場所が希望だったのですが、最初に紹介して頂いた圃場が非常に見晴らしが良く、八ヶ岳がきれいに見える場所でしたので、ここに決めました。実習先である師匠の畑に近いという安心感も大きかったです。
そこからは、公社からの紹介もありますが、近所の方が農業をしている姿を見ていてくれて、地主さんから声をかけて頂けることもありました。農地に限らず様々な面において、師匠や地域のみなさんから教えを受けたり、機械や資材を融通して頂いたり、応援をしてくださったりと本当に周りの方のおかげで今ここにいるというのを非常に感じています。

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栽培・農業経営のこだわりは?

化学肥料、化学農薬を使わずに多品目野菜を栽培、通年出荷をしています。北杜市は冬は寒さが厳しく出荷は難しいですが、その分、昼は日照が強く朝晩は冷え込むという昼夜の寒暖差から、栄養価が高く非常に美味しいものが育ちます。秋冬の葉物はびっくりするような味の濃さです。年間約30品目程栽培していますが、その中でも品種をいろいろ試して、美味しいものを探しています。今年はトウガラシ・ピーマン類で15品種程試験的に栽培しています。
おいしいものをつくることを目指して、おいしさの客観的な評価を得るために初年度から栄養価コンテストに出品しています。科学的分析に基づいた評価で、ホウレンソウが3年連続最優秀賞を頂きました。農業は本当に奥が深く、土壌分析、施肥設計、栽培技術など、学ぶほどにわかる喜びや面白さ、そして難しさがあります。天候も毎年のように変わる中で、どうしたら美味しく健康な野菜が育つのか、学び、挑戦し、結果を見て軌道修正する、そんな日々です。食べてくれる人が「思わず笑みがこぼれるような」旨い野菜作りを目指しています。

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販路はどのように確保しましたか?

販売先の多くは先輩農家の紹介です。県内外のスーパー、首都圏の百貨店、近隣農家との共同出荷、直売所など異なるタイプの複数の出荷先があることで、数量や品目のバランスが取れ無駄なく出荷できていると思います。珍しい野菜でも、ラベルに商品説明やおいしい食べ方を書き、小売店の店員さんにも説明してお客様に伝えてもらうことを大事にしています。

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栽培で困ったエピソードはありますか?

それが…ないんです。師匠や先輩農家の皆さんが、栽培面、経営面、地域でやっていくことなど、様々な面で協力してくださっています。一人農業ですが一人ではない、北杜市はそんな場所です。また種苗メーカーや肥料メーカーなど、生産に関わる他のプロの方とつながることも非常に大きな強みとなります。自分一人でできることには限りがありますが、各方面の詳しい方に協力を頂くことで知識の幅や行動範囲が格段に大きくなると思います。先輩方にして頂いたように、私自身もこれから始められる方の力に少しでもなれたらと思っています。

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農業のやりがい、今後の目標は?

計画通りに順調に育ち、美味しいものができて、それをちゃんとお届けできた時がやはり一番やりがいを感じますね。健康に育ち、しっかり管理できている畑を見ると本当に気持ちが良いものです。うまくいかないことも多々ありますが、そんな時は技術や理解を深めるチャンス。播種、育苗、施肥、天候、病害虫、雑草、管理と様々な段階や要因がある中で、考えを巡らせて仮説を立て次回へ繋げる、その繰り返しの中で少しずつ野菜や土のことが分かってくるのは非常に面白いものです。
また、そういった経験を地域を越えて他の農業者の方と共有しあえたり、あるいは種苗メーカーや肥料メーカーから技術や知見を伝授して頂いたり、同じ志を持つ様々な方と繋がりを持てることも大きな魅力だと感じています。
今後やってみたいことの一つは、農業の経験ができる場を作ること。なかなか身近に感じることがない産業の1つですので、体験や学生アルバイトなど、自然の素晴らしさや農業のおもしろさに触れてもらえる機会が作れたらと思っています。

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就農を希望される方へメッセージ

農業は100人いたら100通り、自分次第でやりがいや幸せを非常に感じられる仕事です。独立して一国一城の主になるのも、理想とする農園に従事するのもそれぞれの良さがあると思います。月並みですが農業は自然相手の仕事ゆえ、思い通りにいかなかったり想定外のことが突然降りかかってくるという厳しい時もあります。そのような中で続けていくには、「自分が何をしたいのか」という思いや理念が一番大事だと私は思っています。日々無数の選択と判断の連続ですが、1本自分の筋がしっかりとしていれば暗中模索の中でも進む先には道がある、そんな感じです。私の場合は「思わず笑みがこぼれる旨い野菜作り」を標榜しています。
非農家出身の方でしたら特にわかならいことだらけでとても不安だと思いますが、インターンシップ制度を活用したり、いろんなタイプの農家さんから話を聞くなど、ご自身のやりたい農業のイメージを膨らませてみてください。とても楽しいですよ!応援しています。

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