「総合農社」への挑戦。

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「総合農社」への挑戦。

特集3 宮崎式農業経営力 CASE.1【稼ぐ力】農業生産法人 ベジエイト株式会社

巨大選果場で地域のハブを担う
「総合農社」への挑戦。

宮崎県南西部に位置する霧島連山の麓の街、都城。農業生産法人ベジエイト株式会社は、冷蔵倉庫を併設した巨大選果場の開設を機に、事業規模を拡大しています。県内でも農業や農産加工業が盛んな都城で彼らが目指すものとは。

農業生産法人 ベジエイト株式会社
専務取締役 重冨裕貴さん(左)、常務取締役 重冨貴哉さん(右)

週休2日制の導入などで若い人材を確保

ベジエイトが開設した最新鋭の大型選果場には、周辺の契約農家で収穫された都城特産の「島津甘藷」をはじめ、年間2000tのサツマイモが運び込まれ、15℃前後に保たれた巨大貯蔵庫で管理されています。同社を創業したのは、JA職員として、長年、営農企画などに携わってきた重冨保さんです。担い手不足で荒れていく圃場や耕作放棄地を増やしたくないと一念発起し、56歳でJAを辞した後、同社を創業しました。父の思いに賛同した息子の重冨裕貴さんは、東京の法律事務所でのキャリアを経て2014年に入社。専務として「週休2日制」「他産業レベルの給与」「子育て世代支援」など、業界の常識にとらわれない職場改革を進め、若い人材の確保に成功してきました。その一方で苦労したのが販路開拓でした。
「小売店や加工卸業者との直接取引で事業を拡大しようと考えたのですが、業者は効率的に作物を仕入れたいので、大量に農作物を確保できる生産者を求めていました。しかし、新規参入したばかりで方向性を探っていた当社は、20haの農地で14品目もの作物を栽培。品目ごとにまとまった数量を用意できず、なかなか取引してもらえませんでした」(裕貴さん)

最大貯蔵量540tを誇る冷蔵倉庫の中では、紅はるか、安納芋などが出荷を待っています

女性も働きやすい制度と環境を整備

大規模化&分業制で労働生産性を向上

そこで同社は、主に耕作放棄地を借り上げる形で毎年10ha以上のペースで農地を増やし、105ha(東京ドーム約22個分)まで拡大。さらに、栽培品目もミネラル分が豊富なシラス台地での栽培に適しているゴボウ、大根、サツマイモなどの「根物」を中心に5品目まで絞り込みました。
「広大な農地で品目ごとにまとまった量を確保できるようになった結果、大口の取引が増えました。それが売上上昇の最大の要因です」と語るのは、裕貴さんの弟で、常務の重冨貴哉さんです。兄と同じく父の思いに共感し、東京の鉄鋼会社での営業を経て2017年に入社。
ちょうどその年に稼働したのが加工場と冷蔵貯蔵設備を併設した高城選果場です。同社の加工・流通の拠点として、自社農場の農作物をはじめ、地域の契約農家から買い取った農作物を集荷し、専任スタッフが箱詰めし、出荷を行っています。
「生産担当、加工担当、販売担当、事務担当と分業制にしたことも業績を後押ししています。他の業界で分業制は当たり前ですが、農業の場合、一人であらゆる業務をこなすことが慣例となっており、効率化を妨げています。その点、当社では分業制により労働生産性が向上。業績アップにつながっています」(裕貴さん)

自社農場ではトラクターに専用アタッチメントを装着して、地中深く生えるゴボウを収穫

2017年に竣工した大型加工場・貯蔵設備

地域のハブとなるべく多角化を推進中

日本の農業が変革期を迎える中で、既存の流通ルートにとらわれない、新しいビジネスの形を生み出すことが急務だと考える裕貴さん。今後は生産販売だけにとどまらず、経営の多角化を推し進める方針だといいます。
「JAが地域の農業をリードするハブ機能を縮小する中、JAの後を継ぐ存在となる『総合農社』を目指して、いろいろな事業にチャレンジしたいと思います。これまでにコントラクター事業や輸出事業を立ち上げ、軌道に乗せました。直近では、キュウリやピーマンなど、宮崎の野菜と野菜加工品を少量多品目で扱う商社事業に注力しています」(裕貴さん)
自社の売上を増やすためだけでなく、地域の農業を次の世代に継承する。そのために、ベジエイトは地域のハブ機能を担うことができる規模の組織へと進化し続けます。