スマート農業推進都市のモデルづくり 技術開発、人材集積の起点に。

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スマート農業推進都市のモデルづくり 技術開発、人材集積の起点に。

CHAPTER 1 スマート農業戦国時代。

スマート農業推進都市のモデルづくり
技術開発、
人材集積の起点に。

全国各地で「スマート農業実証プロジェクト」が始まりました。
しかし、農業者によってはITを敬遠する傾向があるほか、
事業者側にも販路開拓や提供データの標準化といった課題があり、
普及は一筋縄ではいきません。
行政がこうした問題を地域再生の課題と捉え、
研究機関や事業者を巻き込んだスマート農業推進都市づくりが始まっています。

スマート農業シティ構想で全方位の解決を目指す

いよいよ先端技術の導入が始まったスマート農業ですが、普及に向けてはいくつかの課題も残ります。ロボットトラクタは高級外車並みの価格で、高齢化している農業者の中にはITに懐疑的な人も少なくありません。水田や畑には通信インフラも整備されていないため、普及もなかなか進んでいないのが現状です。事業者の側から見ても、生産者やJAなどとの接点が少ないスタートアップ企業などにとっては、販路開拓が難しいといった側面があります。コスト、リテラシー、人材、インフラ整備、生産者と事業者の接点構築など、スマート農業にまつわる多面的な問題を、個別に対処するのではなく、地域全体の問題と捉えることで一つの解を示したのが、数年前にスタートした「スマート農業シティ」です。

スマート農業推進都市の概念図

技術開発だけでなく、人材集積にも期待

北海道の岩見沢市では、2013年に地元の意欲的な農業者109人が、就農人口の減少と高齢化、後継者不足に対処するために「いわみざわ地域ICT農業利活用研究会」を立ち上げました。同年には、早くも北海道大学、JA、農業者などによる産官学連携体制も確立し、通信インフラの整備も果たします。以降、昨年始まった「スマート農業加速化実証プロジェクト」まで、連綿と続く取り組みを続けてきました。
2020年にはトヨタ自動車株式会社が「WOVEN CITY(ウーヴン・シティ)」戦略を掲げ、最先端技術を詰め込んだ次世代型近未来都市の実証実験場である「コネクティッド・シティ」の建設を静岡県裾野市と合意。その中で、無人トラクタやドローンを使ったスマート農業の展開も計画されています。
このように、スマート農業シティは地域課題解決の一つの方向性として構想され、各地で実現されようとしています。特筆すべきは、IT、AIなどの技術開発、それを生かした農業生産活動、そこにつながる流通販売支援に加え、人材の集積や育成にもフォーカスされていること。地域再生の解決策として、街づくりの視点でトータルに構想されていることに大きな意味があるといえます。

case.1 岩見沢市×北海道大学×NTTグループ

ロボットトラクタで農作業効率化。
5Gを取り入れたスマート化を推進

岩見沢市では、2013年の「いわみざわ地域ICT農業利活用研究会」の発足直後から、市内3カ所にGNSS衛星による位置情報の補正局を設置。10m前後のずれを数㎝にまで縮めることに成功し、高精度位置情報の提供と活用が始まりました。また、市内13カ所に気象観測装置を設置し、50mメッシュの気象情報や営農情報の提供も始めました。2015年にはロボットトラクタの完全自動化により、代掻きなどの作業時間を7割短縮することに成功。遠隔監視による24時間作業や複数機による協調作業にも目途をつけました。また、2018年にはデータセンシングによるほ場ごとの水地温、生育状況の把握などの実証実験を開始。2019年にはNTTグループと北海道大学、岩見沢市が、次世代通信規格「5G」などの技術を取り入れたスマート農業を実用化するため連携協定を締結しました。
こうしたIT活用によって、蓄積された気象のビッグデータなどとロボット農機による作業の連携により、営農改革の可能性が見えてきました。また、道路データと位置情報を活用した除雪作業が実用化されれば除雪作業も安全・正確に実施することができます。通信インフラを核とした岩見沢市のIT活用は、教育・福祉をはじめとする市民生活のあらゆる分野への広がりが想定されています。

case.2 トヨタ自動車×裾野市

「スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ」
未来都市と田園都市の融合を目指す

スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ構想より作成

裾野市はトヨタ自動車株式会社が市内に建設する実証都市「コネクティッド・シティ」と連携し、最先端技術を街づくりに波及させる「スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ(SDCC)構想」を公表しました。2020年度には産官学による推進組織を発足させ、複数の規制緩和措置が可能になる「スーパーシティ」構想(内閣府提唱)への認定を視野に入れ、国の参画も促しています。着工は2021年で、計画期間は概ね15年間。その間に、NTTなどの協力を得ながら情報通信基盤を整えて自動運転やAI、ロボット、ドローンなどを使い、産業、交通、環境、教育、行政などさまざまな分野における地域課題を解決する都市づくりを目指しています。
そこで想定される取り組みの中に、無人トラクタやドローン、植物工場、AI搭載の生産プラットフォームなど、先端技術を駆使した農業生産の効率化というテーマも掲げられています。自動運転などに関する規制を取り払って営農環境を整え、高等教育機関も整備して人材教育の充実も図るなど、近未来の田園都市の実現に向けた総合的な取り組みが始まっています。