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中山間地域 農業の複合経営魅力物語 山﨑 誠さん

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中山間地域農業の複合経営魅力物語

08

大分県

yomoyamaya

山﨑 誠さん

山﨑 誠さん
PROFILE 人物紹介PROFILE 人物紹介

栽培作物

少量多品目有機野菜

耕作面積

1.2ha

経営規模

本人

移住形態

Iターン

前職

音響関係、飲食店

農地の取得

農地付き家購入

就農までの期間

協力隊員として3年間

移住した年

2016年

農業

×

農業

×

加工品

  • 少量多品種

大分県臼杵市が独自に認証する「ほんまもん農産物」に魅せられ、当地へ移住した山崎さん。一から有機農業を学び、直接出会ったお客さまの声と誠実に向き合い、野菜づくりをしています。食の循環の真髄を考え、環境に配慮した農業の姿を追い続けています。

土づくりからこだわる有機農業で、安心安全な食を届ける

田舎で子育てしたいという思いをご夫婦で実現。大分県臼杵市は国宝の石仏や古い町並みが残る町。

田舎で子育てしたいという思いをご夫婦で実現。大分県臼杵市は国宝の石仏や古い町並みが残る町。

移住を考えたのはいつごろですか?

大分市の出身で、大阪でコンサートの照明や音響の仕事をしたり、劇団に入ってみたり、飲食店で働いたり、東京に出たり。いろんなことをやってきました。2011年に結婚、妻にアトピー性皮膚炎があったことで、自然食品店やオーガニックマーケットで買い物をするようになりました。トマトが1つ400円という、かなりいい値段のものを買っていたんですが、家計に響きますよね。それなら、自分たちで作って暮らせるようにシフトチェンジしていこうっていうのが農業へのきっかけです。そのころ妻の妊娠が分かって、子どもが生まれるなら、田舎のほうで子育てしたいっていう気持ちもありました。

自然栽培に近い農法で作った野菜たちは生命力にあふれている。

自然栽培に近い農法で作った野菜たちは生命力にあふれている。

トマト1つ400円を自分で作って暮らすようになりたい

まずは学んでみようと2010年、大阪府立大学で植物生理学のセミナーを半年間受講しました。そこから、農業を学びながらできる仕事はないかと探していたときに、奈良県のコニュニティFMの求人を見つけました。その後、ここで出会った農家さんに「オーガニックアグリスクールNARA」の存在を教えてもらい、半年間受講しました。2013年には社会福祉法人がやっている農業生産法人に就職し、2haの畑の管理をしていました。ここでトラクターの操作などを覚えました。

移住の経緯・家を見つけるまで

オーガニックアグリスクールNARAに行っていたときに、視察に来ていた大分県の農政課の方と知り合いました。その後、大分県で新規就農のセミナーをやるから参加してはいかがですか?と呼んでもらったんです。それがきっかけで臼杵市を知りました。臼杵は市を挙げて農業を支援し、農産物を有機野菜として認める独自の制度「ほんまもん農産物」もありました。 臼杵が気に入り、2016年、地域おこし協力隊員として臼杵の藤嶋祐美さんの元で3年間研修をしました。目指す方向性、人の縁、そして幸運。さまざまなものが、うまく重なった感じがありました。 家は臼杵市内で40軒くらい見て回りました。こだわりたいところ、僕たちの場合は農地の付いた家という点を妥協せずにいたので、なかなか見つからなかったんですが…。たまたま60代の方が、農地の付いた大きな家を安い値段で譲ってくださることになりました。

2017年から臼杵市で始まった「ひゃくすた」。月1回野菜や加工品などを販売。

2017年から臼杵市で始まった「ひゃくすた」。月1回野菜や加工品などを販売。

 

地域おこし協力隊からスタート

農業技術の学びかた

農業技術の基盤ができたのは、社会福祉法人でやっていた畑の管理ですね。障害者支援施設が利用者のリハビリも兼ねてと農業法人をつくったんです。減農薬で、奈良の伝統野菜を育てていました。ここでの実践が、今にも続いていると思います。オーガニックアグリスクールNARAでは、座学と実地の半々で学ばせてもらいました。そして臼杵の藤嶋祐美さんからの学び。藤嶋さんからは、臼杵の風土を学びました。作業と収穫する時期を時系列で教わりました。

植物性の堆肥にこだわる

地域おこし協力隊員として、「ほんまもん農産物」の認定を受けた農家として独立することを最終目標に、藤嶋さんのところで修行していました。独り立ちしたのは2019年。今は、自然栽培に近いかたちを目指しています。できるだけプラスチックを畑に持ち込まないようにして、草マルチなどで除草しています。動物性の堆肥は使わずに、緑肥と米ぬかだけでつくった独自の堆肥で野菜の栽培をしています。

販売ルートは独自で開拓

うちは少量多品目なので、「大量にできたから販売先をどうしよう?」と悩むこともあります。独自のルートがいくつかあって、「いくらでも買うよ」と仕入れてくれる飲食店さんなどがあるので、大変ありがたいです。ほかの卸先は、臼杵市内の自然食品店やオーガニックのお店、さらには大分市や別府市まで持っていったり、発送したりしています。問い合わせがあれば県外でも送るんですが、極力地元で完結させたいなっていう思いもあります。あとは、学校給食にも規格が合えば出すようにしていますね。

補助金も活用と収入の確保

就農時には臼杵市の新規就農支援金を使いました。トラクターや耕運機、草刈り機なども購入しました。この資金の一部には、地域おこし協力隊の任期終了の際にもらえる創業支援補助金も使いました。家や倉庫の改修にも臼杵市の補助金を利用しました。臼杵市は国の定める有機JAS資格を取ると補助が出ますので、それも活用しています。また、「おおいた有機農業研究会」に所属し、有機JASの検査員もしています。研究会で有機JASを申請している農家さん、事業者さんのところに行き、検査をします。あとは、有機農家になりたい方々へ向けての講習会や説明会ですね。資料をつくり、登壇しています。こういったことでも収入を得ています。

ゆくゆくは加工をメインに

人気のポップコーンは、“しばらく飾ってから後で食べました”というお客様も。

人気のポップコーンは、“しばらく飾ってから後で食べました”というお客様も。

「子どものおやつを」加工品に力を入れる

現在49歳。ぎっくり腰をやったり、昨年も体調を崩したりと、畑でずっと作業していくのは厳しいなと実感するようになってきました。ゆくゆくはつくったものを加工品にして、販売することをメインにしていきたいという気持ちがあります。
加工品で徐々に始めているのが、ポップコーン。鞘付きのまま、もしくは、粒の状態で売ったり、火を入れてポップコーンの状態で販売したり。子どもが安心して食べられるおやつになればいいなと思っています。

新規就農者へのメッセージ

土地のことを知って、自分がどこまで動けるのかっていう計画を立てる。一日のスケジュールも、そこに自分がどこで休むかってことも含めて、計画をするのが大事です。体調を崩して動けなくなったからこそ、身体を休める必要性を痛感しました。
また、近所付き合いは大切です。地元の人への敬意がないと、相手はそれをわかってしまいますし、噂なんかもすぐに広がります。謙虚な気持ちで、地域や人と接することを心がけたほうがいいでしょう。

取材・文=乾祐綺 写真=乾祐綺 編集=養父信夫

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