AGRI+ VOL.02
農業から
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アグリプラス
オンライン版
2020 August
VOL. 02
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スマート農業
普及への妙手は
あるか?
「担い手の減少」「農地の減少」「就農者の高齢化」など日本の農業はいま、深刻な課題に直面しています。
こうした課題を解決する処方箋の一つとして、国が推進しているのがスマート農業です。
その目的やメリットは理解できるものの、普及のスピードはなかなか上がっていません。
そのボトルネックは何なのでしょうか?また普及に向けた妙手はあるのでしょうか?
スマート農業を一時のブームに終わらせず、また、一部の大規模農業だけのものにしないため、
普及のカギを握る自治体やJAにできることは何かを検証しました。
自治体やJAだからできることとは?
内閣府によれば日本の農水産業の経済規模(GDP)は、2011年以降右肩上がりで推移しており、2018年には6.6兆円までに拡大。スマート農業推進による企業の農業参入の自由化などを背景とし、農地の集約化と農業経営体の大規模化が進んでいます。
その一方で、国が進めるスマート農業は、技術開発先行型で生産現場のニーズとの乖離も指摘されることから、その普及スピードは伸び悩んでいます。「導入コストが高い」「使いこなせない」「スマート農業の効果が見えない」などの課題も停滞の一因です。
国はこの間、農地バンクの創設や、6次産業化、農水産物・食品の輸出振興、企業の農業参入の自由化など、いわゆる「攻めの農政」を進めてきました。「スマート農業」もその一環で、技術開発先行型で進められてきました。しかし、高額、扱いが複雑といった理由から、なかなかその普及スピードは上がりませんでした。この状況を打開するため、2019年から2020年にかけて、農林水産省が実効性を求める方向へ施策を転換、普及への新たな兆しも見え始めています。本稿では、スマート農業を取り巻く期待と懸念が渦巻く中、地域農業に日々接している地方自治体やJAが、スマート農業の普及と浸透に果たすべき役割について考えていきます。
CHAPTER 1
スマート農業
戦国時代。
日本の農業が指向する「大規模化」「生産性の向上」「工業化」は、IT産業が最も得意とする分野。
必然的にIT関連の大手企業などが、業態の壁を越えて農業に参入してきました。
現在、農業はまさに戦国時代の様相を呈し、
新時代への過渡期を迎えています。
本稿では、こうした農業界の現状を俯瞰していきます。
CHAPTER 2
「使える」
スマート農業。
写真提供:大崎電気工業株式会社
2019年、全国69カ所で「スマート農業実証プロジェクト」※が始まりました。スマート農業は、現代の農業が抱えるさまざまな課題を、ロボット、AI、IoTなどの先端技術の活用によって解決し、農業構造改革を進めるための国ぐるみの取り組みです。この実証プロジェクトを含め、技術開発から普及と実践へ、ステージの進歩を実感する事例が続々と生まれつつあります。 ※農業が抱える高齢化、人手不足などの課題を解決するため、ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用した「スマート農業」を全国69地区で実証する、農林水産省による事業
匠の技術を
継承、活用する。
スマート農業を実践するために欠かせないスマート農機は、「最先端技術の塊」というイメージが先行しています。しかし、スマート農機が持っている機能も、作業時の動き方も、もとはといえば、生産者が長年育て、培ってきた匠の技術の模倣であり、経験と勘の積み重ねです。この国の宝である匠の熟練の技は、次の世代へ確実に受け継いでいく必要があります。そのために何が必要なのかを「手」「眼」「頭脳」の観点から考えていきます。
匠の手にあたるのが、自動運転農機や自動除草ロボットなどの農機です。農作業用ドローン、水田給排水システムなどもこれに該当します。人手に代わる存在として省力化を実現し、作業の効率化を図り、人間には難しい精密作業も得意なのが特徴です。
匠の眼(観察眼)や触感に代わるものが、各種センサーやモニタリング用のドローンです。さらに衛星によるリモートセンシング、ほ場据え付けセンサー(気象や土壌の状況を把握)、コンバイン、収穫ロボットのセンサーなどもあります。高所からの視点を得て、赤外領域、農産物や土壌の内部など人間に見えないものを可視化します。
自動制御、AI、ビッグデータ解析と人間の判断力をかけ合わせたものが、スマート農業の頭脳です。人間の判断力はまさに経験と勘に裏打ちされた匠の技術の真髄です。この部分は発展途上のAIやビッグデータ解析でもまだ追いつきません。匠の技術をデータ化して見える化し、地域で共有することで、非熟練者でも高度な判断が可能になると期待されています。
CHAPTER 3
生産者視点に
立つ。
写真提供:宮守川上流生産組合
スマート農業に関する期待が高まる一方、その普及のスピードは必ずしも上がっているとは言えません。
生産現場に目を向けると、農機メーカーや生産プラットフォームなどを提供する事業者と、スマート農業を導入しようとする生産者側の双方が抱える課題が垣間見えます。
有識者の見解を踏まえ、スマート農業普及への課題と解決の糸口を探りました。
CHAPTER 4
スマート農業は
いまだ発展途上。
写真提供:京都府農林水産部
日本の農業が抱える課題を解決し、成長産業へ導くことを掲げて登場したスマート農業。描かれた将来像に、期待をふくらませた生産者も多かったと思います。現在、数々の施策が実施される中で、しっかりと生産現場に根を張り、思い描いた通りの活躍を見せているのか。農村社会学の研究者と、実際にスマート農業を導入している生産者に、現状を聞いてみました。
CHAPTER 5
AGRI+からの提言
こゆ財団(宮崎県児湯郡新富町)主催の、
農業ベンチャーなどが集う「スマート農業サミット」
地域課題を解決へと導く、実効性あるスマート農業が導入できるのか。名ばかりの施策で終わるのか。この重要な分岐点で、進むべき進路を的確に判断しうるキープレーヤーは、地域の課題を熟知し、日常的に生産者との接点を持つ、自治体とJAの職員です。本章では、自治体とJAに期待される5つの役割を提言します。
新型コロナを
農業再生の
きっかけにできるか。
新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)の拡大により、
日本農業の課題が浮き彫りになっています。
焦点化された課題とその対応策とは。
本質的な解決に向けて、どのような取り組みが必要なのか、提唱します。
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