北海道スマート農業SUMMIT 開催報告
北海道スマート農業SUMMIT
開催報告
「北海道スマート農業SUMMIT」は、生産者と、農業の未来を創っていこうとするメンバーが、「スマート農業」をキーワードに農業の未来を語り合う機会として開催されました。当日はさまざまな農業団体やメーカーによる技術利用などの実践例が講演で示されたほか、省力化・効率化を助けるさまざまな機器の展示・実演、ブースでの技術展示などが行われました。来場者は700名超にのぼり、北海道副知事の土屋俊亮氏も来場されるなど、スマート農業への期待と関心の高さがうかがえる一日となりました。
- 【開催日・会場】
- 2019.6.12(水) テクノロジーファーム西の里
- 【主催・事務局】
- スマート農業共同体(SAc)・株式会社マイナビ 農業活性事業部
- 【後援】
- 北海道/一般社団法人北海道農業機械工業会/北広島市/北広島市工業振興会/北広島市農業委員会/北海道農業法人協会
パネルディスカッション
スマート農業の進展と
北海道農業に期待されること
パネルディスカッションでは、スマート農業共同体(SAc) ステアリングコミッティ委員長の北濱宏一がコーディネーターとなり、「スマート農業の進展と北海道農業に期待されること」をテーマにパネリスト4名とディスカッションを行いました。パネリストは、各自の取り組みを紹介したのち、スマート農業やSAcに期待することを述べました。
中村 克 氏「北海道の農業のポテンシャルは全国でも群を抜いているので、北海道に農業のほとんどが集約されているという見方ができます。北海道で新たな取り組みが成功すれば、日本のその他の地域やアジアでも広げることが可能だと考えています。北海道の農業を教えていただきながら、メーカーの技術をどこまで活かせるかというチャレンジができるフィールドだと思っているので、SAcをはじめとするみなさんと協働することで、スマート農業が成立するような取り組みができるように努めていきたいです」
園田 高広 氏「スマート農業は、これまでは広大な面積を使用する農業に対応してきましたが、今後は施設園芸などの集約的な施設においての必要性も高まってくると思います。法人化や企業的な経営をする農業者や新規就農者にとっては、農業においての心配事が多く、例えば苗の植える時期や管理方法は周りの人にも聞きにくいと思います。そういうときにスマート農業を活用できれば、スムーズに農業ができるのではと考えています。せっかく開発された技術はすべての農業者に活用していただくことで意味があるものになるので、そこに結びつけるような働きかけをSAcに期待しています」
池本 博則 氏「北海道は農業において進んだ土地です。東京で就農を志望する学生に話を聞くと、北海道の農業は規模が大きく近寄りがたいイメージがあると話しています。実は北海道外の方は参入しづらいと考えているようです。『会う機会』や『情報をつくる』仕事をしてきた私から見ると、みんなが抱える課題は、誰かに相談したら解決できる課題なのではないかと思います。そうすることで、自分なりのスマート農業が広がっていくと感じているので、そういう機会やチャンスをSAcにつくっていってほしいと思います」
PR講演・セミナー
これだけは知っておこう!
農業分野における外国人雇用の基礎知識
日本政府は農業従事者の不足や高齢化を補うために、外国人労働者を雇用することを政策の一つとして打ち出しています。講演では、2018年12月に入管法の改正によって新設された在留資格「特定技能」の説明や、従来から続く「技能実習」との違いについてわかりやすく解説。また、特定技能の資格保持者の生活環境を整えることや雇用する際のポイントや注意点についても詳しく説明しました。
十勝から学ぶ!
省力化、効率化を実現するための技術
(公財)とかち財団の十勝産業振興センターは、電子制御技術と電子計測技術の研究・開発に取り組んでいます。菅原さんは、農家戸数の減少や農業を営む人の高齢化で生産性が低下している十勝において、省力化や効率化を図る取り組みについて講演し、先進的な画像処理技術を用いた豆の自動選別や自動走行する電動式の立ち植え式長芋プランター、さらに今年度注力したい活動として、欠乳検査装置、シストセンチュウ対策用の車両洗浄装置を紹介されました。
持続可能な農業に向けた
エンドファイトの活用について
化学合成農薬の使用や減農薬・無農薬、有機栽培には、それぞれ食物の品質や安全性、環境問題などにおいてメリットとデメリットがあります。こうした背景から前川製作所では、植物内に共生する内生菌エンドファイトを使った研究が進められています。白石さんと伊沢さんは、稲の成長促進と収量増加を目的とした微生物資材イネファイターの実証試験の内容と結果を中心に、低エネルギーで製造できるエンドファイトが環境保全だけでなく農業の活性化にも貢献できる技術だと話されました。
省エネ&人材活性を実現!
