スマート農業シティはなまき【岩手県花巻市】
独自の施策を展開する
花巻市のスマート農業
農業が一大産業である花巻市では、農業者の声に耳を傾けながら、度重なる農業構造の変化に対応してきました。深刻な高齢化による農業従事者の減少により、農業の担い手の確保や農作業の省力化・軽労化が全国的に課題となっている中、花巻市では率先してスマート農業の推進に取り組んでいます。
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① RTK−GPS基地局の設置
「スマート農業に取り組む環境を整備してほしい」
市と農業者の意見交換会で、農業者から挙げられた意見です。そこで花巻市では、農業の将来像としてスマート農業に取り組むべく、市内北上川沿い平野部を受信エリアとするRTK-GPS基地局を整備。基地局が発信する電波を使用すれば、自動操舵システムを設置したトラクターや田植機を誤差2~3cmの精度で自動運転することができます。
市の独自予算で設置した、計4基あるこの基地局の電波は、市内農業者に無償で提供しています。 -
② スマート農業イベントの実施
毎年、花巻市独自のスマート農業実証実験を行い、その成果を発表するシンポジウムを行うことで、スマート農業に対する農業者の関心を高めています。
さらに、スマート農業体験試乗会を開催。実際に自動操舵システム等の最新機器に試乗する機会を作ることで、スマート農業機器が持つ良さや操作方法を知ってもらい、普及につなげています。 -
③ スマート農業機器導入経費
への補助スマート農業機器は高額で、導入には高いハードルがあるのが現状です。そこで花巻市では、平成29年度より市独自の補助金を交付しています。平成30年度からは、今後普及の可能性の高い農業用ドローンのオペレーター講習の技能認定に係る費用に対しても補助をスタート。
この事業の活用が進んだこともあり、令和2年度末現在で60件の市内農業経営体にスマート農業機器が導入されています。
※市単独補助事業の詳細は下記に記載しております。
はなまきスマートファーマー
花巻市では、RTK-GPS基地局や市独自の補助事業など、スマート農業に取り組みやすい環境が整っています。
そこで今回、スマート農業に積極的に取り組む市内の先進農業者の方々にお話を伺いました!
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自動操舵システムを装着したトラクター
花巻市で最初に『自動操舵システム』を導入した(有)盛川農場。代表の盛川さんの要望がきっかけとなり、花巻市に『RTK-GPS基地局』が建設されるなど、盛川農場は花巻市のスマート農業をリードしている。
盛川農場ではスタッフ5名で92haもの広大な圃場を管理するため、作業の効率化・低コスト化の実現手段の一つとしてスマート農業を取り入れている。小麦や大豆の畑作業をより早く、より精密に行うため、トラクターに『自動操舵システム』を装備。うねりのある広大な畑を、機器のアシストで一定の速度を維持したまま直進することが可能になった。自動操舵システムを装着したトラクター
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取水等を自動で行う水管理システムも導入し、労力を軽減させている
「近年は異常気象が多いので、台風などを避けるために夜間等でも作業を行う必要が増えました」と語る盛川代表。『自動操舵システム』があれば、夜間の暗い圃場でもモニターを見ながら安全に作業を行うことが可能になり、天候などによるスケジュール調整も容易になった。夕陽の反射や土埃による視界不良時も、スピードを落とすことなく正確な作業ができるうれしい効果もある。
取水等を自動で行う水管理システムも導入し、労力を軽減させている
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「これまで農業者が苦労していた作業をアシストし、解決に導いてくれるのがスマート農業の最大の魅力。どのような効果を狙うのか、目的に合わせて機器を選び性能を引き出していきたいです」と盛川代表は話す。これからもスマート農業機器を使いこなすことで、更なる農業の効率化・低コスト化に取り組んでいく。
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手のひらサイズの「繁殖・健康管理システム」
水稲・野菜・畜産の複合経営を行う(有)佐々木農園。牛の発情サインの見逃しを防ぐため、『繁殖・健康管理システム』を2016年に導入した。発情時の歩数の増加を検知するもので、先進農業者を視察した際にその存在を知り、導入を決めたという。
「牛の足に常時装着しておくだけで、グラフ化した歩数データと発情サインの通知がパソコンに届くシステムです。自宅にいながら牛の状態が把握できるので、頻繁に牛舎に行く手間が省けて楽です」と説明する佐々木農園の佐々木代表。「発情サインを逃すと、次回の発情は約20日後になってしまうので、効率の良い繁殖サイクルの把握にこのシステムは不可欠です」と効果を実感している様子。手のひらサイズの「繁殖・健康管理システム」
