新型コロナを農業再生のきっかけにできるか。

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新型コロナを農業再生のきっかけにできるか。

COLUMN 新型コロナを農業再生のきっかけにできるか。

新型コロナを
農業再生の
きっかけにできるか。

新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)の拡大により、
日本農業の課題が浮き彫りになっています。
焦点化された課題とその対応策とは。
本質的な解決に向けて、
どのような取り組みが必要なのか、提唱します。

日本の農業課題1担い手不足

コロナ禍による影響≫外国人技能実習生来日激減

対応策≫コロナ禍で休業中の業界や人材とのマッチング

日本の農業における最たる課題が、農業人口の減少です。要因は収益性の低さ、新規参入の障壁などさまざまですが、未だ解決策は見出されておらず、次世代の担い手不足は顕著です。この課題をカバーしてきたのが、「外国人技能実習生」の存在ですが、昨今は感染症拡大によって来日が途絶え、農繁期を迎える現場は人手不足の深刻さが増しています。
こうした現状を踏まえ、農水省は感染症の影響で働く場を失った人たちに就農してもらうことで担い手不足を解消するため、数々の施策を決定。また、自治体でも同様の動きがあり、青森県弘前市では補助金制度を創設し、休業中の市民等と農業現場とのマッチング事業を始めています(※1)。民間でも、観光施設に特化した求人サイトと農業人材シェアリングサービス企業が提携。休職する観光人材の雇用維持と農家の人手不足を解消する仕組みを構築しています(※2)。

日本の農業課題2販路の固定化

コロナ禍による影響≫外食需要減と食品ロス

対応策≫消費者への直接販売など新たな販路の再評価

生産者にとって学校や飲食店などの固定販路は、利幅は小さくとも安定収入を得られる大切なものでした。ところが、感染症の影響で休校や営業自粛が続き、出荷のストップに至って生産者は大打撃を受けています。
こうした状況下で農家に光明をもたらしたのが、『食べチョク』などのインターネット販売をはじめとする、消費者へ直接販売するスタイルです。岐阜県の生産者は、イベントの中止で余った落花生を『食べチョク』に出品したところすぐさま完売(※3)。マージンのない価格で新鮮な作物が手に入るのは、消費者にとっても魅力的なことから、農家と消費者の間にWIN-WINの関係が構築できたと言えます。農水省も「国産農林水産物等販売促進緊急対策事業」で、インターネット販売の送料やテイクアウトの容器代などを補助し、販路の多角化をサポートしています(※4)。こうした販売スタイルの特長は、商品内容と価格を、農家が自ら決定できること。新しい販路が拓けたことで、小規模農家でも独自に稼げる道が見えてきました。

日本の農業課題3食料自給率の低さ

コロナ禍による影響≫生産国による輸出制限

対応策≫中山間地域をはじめ日本農業全体の生産力強化

農業人口の減少と次世代の担い手不足により、日本の食料自給率は主要先進国の中でも低水準で推移しています(※5)。かねてよりこの課題が認識されていた中、感染症の世界的な拡大によって大規模な移動規制や物流混乱の余波を受け、一部の食料生産国は国内供給を優先して食料輸出を制限する動きが出始めました(※6)。今後、感染症の蔓延がさらに深刻化すると各国の輸出制限は一層加速し、輸入が滞る事態も考えられます。
日本は今、こうした事態を契機に、食料自給におけるリスク管理を強化すべきだと言えるでしょう。スマート農業が対象とする、大規模化を主軸とした生産性や効率性を向上する政策だけでなく、中小農家や中山間地域など条件的に不利な地域の農家も積極的に支援するなど、日本農業全体の生産力を強化して自給率を高める施策が急務であると言えます。

農産物・食品の輸出規制に関する最近の動き

※6:2020年7月10日時点 農林水産省 我が国における穀物等の輸入の現状より作成

日本の農業課題4就農イベント以外の新規就農者対策の手薄感

コロナ禍による影響≫就農イベントの相次ぐ中止

対応策≫自治体主催のオンラインによる就農フェア・移住セミナー活況

これまでは、次世代の担い手を求め、新規就農者を募るイベントや移住ツアーが、日本各地で行われてきました。ところが、感染症の拡大で多くのイベントが中止になっている中、オンラインによる就農フェア・移住セミナーの開催や就農相談窓口を開設する動きが広がっています。
この背景にあるのは、コロナ禍を契機に、都会から農村への移住に関心を持つ層が増加する可能性があるという点です。
2020年5月に開催された「オンライン全国移住フェア」には、38道府県・138団体が出展しました(※7)。オンライン就農窓口を設ける自治体も増えており、長野県では、就農コーディネーターや就農相談員がマンツーマンで相談に対応するWEB相談会を実施(※8)。大分県では、オンライン就農相談窓口を4月に開設し、農業に興味がある人、農業を始めたい人、農業法人に就職したい人からの相談を受け付けています(※9)。
このように全国各地の自治体が、就農希望者に向けたオンライン上での積極的なアプローチを展開し、多くの参加者を集めています。

農業課題を固定化する「負のサイクル」解消こそが、本質的な解決策

日本の農業は、生産者の高齢化や担い手不足を認識しながらも、農家の低収益や新規就農者の参入障壁といった根本的な課題の解決は手つかずのままでした。その結果、農業人口は減少し、食料自給率も低下。担い手不足は恒常的な課題として固定化し、数年後には帰国する外国人技能実習生に頼らざるを得ないという「負のサイクル」から抜け出せていません。
そして今回、感染症拡大の余波を受け、図らずも根本課題がフォーカスされる格好に。都会での生活に不安を感じ、地方での就農に興味を示す人が増える可能性が浮上していることからも、「負のサイクル」を断ち切るチャンスに遭遇していると言えます。この機会を生かし、自治体主催によるオンライン就農相談の積極的な開催と同時に、農家収入や参入障壁などの根本課題を自治体主導で解消し、就農人口増加につなげることが求められています。