スマート農業の活用を通して、地域社会が抱える課題を考える契機に。

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スマート農業の活用を通して、地域社会が抱える課題を考える契機に。

CHAPTER 4 スマート農業はいまだ発展途上。

スマート農業の活用を通して、
地域社会が抱える課題を
考える契機に。

メーカーやJA主催の農業機械の展示会は、農業関係者が一堂に会する場であり、さまざまな人が意見交換できる場でもあります(写真提供:芦田准教授)

先進のロボット技術やITに対応した機器やシステムが熱視線を集めているスマート農業。そうした中、独自の視点でスマート農業を捉えているのが、社会学者である神奈川大学の芦田裕介准教授です。農業機械と農業者の関係性をうかがうと、日本農業界におけるスマート農業の新たな位置づけが見えてきました。

アフターケアによりユーザーニーズを汲み上げる

「スマート農業には、自動運転田植え機やトラクタなどを導入すれば、効率化が進み、収益がプラスになるというイメージがあります」。生産者がスマート農業に抱く期待について、芦田さんはこのように代弁します。しかし、実際に導入した農家の声を聞くと、具体的な効果は分からないのが現状といいます。
なぜか。日本の農業機械は1950年代から普及が始まり、効率化が進んでいることから、新機能を搭載しても、生産性が大幅に向上するのは難しいという実情があると、芦田さんは分析しています。
「一般の生産者から評価が高いのは、水管理システムや草刈りなどの機能です。しかし、事業者に直接声を届けられる生産者はごく一部。見落とされがちですが、普及に必要なのは、ユーザーに対する販売後の細やかなケアです。事業者側によるメンテナンスを兼ねた現場の声を汲み上げるサポート体制が、製品開発上も必要だと思います」(芦田さん)

田んぼの角が直角になるように植えるのが生産者の「美学」、そのために機械も自ら手入れします(写真提供:芦田准教授)

スマート農業の普及は、担い手の増加にも貢献

スマート農業の普及に向けて芦田さんが提唱するのが、「スマート農業はあくまでも手段であり、導入自体が目的になることは本末転倒である」という考え方です。スマート農業を手段として導入した先に実現すべきは、どんな農業のあり方なのでしょうか。
「田舎暮らしの中で自然環境に向き合いながら、自律的により良い農産物を作りたい。こんな思いこそ、人が農業へ惹きつけられる、農業本来の魅力ではないかと思います。スマート農業のメリットとされている効率化や収益化は、農業本来の魅力と相反する面もあります」と芦田さん。普及のためにはスマート農業を産業政策としてではなく、担い手不足、農業振興、特産品開発など、地域課題解決の一端として考えるのが望ましいとの見解を示しつつ、「地域に根付く農業の魅力を生かすことにスマート農業を活用できるかが、普及のカギになると考えます」と展望を語りました。
農業本来の魅力について考えることで、スマート農業の普及と担い手増加という2大課題を解決する糸口が見えてきました。
「具体化に向けては、自治体、事業者、JAなどが協力し、地域の関係者が一堂に会する場で、生産者の声を吸い上げ、トライ&エラーを試みていくことが必要です」
スマート農業は、人口減少、高齢化、中山間地域など、地域社会が抱える課題の解決に向けて、地域のステークホルダーが真剣に考えるテーマとして捉えることができそうです。

神奈川大学 人間科学部人間科学科 准教授
芦田 裕介さん

1984年岡山県生まれ。2014年京都大学大学院農学研究科博士後期課程を修了し、博士号(農学)を取得。日本学術振興会特別研究員PDを務めたのち、宮崎大学での講師、准教授を経て、2019年4月より現職。専門は社会学(地域社会学、農村社会学)