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ICTで働き方改革。

特集3 宮崎式農業経営力 CASE.4【スマート農業】農業生産法人 有限会社新福青果

スマート化で「誰でもが活躍できる」環境に
ICTで働き方改革。

有限会社新福青果(都城市)は、農業生産法人として早くからICTを使った農業経営の効率化に取り組んできました。その過程で蓄積したノウハウは、現在、農林水産省が旗を振る『スマート農業実証プロジェクト』においても有益な気づきを与えています。

いち早くICTを導入。データの入力が負担に

農業生産法人 有限会社新福青果
社長室長兼事業統括部長 栗原貴史さん

直営農場(経営面積約35ha)でゴボウ、ニンジン、バレイショなどを生産する他、優良生産者の作った野菜を集荷し、全国に向けて安定的な出荷を行っているのが新福青果です(従業員数33名)。農作業の効率化を図るために、いち早くICTを活用した営農の在り方を模索してきました。『スマート農業実証プロジェクト』にはコンソーシアムの牽引役として参加。これまでの自社の取り組みを生かし、営農の立場から効果的なテクノロジーの活用法について提言しています。
「スマート農業は、大きく『データの活用』と『新技術の導入』の二つに集約できると考えています」と話すのは、同社の社長室長兼事業統括部長を務める栗原貴史さん。
同社では、2013年から外部ベンダーを用いたデータ活用に取り組んでいましたが、2016年にはこれを一旦中止しました。というのも、データ入力の手間がかかりすぎ、営農スタッフの負担が大きかったからです。しかも、1人当たり年間22時間かけて得られたデータは、「いつ」、「どこで」、「誰が」、「何をしたか」と、「天気」だけ。同じ方法で「作業の進捗率」、「土壌分析の結果」などの本当に知りたいデータを集めてみたところ、効果的なデータは1人当たり月間100時間以上かけても集められなかったといいます。
「こうした過去の失敗に基づいた提言をしていくことも、『スマート農業実証プロジェクト』において当社が果たすべき役割だと思っています」(栗原さん)

分析ツールの開発でさらなる効率化を目指す

ドローンを活用し、空撮画像から農作物の葉色やタンパク含量を解析するシステムが完成すれば、ピンポイントで生育状況を診断できるようになります

その後、データの収集方法を見直し、2019年からは栗原さんを中心とする体制でデータ活用を再スタートしました。新体制では、ICT改革チームが、営農、営業、経理の各部門からデータを回収した上で、入力・分析。分析結果を各部門にフィードバックし、役立ててもらう形にしました。トラクターの走行データはGPSと連動したシステムによってICT改革チームが直接取得するため、営農部門の負担は大幅に軽減。実際、新しいデータ収集方法を採用したことで、1人当たり月間100時間のデータ入力時間を削減しました。
データ分析ツールには、コスト面や柔軟性・汎用性の高さからExcelを採用。ただし、Excelでは地図や画像との連携ができないため、現在、ExcelデータをGIS(地理情報システム)データに自動変換し、各種データを電子地図上で見える化できるソフトを開発しています。同時にドローンで撮影した画像を基に生育状況を管理する圃場情報管理システムの開発にも挑戦中。これらのソフトやシステムの開発が完了すれば、圃場ごとの作付計画や収量品質評価などの作業が効率化します。

新技術が変える『働き方』

一方、新技術の導入に関しては、「新技術をどう使っていくかが重要です」と栗原さんは言います。同社では新技術を『働き方を変える』目的で活用しています。例えば、これまでは操作が難しい機械を動かすには、多数の熟練技術者が必要でしたが、スマート農業技術の導入で、経験の浅い人でも機械操作を行えるようにし、熟練技術者を農場マネジメントやトレンチャーでの溝掘り作業など、難易度の高い仕事にシフトする予定です。実際、特別な技術を持たない人でも、ラジコン草刈り機やドローンを使えば、草刈りや見回りといった作業を安全に行うことが可能です。今後の人口減少を見据えて、女性や高齢者、外国人らが活躍できる環境を作り上げるのが、同社の狙いです。
「今後は農業生産法人も一般の民間企業と同様に、属性や働き方を多様化させていくことが重要です。農業=朝から晩まで農作業といった固定観念を崩していきたい。スマート農業がそのための手段になるのではないかと考えています」(栗原さん)

ロボットトラクターや、自動操舵システムの導入で、熟練技術者でなくても正確な畝立てや耕うんなどが可能に

機器の重量がかなり重く危険性も大きかった草刈り作業も、リモコン操作の草刈りロボットの導入で、女性や高齢者が担当できる業務に。最大40度の急斜面にも対応できます

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