農林水産省 スマート農業実証プロジェクト

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農林水産省 スマート農業実証プロジェクト

農林水産省 令和元年度スマート農業実証プロジェクト

農業技術×先端技術=スマート農業 日本全国69地区で実証中! スマート農業最前線

プロジェクトの概要

ABOUT

農林水産省による
スマート農業
実証プロジェクト   

2019年度から農林水産省が開始した「スマート農業実証プロジェクト」は、我が国の農業が抱える高齢化、人手不足の課題を解決するため、ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用した「スマート農業」を全国69地区で実証するものです。
既に、北海道から九州・沖縄にいたる全国の平場や中山間地域において、水田作、畑作、露地野菜、施設園芸、果樹、茶、畜産のさまざまな作目で実証がスタートしています。
このプロジェクトでは、スマート農業の社会実装を加速することを目的に、先端技術を実際の生産現場に導入します。そして、2年間にわたって技術実証を行い、技術の導入による経営への効果を明らかにし、その効果を、農業者の方々に広く情報発信していきます。

プロジェクトの目標

GOAL

全国69地区での
実証結果を全国に発信、
スマート農業の
社会実装を後押し

スマート農業実証プロジェクトで得られたデータや活動記録などは、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が技術面・経営面から事例として整理し、農業者が技術を導入する際の経営判断をサポートする情報として提供されます。

さらに、69地区の実証農場を「見られる・試せる・体験できる」情報発信拠点として活用し、視察を受け入れていただくとともに、定期的に報告会を開催するなどして、プロジェクトの取り組みを広く情報発信しています。

このプロジェクトを通じてデータを収集・分析し、それらをきちんと情報発信していくこと等で、最終的には、2025年までに農業の担い手のほぼ全員がデータを活用した農業を実践することを目指します。

プロジェクトの展望

VIEW

農林水産省が見据える
未来の
日本農業のカタチ

農林水産省 農林水産技術会議事務局

研究推進課長 福島 一 氏

スマート農業技術が切り拓く
日本農業の新たな可能性

日本農業の課題を解決するスマート技術を全国へ

我が国の農業を巡っては、ご承知の通り、担い手不足、高齢化が指摘されています。また、我が国の農産物は高品質であることが強みですが、これは言わば「勘と経験」がものを言う匠の技が継承されることで成り立ってきました。こうした熟練者のノウハウを先端技術によって経験値として提供することで、新規就農者でも質の高い農産物を生産できるようにするとともに、人手の確保や作業負担の軽減といった課題を解決することが、“スマート農業実証プロジェクト”の狙いです。
しかし、スマート農業を実現するための先端技術(以下、スマート農業技術)は、多くの農業者にとってまだまだ高価なものです。導入コストは着実に低下していますが、過剰投資によるいわゆる「機械化貧乏」になることを懸念される農業者の方々も少なくありません。
そこでスマート農業実証プロジェクトでは、全国69地区に設置した実証農場において、生産から出荷にいたる一連の作業の効率化と品質向上につながるスマート農業技術を導入し、そこで実証された効果やコストに関する情報を広く発信することで、それぞれの農業者の実情に合ったスマート農業技術を横展開していくことを目指します。

実証~分析~改善でさらに効果を高めていく

実証農場では、意欲ある生産者を必須構成員とし、農業機械メーカーやシステムを提供するベンダー、大学・農業試験場といった研究機関などで組織されるコンソーシアム(共同事業体)が、研究所や実験場などで既に成果を挙げているスマート農業技術を、現場レベルで実証し、さまざまなデータを集めています。
これから2年間にわたり集められるデータは、農研機構で分析と解析を行います。例えば、ドローンで生育状況を管理したらどれくらい省力化できたのか、肥培管理をより適切に行うことでどれくらい単収が向上したのか、といった個別の技術が経営全体に与えた効果を検証します。この検証結果を踏まえ、各コンソーシアムに対して改善を要する点があればチューニングを行い、さらに高度な取り組みの実現につなげていく方針です。そして、実証農場での成果について、多くの農業者に実際に見ていただき、各々の経営に何を取り込めるのか、参考にしていただきたいと考えています。

スマート農業技術の浸透により日本農業は新たなステージへ向かう

スマート農業実証プロジェクトは、生産現場におけるスマート農業技術の導入を推進する取り組みです。しかし、生産現場だけを変える取り組みではありません。将来的には消費者のニーズをより的確に反映できる姿をも目指します。
担い手不足や高齢化などの農業を取り巻く課題は、スマート農業技術の導入により解消され、生産力は維持、強化されます。こうしてスマート農業が浸透した先に私たちが見据えているのが、生産から流通・加工・消費までのデータを1つにつなぐ「スマートフードチェーン」の構築です。まずは、スマート農業の社会実装をしっかり展開しつつ、その上で消費者や加工業者、流通業者が求めている量や質の農産物を、求められるタイミングで生産者が供給するシステムを実現したいと考えます。
担い手不足、高齢化が進む中で、スマート農業の浸透により省力化・効率化が進み、匠の技を長い時間かけて習得する農業から、新規就農者でも付加価値の高い農産物をロスなく供給することが当たり前の農業へ。それが私たちの理想とする未来の日本農業のカタチです。

