果樹農家 青木祥子さん
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山梨県に移住・就農したきっかけは?
大阪で飲食の仕事をしているときに出会った店のマスターからワインの話を聞いているうちに、その作り手に興味を持ちました。自分もブドウを作ってみようと、醸造用ブドウを生産する会社の求人に応募して就職が決まり山梨県に移住しました。移住後、先輩社員からの紹介で笛吹市で果樹栽培をする竜一さん(夫)と出会って意気投合。会社を辞めて彼を手伝うことを決意しました。
竜一さんは東京で彫金師などの仕事をしていましたが、山梨の祖父母が農業を辞めるというので笛吹市に戻り、週末農業でモモ・ブドウの果樹栽培を始め、「HOPE園」を立ち上げました。同時に山梨県立農業大学校(現・専門学校農林大学校)職業訓練科の果樹コース(9カ月)に通い、その後独立就農しました。二人で果樹園を営む暮らしが当たり前になり、今から4年前に結婚。笛吹市で約20品種のモモ、十数品種のブドウを栽培し、JA出荷のほか直販もしています。
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就農に際して不安はありましたか?
就農したときは20代だったので怖いもの知らずで飛び込みましたが、本来は農業にあまり向いていないと思います。集中力を切らさずに作業することが苦手なので…。夫は逆で、黙々と仕事をすることが得意です。最初は農作業が苦手だということを認めたくなくて、頑張って夫を追いかけていましたが、だんだん調子が乗らなくなりました。夫に「できないことを責めないでほしい」と打ち明けると、「思い詰めるほど無理しなくていいよ」と言ってくれて肩の荷が下りました。
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楽しむために工夫していることはありますか?
私が集中力を切らさずにやり終えられる、気持ちのいい仕事量を与えてもらうことにしました。農業はいくらでもやることがありますが、1時間でモモの木3本とか、袋掛け100枚とか、今日はここまでと終わりを決めてやっています。好きな曲を流して気分を上げながら、15分ごとに休み休み作業をしています。今はもうすぐ1歳になる長男(10カ月)の育児が中心の生活で、基本的には夫に畑を任せています。
その代わり私は人とつながることで農園に貢献しています。やまなし農業女子プロジェクトで情報交換をしたり、夫から加工を引き継いで商品開発をしたり、その中で発酵の先生とコラボレーションするなど、興味ある分野に食らいついています。
夫はもともと個人でやるつもりだった農園を私が手伝うことで、直販や6次産業化などにより販路を拡大できたり、一人でやるよりも楽しいと思ってくれているようです。
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農業経営で困ったことはありますか?
農地の確保と拡大に苦労しました。土地探しは今も継続しています。モモ畑は夫の祖父母の土地でしたが、当時は別の農家に貸していたので使えるようになるまで就農から5年かかりました。もしそれがなかったら、もっと苦労していたと思います。
収量は安定してきましたが、気候変動などの影響もあり、その全てがいいものになるとは限りません。加工するにしても自分たちで商品化して販売するには難しいところもあります。また、無農薬栽培にもチャレンジしましたがこの辺りの土地は窒素分が多いので難しいようです。辞める勇気を持ちながら、挑戦することが今のテーマです。
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今、チャレンジしていることは?
非農家の方が農業を始めるのはハードルが高いため、その足がかりになればと思い、昨年から独自に農業体験の受け入れをしています。主にインスタグラムやLINEで案内して、初年度は食品関連企業や飲食店の研修に利用してもらいました。指導役の夫は人と話すのが苦手でしたが、農作物について知ってもらったり、栽培方法を教えるのが楽しくなってきたようです。体験者の宿泊場所の確保が課題で、古民家を借りて農泊ができないかと考えているところです。
夫は栽培が難しいといわれる扁平なモモ「蟠桃(ばんとう)」を作っています。このほかにも、新規導入のCXやフランスの品種も試験的に栽培しています。お客様の声を聞きながら拡大して、自分たちがおいしいと思う品種を作っていきたいです。
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やりがい
直販のモモは樹上完熟させて発送しているので、お客様に「おいしい」と言っていただけるのがうれしいです。また、人との縁がつながることにやりがいを感じています。私たちの結婚式も人のつながりで実現しました。友人の出張シェフが企画を持ち込み、料理のサービス、ヘアメイク、司会も友人が担当してくれて、その様子をYoutubeで生配信するなど、忘れられないイベントになりました。モモは旬が短いからパワーが結集するのだと思います。
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農業の魅力、就農希望者へのメッセージ
農業が自分に合うかどうかは、やってみないとわかりません。就農する地域や人との相性もあるでしょう。どこかで体験してみて、肌で感じてみるのが大切です。山梨で女性が一人で挑戦するのは決して難しいことではないと思います。やまなし農業女子のメンバーにも山梨にIターン就農した人もいれば、未経験からチャレンジしている人もいます。果樹は冬の収入が不安かもしれませんが、特技や好きなことを活かして副業をしている方もいます。また、薬剤散布や機械整備などに不安があるかもしれませんが、助けてくれる人が必ずいます。私も就農を悩んでいる人の相談に乗れたらいいなと思っています。
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