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行列ができる養豚農家のメンチカツ。

特集3 宮崎式農業経営力 CASE.7 【6次産業化】 有限会社観音池ポーク

6次産業化で課題をチャンスに変える
行列ができる
養豚農家のメンチカツ。

「消費者に安心して提供できる国産豚肉を自分たちの手で提供できないか」。そんな養豚農家の思いから生まれたのが、有限会社観音池ポーク(都城市)です。生産から販売、加工と徐々に業務範囲を広げ、6次産業化を実現しています。

銘柄豚を徹底研究。『観音池ポーク』誕生

有限会社観音池ポーク
代表取締役 馬場通さん(左)
生産現場(農場)PR担当 馬場康輔さん(右)

1960年代から輸入自由化が始まった豚肉。輸入豚肉に負けない、おいしくて安全な自分たちの銘柄豚を作ろうと、旧・高城町の養豚農家が1990年に立ち上げたのが、「観音池ポーク研究会」です。「観音池」とは、この地の桜の名所・観音池公園に由来します。
「生産×加工×販売」という6次産業の中で、養豚農家として最も重要なのが「生産」です。ある飼料との出会いが、銘柄豚の方向性を決定づけました。研究会設立時からのメンバーである馬場通さんは、「銘柄豚って何だ? ということから話が始まり、全国の養豚産地の情報を集めました。すると、宮崎の製薬会社の製品である『ネッカリッチ』という木酢酸を配合した飼料を与えている産地がありました。灯台下暗し。早速、自分たちもこの飼料を導入したところ、宮崎大学との共同研究で、病気やストレスへの抵抗力が高まり、豚肉特有の臭みのない、きめ細やかな肉質になることが分かりました」と当時を振り返ります。
消費者の反応も上々で、1991年からは『ネッカリッチ』の製造元からの紹介で大阪のスーパーと取引を開始。徐々に出荷量を増やし、月に300頭以上を出荷するまでになりました。そこで、1998年に「観音池ポーク研究会」から「観音池ポーク出荷組合」に組織変更。6次産業の「販売」事業へと領域を広げていきました。

ピンチをチャンスに。メンチカツが大ヒット

1990年代中頃から「観音池ポークはおいしい」「大阪でよく売れている」と話題になる一方で、地元で買える店がない…、という課題に直面しました。そこで、有限会社観音池ポークの前身となる販売会社「とんとん百姓村」を2001年に立ち上げ、観音池公園近くに直売所も開設。出荷組合が生産した豚肉を1頭買いして精肉販売を始め、地元ニーズにも応えていきました。しかし、そこでまた新たな課題が浮上します。
「ロースやバラに比べ、繊維が多く、脂肪分が少ないモモ肉やウデ肉は売れ行きがいまひとつ。これを何とかしたいと加工品のアイデアを提案し、女性スタッフが中心となって、2004年からメンチカツなどのオリジナル総菜作りを始めました」
こうした経緯で6次産業の「加工」事業がスタートしました。看板商品のメンチカツは、キャベツや玉ねぎをふんだんに使い、ジューシーな食感に。安全な食材へのこだわりから生まれる、安心できるおいしさが地元のケーブルテレビで紹介されると、メンチカツの知名度は一気に拡大。年間20万個以上を売り上げています。この他に冷凍食品や介護食を開発するなど、新たな需要にも対応しています。

観音池ポーク本店

花見の時期には店舗前に大行列が発生するほど人気の揚げたてメンチカツ

端材や放置竹林の活用でエコ養豚を実現

「販売」「加工」と事業範囲を広げる中で、「生産」もさらに進化します。2006年からは、畜産試験場や宮崎大学との産官学共同で、食品工場から出るパンなどの端材を使った飼料『エコフィード』での飼育試験を行い、その後、導入を決定。2017年からは放置竹林の竹を粉末にし、発酵させた飼料『笹サイレージ』も導入しています。いずれも肉質が向上し、おいしくなるのはもちろん、食品端材や放置竹林の活用で、資源循環型・環境保全型の養豚を実現しました。
これらの取り組みにより、『観音池ポーク』は、2017年からの2年連続で宮崎県畜産共進会の肉豚枝肉の部でグランドチャンピオンを受賞。2019年には日本農業賞の集団組織の部で優秀賞を獲得しています。
今後の課題は、さらなる知名度の向上です。「都城地域に3軒の直売所がありますが、もっと商圏を広げたり、集客力のある施設を運営していきたい。全国的にも知られる存在を目指します」と将来展望を語ってくれました。

『ネッカリッチ』

『笹サイレージ』

『観音池ポーク』を生産する二つの農場のうちの一つ、農事組合法人 萩原養豚生産組合 肥育農場

萩原豚舎:『ネッカリッチ』と『笹サイレージ』を配合したこだわりの飼料がつまったタンク

霧状に噴射するスチームを豚舎内に設置し、冬でも一定の湿度を保つなど、温度や湿度を適正管理し、豚の健康を維持

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