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NEXT AGRI PROJECT 2018 秋 全国農協青年組織協議会(JA全青協)

NEXT AGRI  PROJECT 明日の日本農業を語る活性化会議

日本の農業活性化への提言

JA全青協の会長が語る 日本の農業に対する提言と若手農業者を主体とした取り組み

JA全青協

全国農協青年組織協議会(JA全青協)
会長
水野 喜徳 氏

Yoshinori Mizuno

全国農協青年組織協議会(JA全青協)は、全国各地のJAをよりどころとし、地域農業の振興を図る青年農業者の結集組織です。会員は46都道府県のJA青年組織であり、構成員は国内の20歳~40歳を中心とした約6万人。各地のJA青年組織は「JA青年部」と呼ばれ、青年農業者はお互いを“盟友”と呼びます。農業をよりどころとして豊かな地域社会を築くことを目的に発足した会であり、消費者や行政に対して生産現場の声を内外に発信していく活動を行っています。それらの提言や行動指針となるものを「JA全青協ポリシーブック」にまとめ、若手農業者の結束を図っています。今回はJA全青協の会長である水野氏に農業界の現状と課題、それに対する取り組みを生産者側の視点で語ってもらいました。

担い手不足の課題は、まずは関係人口を増やすとこから

JA全青協

JA全青協

 日本の人口構成比は“少子高齢化”という言葉が表すように著しく変化しています。その中でも農村部は都市部に比べて高齢化が加速しており、農業従事者の平均年齢は65歳以上になっています。この状況では、長くてもあと10年、15年で離農者が続出することが予測できる上に、農村部では人口減少による地域経済の衰退も大きな問題になってきます。全国農協青年組織協議会(以下 JA全青協)でも労働力の確保は至上命題とも言うべき課題に挙げていますが、現状では明確な答えは出せておらず、外国人技能実習生の受け入れなど、労働力の確保については模索している段階です。

 そのことについて水野氏は「農業そのものの担い手を増やすことはもちろんなのですが、まずは関係人口を増やすことを考えています」と語っています。農業に興味を持ってくれる人、農村部の観光資源を発掘してくれる人にも積極的にアプローチし、地域全体の活性化を目指したいとしています。昨今では若い人を中心にライフスタイルの変化にも着目しているそうで、冬はスキー、夏はサーフィンなど、季節のアクティビティを楽しむのと同時に、空いている時間で農業を手伝っていただける仕組みも考えていきたいとの考えも示してくれました。

 ゴールは定住して就農していただくことですが、都会住まいの方が農村に移住する際の受け皿になることや、アルバイトからでも農業に携わる機会を設けていくことなど、地域全体で受け入れる体制作りに尽力していくとのことです。

国民の資産とも言うべき農地を守る難しさ

JA全青協

JA全青協

 日本の各地で見られる水田や畑は、美しい景色であると同時に食料を生産する大事な場所でもあります。その農地が、生産者の高齢化による廃業や離農によって耕作放棄地となってしまうことが喫緊の課題になっています。水野氏によると「一度、耕作放棄地になってしまった圃場を再生させるのには何年もかかります」とのことで、耕作が行われなくなった土地は相続や貸借・売買によって早急に次の生産者に引き継がれることが理想とされています。

 しかし、そこには心情的な難しさや法律、さらには生産管理の問題が現実としてあります。水田や畑は先祖代々引き継がれたものが多く、作物に合った土作りがされてきています。農家にとってみれば「畑を育てた」という愛着があり、その思いを知っているだけに廃業したからといって親族以外が気軽に借り受けることは難しいと言います。

 また、農地が増えればそれだけ手間もかかります。進化する農機やIT技術により作業の軽労化は図られていますが、最終的にはマンパワーが必要であり、それをどのようにやりくりしていくかといった問題もあります。肥沃な農地は“国民の資産”とも言うべき日本の大切な宝なので、農地の集約にしろ、管理にしろ課題は山積みですが、最善の方法を模索しているとの話です。

一般消費者に気づいて欲しい農業の現状と重要性

JA全青協

JA全青協

 生産者側の立場としては、農業の現状や農畜産物の適正価格についても消費者との間にギャップが生じている点を懸念しているそうです。

 人口が1憶2千万人を超えるこの国で食料自給率が38%なのは、食料事情の観点から見ると危険な状態。現在は足りない分を輸入によって賄えていますが、「これが世界的な大飢饉や紛争、災害などに直面した際は、お金があっても輸入できない状態になる可能性もあります」とし、今後農業が衰退すればこの数字はますます悪化するものと水野氏は忠告しています。

 昨今の食料問題の報道に関しても「関心を持っていただけることはありがたいのですが」と前置きし、水害などで野菜が採れなくなっても、スーパーで価格の上がった野菜を映して「高くて国内産は買えませんね」で済ますのではなく、実際の生産現場で作物が採れない状況もきちんと取材するといった公平な報道をしていただきたいと苦しい胸中を語っています。

 そのような状況を踏まえて消費者にもっと農業を理解してもらうためにも、各JAにおいては食農教育を始めていますが、1年や2年で浸透するものでもないので、10年、20年のスパンで課題の解決を進めています。国産の農畜産物の安全性は他国と比べても群を抜いており「鮮度や管理状態は胸を張れる品質です」と水野氏は声高に訴えます。

次世代に繋げるために、成功事例や先行事例を全国の盟友と共有する

JA全青協

 JA全青協では毎年2月に都内で開催されている「JA青年大会」において、各地から集まった盟友の主張と活動事例の発表を行っています。

 その中で好事例などを紹介することで情報を共有し、相互研鑽の促進を図っています。エリアの代表として選ばれた人が壇上で発表しますが、産地全体で取り組んでいることから、個人で手掛けていることなど、内容は実にさまざま。前回は看板を作ることによって組織や地域が活性化していったという事例や、地域おこしの動画を作成して消費者や農業に興味を持つ人たちにアピールするといった事例が紹介されました。

 最後にJA全青協の今後については、「5年~10年後までだけでなく、自分たちが引退したときのことまで考慮した次世代の農業も踏まえ、短期的な問題と中長期的な問題をしっかりと6万人の盟友とともに考えていきたい」と水野氏は語ってくれました。

JA全青協

全国農協青年組織協議会(JA全青協)
会長 水野 喜徳 氏

昭和52年5月30日 群馬県吾妻郡で生まれる。駿河台大学卒業後、株式会社ネッツトヨタ群馬 勤務を経て、平成19年に就農。こんにゃく10ha、水稲2haを生産。平成29年度JA全青協 副会長、JA群馬青協:参与、JAあがつま 理事、平成30年度JA全青協 会長を務める。

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