全国各地の取り組み事例

CASE STUDY

農業者と民間企業の
連携による
先端技術実証の
現場を見る

PROJECT.03スマート農業技術体系(大規模露地野菜複合経営)の実証

スマート農業で描く
働き方の未来予想図

スマート化で人材配置を最適化し、農業法人の働き方を変える

農業生産法人 有限会社新福青果
ICT改革チーム
(宮崎県都城市)
社長室長兼事業統括部長
栗原貴史さん

勘や経験をデータ化するためICTを積極的に導入

新福青果は、宮崎県南西部に位置する霧島連山の麓に位置する都城市で、先進的な農業経営を実践している農業生産法人です。従業員数は35名。約20haの自社農場でゴボウ、ニンジン、バレイショ、里芋、ラッキョウなどを栽培しています。
「1987年の設立以来、ICTを活用した効率的な営農の在り方を模索してきた経験を生かし、生産者視点での最先端テクノロジーの活用法を確立するため、コンソーシアムの実証代表としてスマート農業実証プロジェクトに応募しました」と社長室長兼事業統括部長の栗原貴史さんは語ります。

データ収集方法の見直しの先に見据える営農モデルの変革

新福青果では2013年から栽培情報のデータ化に取り組んできましたが、2016年に一旦中止しています。というのも、携帯端末に栽培情報を入力する作業が営農スタッフの負担となっていたからです。しかも得られたデータは、圃場名、作業者名、作業内容、作業日時、天気のみ。2018年から始めた見直し作業で、以前と同じ入力方法で「作業の進捗率」や「土壌分析の結果」など、栽培記録の分析に必要なデータの収集を試みたところ、1人当たり月間100時間以上かけても集められなかったと言います。
こうした過去の失敗を踏まえ、2019年春から栗原さんを中心としてデータ関係の業務を一手に引き受けるICT改革チームが始動。営農、営業、経理の各部門から記録用紙で回収した情報をICT改革チームがデータ化し、分析結果を各部門にフィードバックする形でICT活用が再スタートしました。
「この結果、1人当たり月間50時間以上のデータ収集にかかる作業量の削減に成功しました」と栗原さん。

しかし、栗原さんは大勢の熟練技術者を必要とする従来の営農モデルそのものを変えなければならないと考えていました。
「これまでは豊富な技能と経験を持つ熟練技術者が中心となって圃場を管理していました。しかし深刻な人手不足のため、彼らの業務範囲は単純作業にまで広がっています。このまま人件費の高い熟練技術者の負担が増え、作業の非効率化と人件費の増加が進むことは経営にも悪影響です」と語る栗原さん。

高度なデータ活用による営農モデルの変革イメージ

そこで新福青果は、より高度なデータ活用による熟練技術者だけに頼らない営農モデルを構築するため、スマート農業実証プロジェクトへの参画を決断。自らコンソーシアムを設立し、ドローン画像の分析技術に強みを持つオプティムをはじめ、スマート農機メーカー、自治体、地元大学などの協力を得て実証プラン策定、採択に至りました。

ロボットやドローン活用で業務をスクラップ&ビルド

新福青果は、2019年春からの実証プロジェクト開始に合わせて、ロボットトラクターや草刈ロボットを導入しました。これにより、熟練技術者でなくても正確かつ安全な畝立て、耕うん、播種、収穫、草刈り作業が実現します。農機の走行データはGPSと連動したシステムからICT改革チームが直接取得するため、データ収集に関わる作業量はさらに削減されます。

自動操舵補助システムにより熟練作業者でなくても高精度な直線走行ができる

正確な播種により、ドローンで作物の生育状況を確認できるようになることにも栗原さんは期待を寄せます。
「自社農場が広範囲に分散しているため見回り作業だけで1日がかりです。そこで、熟練技術者が圃場に行かなくても生育状況を診断できれば作業効率の改善ができるのではと考えました」。そう語る栗原さんが白羽の矢を立てたのがオプティムのNDVI※1技術でした。
マルチスペクトルカメラを搭載したドローンの空撮画像から作物の葉色を解析するアプリケーションが完成すれば、広範囲の圃場環境をピンポイントで診断できます。ドローンなどのスマート農機から得られるデータをGIS※2に落とし込んだ圃場情報管理システムも開発中。将来的には、少人数の熟練技術者で複数の圃場を管理することによる人件費の削減と、タイムリーかつ精度の高い農場マネジメントが期待できるとのこと。

本プロジェクトスタートに向けてアプリケーションを調整するため、空撮画像データを蓄積中の栗原さん

「テスト段階の空撮画像には当社農場と他の農家の畑が一緒に写っており、画像を解析しても作物と雑草を見分けることができません。多くの情報が混在している中から、必要な情報だけを抽出する機能を持たせていく必要がありますので、オプティムさんと密に連携しながら当社の農場に最適なアプリケーションを開発していきます」。
今後、栗原さんはテスト飛行で得たデータをオプティムで分析してもらいながら、アプリケーションをブラッシュアップしていくそうです。

