正確なデータから効率的なCO2施用が可能に
茨城県鉾田市は、肥沃な土壌と豊富な日照量、首都圏への流通環境にも恵まれた関東随一の農業地帯。市町村別のイチゴ出荷額では全国トップクラスの実績を誇ります。
「鉾田のイチゴ収量はまだまだ伸びます」と話すのは、JAほこた苺部会・副部会長の鎌田充貴さんです。経営する鎌田農園では主に「とちおとめ」を栽培し、JAに全量出荷することで栽培技術の向上に専心しています。
特に熱心に研究するのはCO2制御です。「冬場の厳寒期にどれだけハウスの環境を整えられるかで春先の収量が大きく違ってきます。肥培管理も重要ですが、CO2制御のほうが費用対効果は高いですね」と鎌田さん。
慣行はLPガス燃焼方式ですが、液化炭酸ガスを株元に局所施用する方法が最も効果的だと聞き、2年前に圃場設備を増強する際、高圧ガス工業の液化炭酸ガスと併せて『AGROS CONTROL(アグロスコントロール)』を導入しました。
「環境測定器は他にも運用していますが、『AGROS CONTROL』は最も信頼性の高いデータを取ることができます」と鎌田さん。イチゴ栽培で大事なことは、予測、準備、観察、考察、そして実行。そこで成功の鍵を握るのが、データによる裏付けです。
「日射のある時間帯に効率よく与えることが肝心です。かつては日中に炭酸ガスを焚いても換気で逃げると考える生産者もいましたが、与えなければ欠乏することがデータを示すことでわかってもらえました」と鎌田さん。
日照は自然に任せるしかありませんが、CO2濃度はコントロールが可能です。シーズンの3分の1を占める曇りと雨の日に、いかに効率よく、晴れの日に近い光合成をさせてあげられるかが腕の見せどころ。
「私たちも毎日イチゴを見ているのでCO2をどれだけ吸うかわかりますが、データは人間が思う以上の正確さで正解を教えてくれます」。的確なCO2制御ができているハウスのイチゴは、葉が厚く、病害虫に強く、端境期の2月も成り疲れなく収穫できるそう。
また、ボンベが空になるとメールで通知されるため、複数個所の圃場を持つ鎌田さんには仕事効率化につながります。
成果は仲間に共有!ブランド力向上を目指す
JAほこた苺部会では、生産者同士がお互いに情報を共有して収益率アップを目指すチーム型の農業で個々が成長してきました。15年前とくらべて生産者の数は減りましたが、売上は大幅に伸びています。今後は茨城県オリジナル品種「いばらキッス」の栽培拡大でブランド力の向上をはかりたいと抱負を語ります。
「イチゴは品質が上がれば収量アップを目指せます。良い製品を使えば反収が上って仕事時間も短縮できます」と鎌田さん。管内初の『AGROS CONTROL』導入の成果にも注目が集まっています。
学術的にも実証された、炭酸ガス局所施用の効果
液化炭酸ガスには二つの重要な特性があります。一つは高濃度かつ細やかな制御ができること。作物がより効率良くCO2を吸収できるよう、株元等の局所から安定的に与えることが可能です。
もう一つは熱の発生がないこと。日射が強く光合成が盛んな温暖期や、換気を伴う時間帯もハウス内の温度に影響を与えることなく施用できます。加えて、複数の単棟ハウスが連なる場合でもガスの圧力を生かして安定的に供給できることや、化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出がなく環境に優しい等の利点もあります。
「愛媛大学との共同研究で、液化炭酸ガス施用区は無施用区と比べて収量が高いことや、日射が強い時期に液化炭酸ガスを施用することがより効果的であることが分かりました」と話すのは、高圧ガス工業土浦研究所の山本滉樹人さんです。
栽培環境の季節変化がCO2施用効果に及ぼす影響を検証する同実験で、トマト養液栽培で長期にわたるCO2施用を行ったところ、液化炭酸ガス施用区(400ppm維持施用)は無施用区との比較で月平均29%収量が高いこと(10a換算)、及び、液化炭酸ガス400ppm維持区は灯油燃焼式慣行区との比較で、粗利から施用費用を差し引いた利益が10%高いこと(10a換算)がそれぞれ実証されました。
「施用方法の試験で蓄積した知見と現場の声をもとに、よりよい作物を作る理想的な環境構築へ弊社一丸となってお手伝いしたい」と山本さんは話します。
全国各地にガス事業拠点があり、ボンベやタンク等さまざまな供給方法でのご提案が可能な点や、営業担当がシステム設置から炭酸ガス供給までトータルサポートする体制も同社の強みです。
液化炭酸ガスによるCO2施用は、イチゴ、トマト、キュウリ、ナス、花きなどの施設園芸で導入され、生産者から収量増や品質向上の声が届いているそうです。
高圧ガス工業は、生産者が目指す農業を数々の実験でも実証し、農業の高収益化に貢献しています。
【取材対象者紹介】
茨城県鉾田市のイチゴ専業農家の二代目。実業団野球部を経て就農。JAほこた苺部会で研究部の部長を務めたのち副部会長に就任。
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