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養鶏農家 徳光康平さん

山梨で生きる就農ライフ -Live in yamanashi-

INTERVIEW 23
養鶏農家
徳光 康平さん
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山梨県に移住・就農したきっかけは?

東京でロックバンドのベーシストとして音楽活動をする傍らアパレル店員をしていましたが、東日本大震災後、ガソリンスタンドに長い列ができたり、買占めが起きる状況を見て、外部環境の変化に対する自分のバイタリティのなさを感じました。ちょうど結婚して父親になり、自分で狩猟でき、家舎を建てられ、穀物生産と畜産の技術を持っていたらどこでも生きていけるんじゃないかと。そこから農業への憧れが強くなりました。
知り合いの紹介で県の有機農業協力隊制度を知り、2014年から農事組合法人北杜ベジファームで研修を受けました。畜産についても学びたかったので白州の平飼い養鶏農場でも研修をさせてもらい、2016年に北杜市で養鶏農家として独立しました。
Webデザイナーだった妻も賛成してくれました。当時子どもは1歳半で、東京では入るのが難しかった保育園も北杜市ではすぐに入れて助かりましたね。

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生産品目はどのように決めましたか?

もともと有畜複合農業をやりたいと思っていたので、採卵養鶏を軸に雑草を食べてくれるヤギを飼い、野菜の栽培などをしています。野菜は北杜ベジファームで学ばせてもらい、ジャガイモや果菜類を栽培して卵の定期販売のおまけに入れたり、ここでの体験イベントで使っています。
鶏は、岡崎おうはんという純国産の品種です。師匠の農場では初生ヒナ(ヒヨコ)を入れていましたが、自分にはビーク(くちばし)を切る技術がないので、鶏同士で怪我をしないように多少育成したヒナを入れています。
乳牛を導入したいと思っていて勉強先を探しているときに、酪農ヘルパーをしている方と知り合って八ヶ岳中央農業実践大学校の先生を紹介してもらいました。個人的にボランティアとして働きながら、管理を教えていただきましたが、牛を導入するのはハードルが高いので実現には至っていません。

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農地や販路はどのように確保しましたか?

農地は就農に向けた計画を作っているときに、当時の北杜市役所の職員の方が勧めてくださったことがきっかけで決めました。この地域は開拓地で、各戸が2haの農地を持ち、牛や鶏が多く飼われていました。その牧草地の一区画を借りて平飼い鶏舎を建て、牛舎を作業場にしています。
販路は、当初はスーパーや市場へ1日14ケース規模で出荷していましたが、徐々に定期販売と直販に移行しているところです。直接、お客様とつながることを念頭に置いて、鶏を1000羽から600羽に減らし、単に商品だけではない価値を届ける取り組みをしているところです。現在は私と妻、アルバイト1人が農場に従事しています。

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農業へのこだわりを教えてください。

動物福祉(アニマルウェルフェア)の畜産物にこだわり、鶏は鶏舎で平飼いしています。大切なのは観察です。元気がない鶏がいないか見て、夜、止まり木で寝ない鶏がいたら手助けをして慣れさせるなどの世話をしています。
屋号のROOSTER(ルースター)は雄鶏という意味ですが、独立前、農作業中に聴いていたブルースの名曲から取りました。調べてみると、南部の黒人プランテーションで働いている人は鶏だけは自由に飼えて、制限された自由の象徴として鶏が位置付けられていることを知り、年中無休の畜産にROOSTERという名がぴったりだと思いました。

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生活環境はどうですか?

地域の方に空き家を紹介していただき、農場から徒歩5分のところに自宅があります。現在は妻と11歳、8歳、2歳の子ども、保護犬のドナと暮らしています。ここの地域自体が開拓地だったこともあり、おじいちゃんたちも「俺たちもよそ者だからさ」と受け入れてくれたことがありがたかったです。最近は若い移住者も増えて私が中堅になっています。若い世代の方とは、保育園や小学校の保護者会で出会って仲良くなりました。児童館などの施設もあるので子育て環境はいいと思います。
地域活動は最初のうちは全部出ると決めて参加して、いろいろな役もやらせてもらいました。最近は秋祭りの実行委員会をしています。今年は区長代理、来年は消防部長で一巡するところです。
畜産の仕事は毎日あっても休みのような感覚です。毎日家族とご飯が食べられるし、子どもたちも農場に来て鶏の世話を手伝ってくれます。

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独立就農で養鶏は難しくありませんか?

お金は結構ギリギリでした。最初に青年等就農資金を日本政策金融公庫に借りて、その返済が終わるまでは苦しかったですね。最初のうちは貯金もありましたがどんどん減っていきました。それでも変化することは大事だと思っていて、また新しいことをいろいろ始めています。農業体験の事業をするために社団法人を作り、昨年は株式会社化したので農地所有適格法人になることを目指しています。
採卵養鶏の傍ら、アウトドアとしての登山やランニング、瞑想などをしている方たちがホビーとして農業や放牧畜産をやってくれたら嬉しいなと思い、そういう方たちが集まる場づくりに力を入れています。2021年頃からここで農と食のワークショップを始めたり、ここで二拠点生活をしたいという方のサポートもしています。地域おこし協力隊も受け入れていて、自然農での野菜作りやイベントの企画をしてくれています。

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就農を希望される方へメッセージ

食や農業を通して心を満たすお手伝いができたらと思っています。鶏やヤギのいるリズムは都会と違って、みんなで農業体験をした後にご飯を食べたりすると、時間の流れの緩やかさに驚かれます。そういう価値まで提供できたら、農産物の価値も上がっていくのではないかと思っています。
私がビジョンやミッションを持たずに就農して何度も軌道修正した経験から言うと、なぜ農業をやりたいのか、誰に何を届けるのかということを、最初に深掘りしていたほうが後々頑張れると思います。農業はたぶん都会よりもコントロールできないことが多いので、そこでくじけないことが栽培技術よりも大切。栽培技術は誰かに聞けば何とかなりますよ。

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