※1 NDVI(Normalized Difference Vegetation Index):正規化植生指標。植物の繁茂の状況を把握することを目的として考案された指標で、植物の量や活力を表します。マルチスペクトルカメラなどを用いて計測した植物に当たる光の反射具合と、簡易な計算式を用いることで算出されます。

※2 GIS(Geographic Information System):地理情報システム。実世界をコンピュータ上でモデル化し、「地図」という視覚的に分かりやすい形で情報を整理したもの。

ドローン空撮画像の分析技術が営農スタッフの働き方を変革する

株式会社オプティム
ビジネス統轄本部 農業事業部
(東京都港区)
スマート農業スペシャリスト
サブマネージャー 中坂高士さん(左)
サブマネージャー 関口吾一さん(右)

「〇〇×IT」で全ての産業に第4次産業革命を起こす

モノをネットワークにつなげ、AIで自動制御する「第4次産業革命」を推進すべく、独自技術の開発に取り組むオプティム。農業、建設、医療など、さまざまな産業で活用できる最先端技術を開発することで、業務効率化や新たな価値の創造を目指す『〇〇×IT戦略』に注力しています。
同社の「農業×IT」の歴史は、佐賀県、佐賀大学との三者連携協定により2015年から始まりました。以来、農業専用ドローンや遠隔作業支援専用スマートグラスなど、ロボット技術とAIとIoTを組み合わせた技術を次々と開発。この技術力に注目した新福青果から声がかかり、大規模露地野菜複合経営体におけるスマート農業実証プロジェクトに参画することになりました。

熟練技術者が担当していた見回り作業が誰でも可能に

スマート農業実証プロジェクトにおけるオプティムのミッションは、女性や高齢者などの農業経験が浅い人でも操作できるドローンを用い、空撮画像で作物の生育状況を判断するアプリケーションを栽培現場に適用させることです。
オプティムが新たなプロジェクトに参画する時、既存の技術を提供して終わりということはありません。特に農業の場合、圃場の環境が千差万別なだけにカスタマイズが必須です。新福青果とのプロジェクトでも圃場のデータ収集から、分析、検証結果を踏まえたチューニングまで、何度も話し合いながら、より良いアプリケーションやシステムへと再構築しているとのこと。
「マルチスペクトルカメラを搭載したドローンで撮影した画像データから、作物が元気に育っているかどうかを定量的に示すNDVIを算出し、生育状況に応じて1区画単位ではなくピンポイントで色分け表示するアプリケーションを開発しています。この画像データを当社の圃場情報管理システム『Agri Field Manager』で分析できるようにすれば、熟練技術者が圃場をわざわざ巡回しなくても各圃場の状態を把握できるようになります」と関口さんは語ります。

ドローンで撮影した空撮画像データからNDVIを算出し、作物の生育状況を色分け表示
目標である作付面積の拡大と単収の増加を目指す

新福青果の農場は分散して立地しているため、これまでは熟練技術者が1日がかりで見回り作業を行っていました。更に、農場マネジメントや機械運転・整備、農薬散布など、多くの作業の合間に圃場を巡回しており、日々変化する生育状況に応じたタイムリーな対応が困難でした。その結果、圃場ごとに品質にばらつきが発生することが課題となっていました。開発中のアプリケーションが完成すれば、熟練技術者は分析結果から最適なタイミングで各圃場のスタッフに作業指示を出せるようになり、圃場ごとの品質のばらつきを抑えられるため、単収の増加が期待できます。
また、これまで熟練技術者が担当していた圃場の見回りや農薬散布に費やしていた時間を、農場マネジメントや機械運転・整備など、技術や経験が求められる作業に注力できるようになります。作業時間に余裕ができれば、これまでより多くの農場を管理できるため、作付面積の拡大にもつながります。
生育状況を見える化することで、これまでは熟練技術者の経験と勘に頼っていた作業ノウハウを新規就農者が継承しやすくなるメリットもあります。
「将来的には、新規就農者でも蓄積したデータを見れば生育状況を判断できる仕組みができればと考えています」と関口さんは語ります。

ドローンの飛行経路や撮影ポイントは事前に設定済。現場スタッフは出発ボタンを押すだけ

オプティムがこのプロジェクトに参画した狙いは、技術提供による業務の効率化だけではないと中坂さんは語ります。
「日本の農業を事業として成り立たせるため、技術開発と並行して手掛けているのが、稼げるビジネスモデルの構築です。例えば、当社には害虫に食われている作物をドローンで見つけ、ピンポイントで農薬をまく技術があります。この技術を導入して栽培した作物を全量買い取り、付加価値の高い減農薬作物として販売し、得られた利益を当社、販売会社、農家で分け合う『レベニューシェア』のビジネスモデルを展開中です。農家はこれまで多くの手間をかけて農業に携わってきました。この手間をかけずにさらに付加価値を生み出す技術を開発することで、楽しく、かっこよく、稼げる農業の実現を目指します」。

お問い合わせ

農林水産省
 農林水産技術会議事務局 研究推進課

〒100-8950 東京都千代田区霞ヶ関1-2-1
TEL:03-3502-7438
MAIL:smart-pr@maff.go.jp
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