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「環境制御システム」はボタン1つで温度や湿度等を自動で維持できる
また、2019年にはミニトマトの『環境制御システム』を既存のハウスに導入。温度・湿度・CO2濃度・日射量などのデータを管理し、温度28℃・湿度80%というミニトマトの生育に最適な環境を自動で維持することができる。「データの管理に加え、ミスト噴霧やCO2の調整など、人の力ではできない事も『環境制御システム』はできます。おかげで収量が増えました。今後は経営規模や雇用を拡大したいと思っています」と喜びを語ってくれた。
「環境制御システム」はボタン1つで温度や湿度等を自動で維持できる
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今では市内農業者の研修会も開催している佐々木農園。農業者が持つ経験とスマート農業の力を掛け合わせ、次世代の複合経営を展開していく姿勢を見せてくれた。
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安価な水位センサーを採用することで大量導入による
初期費用を抑えている(農)リアルでは、『水位センサー』を使うことで、耕作する約500枚(計52ha)もの水田に足を運ぶことなく水位を確認し、取水・止水もスマートフォンで操作している。
「導入前は500枚もの水田を見回ることが難しく、水田の所有者に水管理を任せていました。水を出し入れするタイミングは所有者ごとにバラツキがあり、中干しや稲刈前の乾燥が一律にできないという課題を抱えていた中、花巻市の農政課からの紹介がきっかけで導入しようと決心しました」と振り返るリアルの新渕代表。安価な水位センサーを採用することで大量導入による
初期費用を抑えている -
スマホアプリから現在の水位の確認、取水・止水の操作ができる
2019年の導入時には20基からスタートした『水位センサー』。その便利さに、翌年には200基という数にまで拡大し、手元のスマホで数キロ離れた水田の水管理も行えるようになった。
『水位センサー』は水見のために水田に行く煩わしさから解放されるだけでなく、クマなどに遭遇する危険も回避できる。的確な水管理により収量もアップしているという。スマホアプリから現在の水位の確認、取水・止水の操作ができる
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「2020年には農薬散布作業のためにドローンを導入しました。スマート農業のおかげで重労働から解放され、時間的にも体力的にも余裕ができたので、息子と触れ合う時間も増えました。PTA活動の一環で子供たちにスマート農業の素晴らしさを教えることもあります」と新渕代表。これからも様々なスマート農業にチャレンジしていきたいと語ってくれた。
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花巻市設置のRTK-GPS基地局を利用し、自動操舵システムを運用している
水稲をはじめ、玉ねぎやニンニクなど多品目を生産し、年間を通して雇用を生み出している(有)アグリスト。『GPSガイダンスシステム』と『自動操舵システム』の導入を皮切りに、『農業日誌アプリ』でのデータ管理にも取り組んでいる。
花巻市設置のRTK-GPS基地局を利用し、自動操舵システムを運用している
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作業時間などの集計も自動で行うことができる
「きっかけは、普段から交流のある盛川農場への訪問でした。『自動操舵システム』で、定規を当てたように真っすぐに種が播かれている光景に感動し、2016年に導入を決意しました。花巻市の『RTK-GPS基地局』設置や市独自の補助金の存在も大きかったです」と当時の驚きを交えてスマート農業導入の経緯を語るアグリストの高橋代表。
2019年には研修先で紹介された『農業日誌アプリ』を導入。施肥量や作業時間などの正確な作業データをスマホに入力し、記録・管理している。最終的な目標はアプリの活用による紙とペンからの脱却だという。作業時間などの集計も自動で行うことができる
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「正確な作業データを振り返り、翌年に反省点を活かすことができるので作業の効率化や収量アップが期待できます。また、スタッフ全員が同じデータにアクセスできるので、情報共有にも役立っています」と話す。
インタビューの最後には「食べてもらうお客様に気持ちが伝わるよう機械だけでなく、人の手で行う作業も大切にしたい」と温かみのある考えも聞かせてくれた。 -
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花巻市で実施している
スマート農業の補助事業
花巻市農業⽤ロボット・情報通信技術機器導⼊⽀援事業補助⾦
