現場の視点で、新しい技術を創造する。

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現場の視点で、新しい技術を創造する。

CHAPTER 4 スマート農業はいまだ発展途上。

現場の視点で、
新しい技術を創造する。

クボタが2020年秋に発売予定の自動運転農機『アグリロボ田植機NW8SA』の試験機

人工知能(AI)、ロボット、ITの開発と聞くと、多くは専門家に任せるしかないと思うかもしれません。しかし、大規模農場でコメを生産する横田修一さんは、生産者が積極的に開発に関わるべきだと訴えます。現場目線によるスマート農業の実現を目指す横田さんに取材しました。

大切なのは自動化よりもコストや効率化への貢献度

離農者から耕作地を受け入れ、年々、ほ場面積を拡大する横田農場が目指すのは、「最小限の人員・機械でより広い面積を管理すること」。そのためにスマート農機の試験導入も積極的に行っています。
例えばドローンセンサー。さまざまなメーカーの製品を試してきましたが、「現状では微妙な稲の色や形状変化の観察など、人間がほ場で観察する作業を代替できるものはない」と横田さん。稲の生育や収量のムラなどを可視化するソフトも話題ですが、「海外の何百haもある田んぼならともかく、日本の数haの農地で果たしてどれほど効果があるのか」と疑問を呈します。
「トラクタやコンバインも同様で自動化しても結局、監視は必要なので他の作業はできません。1人で2台動かすのもコストや効率面で疑問です」

「ほ場管理の中でもとくに収量への影響が大きいのが水位と水温の調整」という横田さん。この課題を解決するため、2016年に仲間の農家と農匠ナビを設立。水田の水位をセンサーで測り、自動で給水する「自動給水機」を2020年春に発売

使い方次第で強い味方にも無用の長物にもなる

横田農場には、開発中の農業機械について各メーカーが意見を求めにくることが多いといいます。自動運転田植機を2020年秋に発売予定の株式会社クボタもその一つ。
もともと横田さんは、自動田植機は実用的ではないと考えていました。「例えば、旋回時に地盤がゆるいと泥にはまって停止したり、狭い場所や変形のほ場には向きません。準備に手間取る間に、人間が操作した方が早いこともあります」
メーカーの開発者らが自信を持っている、直進をキープして素早く植える作業にも横田さんは疑問を呈します。「田植えはきちんと植えることが大事なのであり、まっすぐ走ることが重要ではないんです」
一方、クボタの実験機については、「有人・無人の使い分けができる点が大きなメリット」と評価します。例えば「今日は種まきに人をシフトしたい」という時には、従来2人で行う田植機の作業を無人走行により1人で行い、残りの人員を種まきに切り替えることができます。田植えの精度が落ちる可能性はありますが、農場全体でみれば効率が高まることがわかったからです。
「使い方次第で強い味方にも無用の長物にもなるのがスマート農業。だからこそ農家が主体的に関わり、発信していくことが重要」と生産者の関与の大切さを訴えました。

トラックの苗の積み下ろしはまだ人力

代掻きなどで活躍する自動トラクタ

有限会社横田農場 代表取締役
横田修一さん

1976年茨城県龍ケ崎市生まれ。茨城大学を卒業し、実家の横田農場に入社。複数のコメの品種を取り入れて作期を分散することで、広大な農場を田植機とコンバイン1台ずつで運営する効率経営で知られている。2013年には農林水産祭 天皇杯を受賞した。