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食欲の秋に! コーヒーかすを使ったキノコ栽培

食欲の秋に! コーヒーかすを使ったキノコ栽培

秋の味覚の1つ、キノコ。本格的な原木栽培、または家庭用のキットが販売されているので、栽培に取り組んだことがある方もいるのではないでしょうか。
さてこのキノコ、コーヒーかす(出がらし)を使った栽培方法があるのをご存知でしょうか? 近年イギリスやアメリカでは、コーヒーかすを使ったキノコのキットが発売されて話題になっています。
鳥取県鳥取市鹿野町にある「因州しかの菌づくり研究所」の研究員、本郷勢太(ほんごう・せいた)さんに、コーヒーとキノコ栽培について伺いました。

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世界で話題?! コーヒーを使ったキノコ栽培

息抜きや目覚ましとして愛飲されるコーヒー。キノコとはなかなか結びつかないですが・・・?

アメリカやイギリス、オーストラリアなど、世界各地でコーヒーかすを利用したキノコの発生キットが販売されています。各地の起業家が、地元の飲食店や工場などから出るコーヒーかすを利用してキットを作製・販売。自宅で手軽にキノコ栽培ができると話題になり、日本から購入できるものもあるようです。
コーヒーかすからキノコというと想像しがたい気もしますが、「高温、直射日光を避ければ、コーヒーかすを使ったキノコ栽培はそんなに難しくないんですよ」と本郷さんは言います。

コロンビアでの「キノコ隊員」経験が始まり

コロンビアでコーヒーの実を収穫する本郷さん。大使館にいた知人が、写真を加工してカードに仕立ててくれた

本郷さんとコーヒーを使ったキノコ栽培の歴史は、海外青年協力隊の一員としてコロンビアに派遣されていた1999~2001年にさかのぼります。コーヒー豆を取り出した後に残る皮(赤い果肉部分)を使ったキノコ栽培に取り組むことを使命とする「キノコ隊員でした(笑)」。そこではヒマラヤヒラタケを栽培し、よく収穫できたそうです。コーヒーかすを使った栽培は、その時に実験的に試したのが始まりでした。帰国後も本郷さんは、コーヒーかすや枝豆のさやなど、様々なものを使ってキノコ栽培に取り組んでいます。

本郷さん一押し! ゼロエミ式キノコ栽培

キノコ栽培と言えば、原木栽培、菌床栽培が一般的ですが、本郷さんが勧めるのは「ゼロエミ式栽培」です。ゼロエミとはゼロエミッション(ゴミ0)の略で、廃棄物などを資源として再利用したり、廃棄するものを減らしたりすることを目指します。
ゼロエミ式のキノコ栽培では、食品廃棄物や野菜残渣(ざんさ)などを培地(※1)として使い、石灰水で抑菌処理をしてヒラタケ類を栽培します。
本郷さんは、青年海外協力隊での経験のあと、現地や日本のNPOでこのゼロエミ式キノコ栽培を実践して研究したそうです。「世界で一番簡単なキノコ栽培の方法だと思っています」

種菌から育てるキノコ栽培は、培地の殺菌など、なかなか手間がかかるものだと本郷さんは言います。「それを家庭で栽培しやすいようにしたものが“ゼロエミ式キノコ栽培”です」。なお、ゼロエミ式で育てるキノコとしては、雑菌に強いヒマラヤヒラタケかウスヒラタケが向いています。

※1 キノコの種菌を植えるもの。畑で言えば土にあたる。

コーヒーかすを使うことで、手軽に栽培を始められる

きのこの培地として使うコーヒーかすは、入手しやすいのが良い、と本郷さんは言います。家庭で飲んだコーヒーかすをそのまま利用してもいいですし、近所の喫茶店などに相談すればもらえることもあります。
「収穫量としてはあまり多くないので、商業的な栽培には向かないかもしれませんが、家庭で行う分には良いと思います。培地が手軽に手に入って、種菌を植えて育っていくところから観察できるので、家族で栽培を楽しむにはお勧めです」

いざ実践! コーヒーかすを使ったキノコ栽培

室内で栽培する場合は、空気に触れないように、培地を入れたビニール袋の口を軽く結び、洗濯ばさみなどで留めておくと良い

本郷さんが研究を重ねて、独自の工夫も加えたゼロエミ式のキノコ栽培の方法を解説します。家庭で育てやすいことを考えて、使うものはできるだけ身近なものを用いています。
キノコ栽培の適温は15度~25℃ほど。培養中(のちの手順の4~5にあたる)は、できれば10~28度の間で培養してください。菌が全体的に育ってくれば33℃ほどまでは耐えられますが、高温は避けてください。春秋は、直射日光が当たらなければ屋外での栽培も可能です。

<材料>
・1~2リットルペットボトル、
・水切りネット、またはコーヒーフィルター
・コーヒーかす(粉でもドリップの袋入りでも良い。容器の7分目ぐらいが目安)
・消石灰(水酸化カルシウムのこと。ホームセンターなどで購入できる)
・ヒマラヤヒラタケかウスヒラタケの種菌(オンラインなどで購入できる)
・赤玉土(ホームセンターなどで購入できる)

下準備

栽培に使う容器を作ります。まず半分に切って、口部分を逆さにし、下半分のペットボトルに重ねます。切るときは、意外に固いのでけがをしないように注意!

重ねる際、キャップはしたまま、口の部分に水切りネットを敷いておくと水切りをするときに便利

ペットボトルがない場合は、牛乳パック1本そのままや、厚手のビニール袋を2枚ほど重ねたものに培地を入れても良いでしょう。

水分を含んだコーヒーかすは重いので、袋は複数枚重ねるか、バケツなどに袋を敷いても良い

栽培手順

1. 水1リットルに対し消石灰2グラムを加えて、石灰水を作る。

2. 石灰水に、培地となるコーヒーかすを1日間浸水させる。

浸水させて雑菌を抑制する間は、ビニールなどで覆いをしておくとよい

3. 2をよく水切りした後、 培地に種菌を植える。

ペットボトル容器では、キャップを外しておくと水切りができる

4. 白い菌が全体に回るまで培養する。おおむね1~2か月かかる。培養中は再びビニールなどの覆いをかけて輪ゴムなどで留めておくと良い。雑菌よけとともに保温ができるが、通気性を確保するために密閉しないようにする。

菌が回って全体的に白くなったところ。培養にかける時間やその時の気温などによっても白くなる割合は異なる

5. 菌が回ったら、容器ひたひたまで水を入れて、培地を一晩浸水する。

容器に水を張ったところ。先の写真のものより菌の周りは良くないが、側面も全体的に白くなっているのがわかる

6. 翌日水を切って、濡らした赤玉土をかけるか、プランターなどに取り出して赤玉に埋める。取り出しにくい場合は、スプーンなどを使って掻き出しても良い。

きれいに菌が回って固まっていたので、ペットボトルを切って取り出した

7. キノコが発生してきて、傘の部分が反り返る手前まで育ったら収穫する。

収穫したキノコ。石灰水を作る際、栄養として米のとぎ汁を水の替わりに利用した

 
なお、本郷さんからうれしいお知らせが!

「米のとぎ汁など、栄養を与えすぎると雑菌が繁殖してキノコの収穫が難しくなることもあります。さらに詳細が知りたい方やご不明なことがあれば、研究所までメール(inkinken@gmail.com)にてお問い合わせください。種菌も年に30名ほどまでは無料で配布しています(※2)」

※2 日本国内のあて先に限ります。

 
【取材協力・写真提供】因州しかの菌づくり研究所

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