市内におけるスマート農業の普及拡大のために、花巻市ではスマート農業機器の導入経費、農業用ドローンのオペレーター講習の技能認定に係る費用に対して補助を行っております。補助の内容、補助対象者、補助率等の詳細については、以下のリンク(花巻市公式ホームページ)をご覧ください。
なお補助を受ける際は、電話や直接お越しいただき、花巻市農政課への事前相談が必須となっておりますのでご注意ください(相談のない申請では、補助金を交付することができません)。
花巻市スマート農業
テストフィールドプロジェクト
全国有数の
スマート農業先進地「花巻市」
今、独自のスマート農業を
実施し、課題を解決すべく
テストフィールドを開放します
一大産業である農業を守り、発展させるため、農業関係機関と農業者が常に密接に連携し、課題解決へ向けた取組を展開している岩手県花巻市。
市によるRTK-GPS基地局の独自設置などの積極的な取組も、きっかけは「意欲的な農業者からの声」でした。
人(意欲ある農業者)、インフラ(RTK-GPS基地局等)...残る課題解決のカギは企業等の皆さまが有するアイディア(技術)です。
採用となるアイディアには、テストフィールド(実証ほ場)をご提供(※)いたします。このテストフィールドを用いて、農業関係機関、農業者、企業等が連携し、花巻市が直面する農業課題の解決に繋がる「スマート農業花巻モデル」の構築を目指すのが「花巻市スマート農業テストフィールドプロジェクト」です。
※農業者のほ場を実証ほ場としてお貸しいたします。
花巻市の農業の特徴
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① 多種多様な作物を育む
豊かな⼟地- ⻄の奥⽻⼭脈、東の北上⾼地。2つの全く異なる地質が東⻄それぞれから流れる川により運ばれ肥沃な⼟地を作っている。
- 農業関係機関がバックアップし、野菜や果樹を含め、多種多様な作⽬に取り組んでいる。
主要作目は以下のとおり。
< 主要作⽬ >
・ ⽔稲、⼩⻨、ヒエ、ハトムギ、大豆
・ ピーマン、ネギ、アスパラ、枝⾖
・ りんご、ぶどう、⻄洋なし
・ リンドウ、カンパニュラ -
② 積極的な集落営農、
法⼈化・⾼い農地集積率- 市を挙げていち早く集落営農に取り組んだことで、多くの農業法人が存在。
- そのため、経営的な視点(効率化や雇用の確保)でスマート農業の導入を検討している農業者が多い。
- 法人化により、農業者の組織化が進んでいるため、一度に多くの意見が得られる。
- 大規模農業法人が多く、大規模実証も可能。
- これら担い手への農地集積率は60%を超えており、農地の賃借の実績は全国トップクラス。
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③ 農業関係機関の緊密な
連携体制- 農業振興施策を推進すべく、市農林部・農業委員会の事務所をJAいわて花巻の敷地内に構えている。
- 市内農業関係機関をワンフロア化することにより、頻繁に打ち合わせが行えるため、企画立案しやすい。
- 農業関係機関により組織される花巻市農業振興対策本部にて、様々な農業課題の解決に取り組んでいる。
花巻市が抱える農業の課題を
私たちと一緒に
解決してくれる方を
広く募集いたします。
「スマート農業花巻モデル」が目指す方向性や、花巻市が直面する農業課題、本プロジェクトの応募条件などの詳しい情報は、以下のリンク先をご覧ください。
本プロジェクトでは、スマート農業の実証実験に必要なテストフィールドを提供するなどして、事業者と農業者の間の距離を花巻市が埋めさせていただきます。農業者がスマート農業に求めている事、感じている事といった、現場の声をダイレクトに交換できる機会は、双方にとって貴重な財産になるのではないでしょうか。
「農業の未来を変えたい」、「自分のアイディアを実現したい」、「我が社の技術力を証明したい」、「地域の活性化に貢献したい」、「最新技術を応用して農業界に参入したい」など、意欲旺盛な皆さまからのたくさんのご応募をお待ちしております。
応募の条件等の詳しい情報はこちら
よくあるご質問
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RTK-GPS基地局について
詳しいことを教えてください。市内小中学校等の屋上に市独自予算で平成28年に3基、平成29年に1基整備し、現在は計4基体制で運用しています(デジタル無線方式)。市内の北上川沿いの全平野部を受信エリアとして整備しており、受信エリア内の市内農業者であれば無償で電波を使用できます。
市では、実証実験を含めこの基地局をさらに活用していきたいと考えています。 -
RTK-GPS基地局を使用するに
どうしたら良いですか。RTK-GPS基地局が発信する電波を使用するには、花巻市農政課への申請が必要です。申請の後、パスワードを配布いたしますので、お使いのスマート農業機器に入力し、ご利用ください。なお、RTK-GPS基地局に非対応のスマート農業機器もございますので、メーカー等にお問い合わせの上、ご確認ください。
