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社員ファーストで農力全開!

特集3 宮崎式農業経営力 CASE.2【稼ぐ力】香川ランチグループ

地域活性化を軸としたビジネスモデル
社員ファーストで農力全開!

本社の敷地には6棟のコンテナハウスが並びます。室内はベッドやテレビ、ユニットバスなどが完備され快適な環境

宮崎県中部の川南町で3代続く養鶏農家を基点に、6次産業化を進めるのが、香川ランチグループです。「地域と共に歩む」ことに初代から取り組み、現在は3代目社長の香川憲一さんを中心に、地域振興を推進するビジネスモデルの構築に取り組んでいます。

地域に開いた新社屋で、農業への興味を喚起

元ミュージシャンという異色の経歴を持ち、従業員から愛される香川憲一社長

初代・善太郎さんが1963年に150羽から養鶏業を始め、2代目の清さんが農場の自動化や鶏卵・鶏肉の加工会社を設立するなど、多角化を進めました。憲一さんが社長に就任したのは2004年。その後の、2010年には、口蹄疫や鳥インフルエンザの発生で、畜産業・養鶏業に激震が走りました。
「口蹄疫の時に町内で殺処分した家畜の頭数は17万頭。一方、当時の人口は1万7000人でした。つまり町民一人当たり牛・豚10頭。川南町は畜産の町であると改めて実感しました」と香川社長は語ります。
だからこそ、農場だけでなく、加工工場や物産館での販売などで6次産業化を進め、多くの雇用を生む香川ランチグループでは、町の活性化を一番の理念としています。具体的な取り組みの一つが2013年に建てられた新社屋の見学コース。ここでは卵の出荷や加工などの工程を自由に見学できます。
「余分なコストがかかる見学コースの設置は、設計士や金融機関にはずいぶん反対されました。でも、今の近代的な農業を地域の子どもたちに見てほしかった。これをきっかけに、子どもたちが農業に興味を示し、就農を考えるようになれば、将来的に地域の力になる。だから、どんなに反対されても、絶対に実現させたかったんです」
この他、地元の教育委員会と連携し、高齢者向けの健康教室を開いたり、駐車場を利用した盆踊り大会など、地域に開いたイベントも数多く開催しています。その取り組みは徐々に地域に浸透。同社の周年祭に地元高校の書道部がパフォーマンスを申し出るなど、双方向の成果も生まれています。
「『希望に向かって僕らの重なる夢、香川ランチ』と書道部の皆さんに書いていただいて感激しました。地域に開いた活動の成果だと思っています」

本社の加工工場の見学コース。一般の人も卵の加工工程を自由に見学できます

「子どもたちのために見学コースは絶対に実現させたかった」と香川社長

フルオートメーション化された最新のウインドレス鶏舎。窓をなくすことで害虫や野鳥の侵入を防ぎ、清浄な環境を保つことができます

地元高校の書道部がパフォーマンスで書き上げた書が香川ランチに寄贈されました

コンテナハウスや社用車で雇用を促進

2019年夏、同社の敷地内に赤いコンテナハウスが6棟建てられました。周囲には芝生や樹木も整備され、赤と緑のコントラストが美しく映えます。ここは社宅として活用し、特に若者の雇用に生かしたいと香川社長は語ります。
「家賃は1万円。社用車も貸し出して、若者の生活を応援することで、若者の県外流出を抑え、当社も労働力確保につながります。さらに地元の金融機関と連携して若者に貯金を勧め、コンテナハウスの次はマイホーム、という夢につなげることができれば、町の活性化も期待できます」
この「善太郎ヴィレッジ」は、メディアでも紹介され、地元も注目。さらに棟数を増やし、コミュニティの形成なども視野に入れています。宮崎県立農業大学校と隣接する同社は、インターンシップなどで連携。県内の他の大学ともつながりがあり、同社の思いを学生に直接伝える機会が多いことも、独創的な人材確保の原動力となっています。

働く環境も社員ファーストで改善

若者を意識した福利厚生の充実だけではありません。同社では新社屋建設と共に自動洗卵選別機を2台導入。同社の日産処理量からするとオーバースペックな設備投資ですが、社員の労働環境の改善や週休2日制を実現し、雇用面で他社との差別化を図っています。その他にも、定年退職金の積み立てや労災以外の保険加入など、就業環境の整備に力を入れています。
「社員ファーストの体制を作ることで、社員も応えてくれています。社員が率先して動くことで生産性が向上する他、リーダーに育つ若者も多く、定着率も安定しています。地域のためにまだまだ頑張りたいと思います」

『フルーツたまご』はフルーツ酸の一種であるクエン酸を混ぜた餌で飼育した鶏から生まれる卵。クエン酸は鶏の腸内細菌のバランスを整え、健康な鶏を育てます

自社生産の卵を使用した茶碗蒸し。規格外品となった卵に付加価値を付けて販売する6次産業化の取り組みです

『善太郎』は、初代・善太郎さんの飼育方法を再現し、かつ乳酸菌、酵母などのさまざまな有用微生物を飼料に加えることで、卵殻が強く、あざやかな黄味とこくのある味を実現しました

『鮮々生々』は、香港向けに月間10~15t輸出され、今後も拡大の予定。完全密閉包装で中に炭酸ガスを入れることで、新鮮なまま現地に輸送しています

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