野菜・果樹農家 平野嘉朗さん
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山梨県に移住・就農したきっかけは?
中央市に空き家が見つかったので、山梨で農業を始めました。農業に興味を持ったのは、大学のゼミで環境問題を扱い、農村調査で行政と連携して課題に取り組んだことなどがきっかけですが、当時は定年退職したら農業を始めようかなという程度の軽い気持ちでした。
大学卒業後は青年海外協力隊として南米で活動し、帰国後は埼玉県で小学校の非常勤教員をしていました。大学の後輩が長野県で地域おこし協力隊の活動をしていたので移住の相談をすると、知り合いのつてで現在の住まいを紹介してくれました。他に移住の候補地として長野や新潟、東北も考えましたが、山梨は比較的気候が穏やかで交通インフラが整備されている点が気に入りました。移住が決まってから就農を検討して、山梨県農業振興公社に相談したところ中央市内に研修先が見つかり、先進農家(アグリマスター)の下で2年間の研修(現・やまなしあぐりゼミナール研修)を受けました。農業は毎年の繰り返しで改善を重ねていくため、自分の性分に合っていると感じたので独立就農を決意しました。
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作物はどのように決めましたか?
地域の主要作物がトウモロコシとキュウリであり、地域内に既に栽培を行っている先輩農家が多くいたので、それらから経営を開始しました。トウモロコシは地域特産のゴールドラッシュという品種です。二重トンネル、トンネル、露地の順に時期をずらして収穫するので、早い作型が凍霜害等の被害を受けても次があり、その後にキュウリの収穫も控えているので安定して収入を確保できると思いました。
果樹は単価が高いことが魅力的だと思いましたが、気象災害や気象条件による品質低下などのリスクがあり、規模が小さいと農業保険加入のメリットが少ないので当初は敬遠していました。しかし、JAの選果場を手伝っている中で、キウイフルーツの成園を貸していただけると声をかけてもらい、野菜の面積をある程度広げてきたタイミングだったこともあり、ようやく果樹栽培に着手することができました。キウイは野菜の管理の隙間にうまく作業がはまり、野菜の販売収入がなくなる冬に出荷できるので経営の安定化につながっています。
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就農する際に活用した支援制度はありますか?
まず、山梨県農業振興公社から紹介されたアグリマスターの下で2年間の研修を受け、その間は農業次世代人材投資事業準備型(現・就農準備資金)を活用して年間150万円の支援を受けました。独立就農後は経営開始資金を活用して5年間同額の支援を受け、今年がその最終年です。支援が終わっても経営が成り立つようにトウモロコシとキュウリを中心に農地を拡大してきました。
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現在の経営スタイルに至るまでのエピソードは?
研修先のアグリマスターは、多くの品目を作付けしてスーパーに直販する経営スタイルを確立していましたが、自分でやるなら少ない品目で面積を広げて収量を増やし、販路が確保されているJAに安定的に出荷するスタイルのほうが収入が安定すると思いました。研修中にスポーツジムのアルバイトで知り合った妻を介して、地域のトウモロコシのベテラン生産者と知り合いになり、その方から教わりながらJAの組合員になりました。1年目からJAへの出荷をメインに経営しています。
同時に産直サイト各社のサービスを活用したネット販売もスタートしました。初年度は、栽培面でうまくいかないこともありましたが、ネット販売があったおかげで、ある程度の収入を得ることができました。現在でも、農協で出荷の取扱いをしていないヤングコーンがよく売れるため、販路のひとつとしてネット販売を継続しています。
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農地はどのように確保しましたか?
地域の方からの紹介で農地の確保はスムーズでした。規模拡大のため新しい畑を探すときも、顔見知りの方の紹介で住まいの近くに畑を借りることができました。就農当初は作業場がなくて、自宅の一角にブルーシートを敷いて作業していましたが、その後自宅の近くにある空き倉庫を所有者の方からお借りすることができました。トラクターなどの大型機もトウモロコシのベテラン生産者から借りることができました。
運もよかったと思いますが、地域の方から農地があると声をかけてもらえるようになったのは、消防団に入ったり自治会の活動で知り合いが増え、地域の方との信頼ができたことが大きいと思います。
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就農後の金銭面について教えてください。
もう少し貯金をしておけばよかったと思いました。初年度は、まだ経営面積が小さく、消毒や収穫のタイミングがわからずに収量に影響してしまい、赤字スタートでした。また、長男と次男が生まれて家族が増え、妻と自分の貯金を切り崩しながらやりくりし、農閑期に働きに出ることもありました。就農4年目の昨年度は、果樹栽培を始めたこともあり、売上が500~600万円、資材費など経費を差し引いた利益が300万円になりました。
野菜だけで規模拡大を図ると、売上の増加と比較して人件費がかかり、利益の増加につながりにくいので、キウイ畑の空いているスペースでブドウを栽培するとか、頑張ってモモの面積を増やすなど、できるだけ高単価な作物にも挑戦して利益を増やしていければと考えています。
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就農を希望される方へメッセージ
農業は自分の性格に合う・合わないが多分にあります。いきなり農業をフルスロットルで始めると挫折してしまうことがあるので、経営面積は小さく始めて、他の農家のところの農作業を手伝いにいく余裕を作るなど、少しずつ地域と関わっていきながら2、3年かけて技術を身に付けていくと良いと思います。付き合いができれば、空き家や農地を紹介してくれたり、作業小屋や道具を貸してくれる人が現れると思うので、今後のためにも地域の方々と交流する時間を確保することをおすすめします。
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