ブドウ農家 八重畑佑一さん
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山梨県に移住・就農したきっかけは?
大学卒業後にワーキングホリデー先のカナダとオーストラリアで3年ほど、いろいろな農場で働きました。オレンジ、ブルーベリー、チェリー、ワイン用ブドウなどの畑を手伝っているうちに、自分で農園をやりたいと思うようになりました。日本に帰国して、知り合いの伝手で山梨市牧丘町のブドウ農家でアルバイトをさせてもらった時、食べたブドウがおいしくて、一から自分で作りたいと思い、果樹農家になることを決意しました。
市役所の牧丘支所に相談に行くと、山梨県立農林大学校(以下、農大)の職業訓練科の果樹コース(9カ月)を勧められ、申請締切が目前だったので考える間もなく応募し入校しました。農大では座学も実習もありますが、技術をつけること以上に農業を志す仲間ができたことがよかったです。
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農地や住居はどのように見つけましたか?
最初の農地は農大での研修時にお世話になった農家の方が紹介してくれました。借りた畑1枚を管理している姿を地域の人が見ていて私に預けても大丈夫だと認められ、翌年から農地が集まり始めました。年々倍々に増え、今年は9カ所で延べ0.5haをそれぞれ異なる地主さんから借りています。
住居も同じ農家の方が空き家を紹介してくれました。家賃はタダ同然でスムーズに入居できましたが、ごみ捨てや改修から始めなければならず、日々の農作業が忙しいため中々着手できていません。より快適な住環境を求めて、空き家バンクのサイトも見て現在も家探し中です。
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主な栽培品種、販路はどうしていますか?
牧丘地区が巨峰の産地なので、種なし巨峰をメインに作っています。新しいことにチャレンジすることも好きなので、当初は桃とスモモの畑も借りてやってみましたが2年で畑を返して、いまはブドウ専業でやっています。収穫できるのは巨峰と緑系のシャインマスカットのみですが、赤黒系の甲斐ベリー7(サンシャインレッド)、クイーンニーナ、マイハート、甲斐キング(ブラックキング)、甲州などの品種にも挑戦しています。
当初は全量JA出荷でしたが、知り合いの紹介で地元の出荷組合に入っているほか、生産法人やふるさと納税返礼品の仕入れをする会社などに販売しています。
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就農にあたって苦労したことは?
農地の確保と資金繰りです。農地は年々増えてきていますが、畑の話がシーズンの途中に回ってくることもあります。自分の計画どおりにいかなくなりますが、選り好みはしていられません。誰もやる人がいなくて困っているのであれば、自分が借りたほうが土地が荒れてしまうよりもいいという気持ちで借りています。
私は自己資金ゼロからスタートしましたがお勧めしません。初年度売上は37万円程度。このままでは暮らしていけないので、2年間はワイナリーでアルバイトをしました。山梨県の果樹試験場にも勤めたことで収入だけでなく情報も得られました。冬は灯油が買えなくて薪を割って生活していました。お金がない代わりに、周囲のみんなが助けてくれるのがありがたいです。中古の動力噴霧器や草刈り機を安く譲ってくれたり、軽トラックも破格の値段で手に入れることができました。
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ブドウ栽培のやりがい・うれしかったことは?
最初に興味を惹かれたのが、ブドウの生命力です。例えば、ナシは成園になるまでに20年以上かかりますが、ブドウは定植から4、5年で実がとれ始めてどんどん収量が増えていき10年で成園になります。手入れの時期には蔓がすごく伸び、生命力の強さに驚かされています。
地域にいるブドウ農家の仲間ときれいな形に整えるための摘粒のコツや、色づきがよくなる工夫などを意見交換する時間が好きです。成功談はもちろん、失敗談も共有したり、産地のみんなで究極のブドウを追い求めている雰囲気があります。そうこうして最終的に立派なブドウがとれたらやはりうれしさもひとしおですね。
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今後の目標は?
生活を安定させることです。農地が倍々に増え、売上も倍々に増えているので、自分の健康管理を怠らずによいブドウを作っていきたいです。理想と現実のギャップは誰にでもあります。私も最初は米作りや無農薬野菜で農業することが理想でしたが、それでは生活が伴わないのが現実です。自給自足も考えましたが、一人では無理。コミュニティとしてやるのであれば成り立つかもしれませんが、例えばブドウを無農薬でやろうとしたら近所の農家の方に迷惑がかかります。自分の理想を追い求めて人に迷惑をかけるのはダメだと思います。
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就農を希望される方へメッセージ
アドバイスとしては、ちゃんと計画を立て、貯金はしておくに越したことはありませんし、使える制度を利用させてもらえるように、実際にその地で新規就農されている人に話を聞いたり、県や市町村の担当者にも相談したほうがいいと思います。でも、本当にやりたいと思うなら、一歩を踏み出すために多少わからなくてもやってみることが大事。例えば、作物で迷っているなら、1回やってみて自分に合っているものを選ぶのがいいと思います。自分にとっては、牧丘でのブドウ栽培が面白く、楽しいから続けることができています。そこに収入が伴ってくれば、先ほど話した理想と現実のギャップが埋まると信じています。
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