「バッグトマト」が導く農家の新時代
伊達市と札幌市南区に農地を持つ(株)風のがっこう。ミニトマトの栽培を中心にアスパラガスやかぼちゃの栽培も行っています。同社の売上のほとんどを占めるトマトのバッグ栽培について、慣行栽培との比較やバッグ栽培におけるメリットについて写真を交えながら詳しく解説。講演の最後では、トマト栽培において、将来は生育ステージに応じた潅水量やハウス内の温度が自動制御できるシステムが開発されることを期待したいと話されていました。
海外で行う精密農業の流れと日本での実証
日本ニューホランド株式会社は高性能な農業機械の開発や販売を行っています。講演では、海外で培われた技術が日本でどう活かされているのかを紹介しました。自動操舵が可能なニューホランド社製のコンバインで収穫した土壌データの読み取り方、土壌の分析結果、土壌・地形の改善計画について事例を挙げて解説。正確なデータ収集と客観的な評価を積み重ね、精度を高めることが精密農業において重要だと話され、日本そして北海道農業の発展を後押ししたいと意気込みを見せました。
スペシャル
実地体験エリア
本イベントでは、屋外に「フライトエリア」「水田エリア」「畑エリア」の3つの実機展示エリアを設けました。
各エリアでは、10:30〜12:00、12:30〜14:00、14:30〜16:00の3回にわたり展示を実施しました。
フライトエリア
各回、3社が30分ずつ
実機展示を行いました。
来場者の声
「無人ヘリコプターは既に防除で利用していますが、マルチローターの利用ニーズも高まっています。生産者が高い関心を持っているマルチローターについて、デモフライトを見ることができ、貴重な情報収拾となりました」(北海道内JA職員・男性)
出展者の声
「プレゼン資料のみでの説明と実際の運用を見ていただくのとでは、反応に大きな違いがありました。多くのご質問をいただくことができ、メールや電話だと説明しづらい利用方法などについても、対面でしっかりお答えすることができました」(KMT株式会社)
「見学者の質問は、利用を想定した現実的なものが多く、これらを通して北海道の農業の特性なども新たに知ることができました。代理店を募集していることなど、当社の情報を幅広い層にアプローチでき、非常に有意義な機会でした」(株式会社アークステーション)
水田エリア
株式会社サングリン太陽園による、
ヤマハ発動機製除草剤散布ボート「ウォーターストライダー」の実演が行われました。
見学者による操作体験も行われました。
畑エリア
株式会社サングリン太陽園による、
UGV(無人走行車)の実演が行われました。
商品プロモーション
エリア
屋外に設けられたプロモーションエリアには3社が出展。
各社の担当者へ来場者が質問や要望を寄せるなどの場面も多く見られました。
商談ブース
SAc会員企業のみならず、多種多様な業種の企業・団体が出展。ブースは37ブースにものぼりました。ブースエリアにはイベント開催直後から人が押し寄せ、各ブースで熱心な質疑応答が繰り広げられていました。
来場者の声
「スマート農業についての新情報を求めて参加しました。まだまだ発展途上の技術も多いと感じています。新たな技術や機器を使用することで、本当に実利を得られるのか、安定した農業経営が可能になるのか。しっかり見極めなくてはと感じています」(北竜町生産者・男性)
「生産者にはすごくありがたいイベントです!いままで知らなかった資材や機器を間近に見ることができて良かったです。新しいユニフォームを購入したので、この夏に試してみようと思います」(石狩市生産者・女性)
出展者の声
「ブースに来てくださった方々へのアンケートを行いました。目的を持って来場している、意欲の高い方が非常に多いので、良い商談ができました。生産者の皆様と実際に接すると血の通った言葉を聞くことができます。営業スタッフの成長にもつながりました」(シンジェンタジャパン株式会社)
「農業系の展示会には何度か出展していますが、圃場で実地体験ができる展示会はめずらしいですね。自社が開発した製品を来場者の方々に見ていただき、直接話せるのは貴重な機会だと思います」(メニコン株式会社)
小池 聡 氏「生産者、そしてスマート農業を提供する2つの立場から見て、まだまだ双方にはギャップがあると感じています。ITを取り入れることでどんな課題が解決できるのか、生産者にはわからないことが多くあります。提供側はいったん自分事として、生産者の立場になって考えてみるべきではないでしょうか。また、生産者は具体的に「こんなことはできないか?」と相談するなど、コミュニケーションを密にしてみるといいかもしれません。スマート農業があるからといって農業が簡単に変わるというものではありません。双方歩み寄ることで違う見方もできるのではないかと思います」