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花巻市ではどんなスマート農業が
行われていますか。農業者の普段の作業に、様々なスマート農業機器が使われています。自動操舵システムが装着されたトラクターや田植機による、RTK-GPS基地局の電波を受信しての耕起・田植え等の作業が中心になっています。
近年は、農業用ドローンへの関心が高まっており、個人・法人問わず導入される方が急増しています。更に、自動給水システムや営農管理システム、市内企業が開発したロボット草刈機など多種多様なスマート農業が市内農業者の日常に根付いています。 -
スマート農業導入に対する
花巻市の補助金の支援を受けたいのですが、
どうしたら良いですか。スマート農業導入に対する花巻市の補助金の支援を受けるには、花巻市農林部農政課への事前相談が必須となっております。事前相談の際に、補助要件の確認等もできますので、まずはページ最下部の「お問い合わせ」からメール、お電話でお気軽にご連絡ください。
※交付は市内の農業者に限ります。 -
花巻市で就農をしたいと考えています。
どこに相談すれば良いですか。
就農に関して、何か補助制度はありますか。就農については、花巻市農政課で相談を受け付けています。就農に関する支援は、就農のための初期費用や農地の賃借料の補助のほか、市外からの転入を伴う方への家賃の補助など様々な補助金を用意しております。詳しくは、ページ最下部の「お問い合わせ」からメール、お電話でお気軽にご連絡ください。
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花巻市では
どんな農畜産物が生産されていますか。肥沃な北上平野を活かし、水稲を中心に小麦・大豆・ピーマン・ネギ・アスパラガスのほか、りんご・ぶどうなどの果樹類、りんどうなどの花き類や、牛などの畜産も盛んに行われています。特に雑穀は全国有数の産地となっています。
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花巻市の気候について教えてください。
積雪はありますか。花巻市を流れる北上川を境に東部、西部で特徴が分けられます。東部では内陸型盆地気象が強く、特に夏場における昼夜の温度差が大きく、冬期は比較的温暖で積雪量が少なくなっています。一方、西部の奥羽山麓は寒冷多雪の気候となっており、12月から3月まで積雪がありますが、奥羽山麓にさえぎられるため、日本海側よりは少ない積雪となっています。
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花巻市農政課までの行き方を教えてください。
花巻市農政課の事務所はJAいわて花巻本店の敷地内の「総合営農指導拠点センター」にあります。住所は「岩手県花巻市野田335番地2」です。自動車のご利用が便利です(駐車場がございます)。徒歩の場合はJR花巻駅から20分となっております。
※花巻市役所庁舎(花巻市花城町9-30)に、農政課の職員はおりませんのでご注意ください。 -
花巻市を視察することはできますか。
視察は随時受け付けております。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、オンラインでの対応とさせていただく場合がございますが、まずは花巻市農政課までご相談ください。
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花巻市スマート農業
テストフィールドプロジェクトについて
詳しいことを教えてください。花巻市が直面する農業課題の解決に繋がる「スマート農業花巻モデル」の構築を目指すものです。採用となる事業者には、農業者と調整した上でテストフィールド(実証ほ場)を提供するなど支援させていただきます。事業者の募集を随時行っておりますので、応募条件等の詳しい情報はページ内のリンク先をご覧ください。
花巻市ってこんなところ
自然と文化が共生する理想郷、
宮沢賢治生誕の地。
花巻市は岩手県のほぼ中央に位置し、県内唯一の空港であるいわて花巻空港や、東北新幹線新花巻駅、東北自動車道などの高速交通網が整備される北東北の高速交通網の要です。
肥沃な北上平野がもたらす豊かな自然は、農業だけでなく東北有数の温泉地である花巻温泉郷など様々な恵みをもたらしてくれます。
豊かな土地は、国内外に愛される花巻出身の作家 宮沢賢治の多方面の活動に影響を与え、賢治は花巻をはじめとする岩手の土地をモチーフに理想郷「イーハトーヴ」をイメージしました。
そんな花巻、実は東北初の「電車」が開業した地といわれています。自然と文化が共生する理想郷で、「スマート農業」が新たな文化として線路を伸ばし始めています。
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岩⼿県花巻市 農林部農政課 地域農業推進室
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TEL:0198-23-1400