進化する農の学び。

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進化する農の学び。

特集3 宮崎式農業経営力 CASE.3【スマート農業】宮崎県立農業大学校

「チャレンジする農業経営者」の養成機関
進化する農の学び。

圃場内の各種データを収集し、親機に中継する『e-kakashi』の子機

「チャレンジする農業経営者」「地域創生を牽引するリーダー」の養成機関として、卒業後すぐに活躍しうる農業人材の輩出を目指すのが宮崎県立農業大学校。近年のスマート農業の流れを受け、ICT、IoTを活用した農業技術に関する学びの場を積極的に創出しています。こうした新分野の学びについて、同校農学科 学科長の田中俊彦さんに伺いました。

スマート農業などの実践的技術を学ぶ

宮崎県立農業大学校のルーツは、明治時代に農業試験場が見習いの研修生を受け入れたことに始まります。以後、農業の実技を学ぶ場として発展。1994年には現在の農業大学校が設立されました。同校の特徴は「実践的な技術を学ぶ場」として、ICTを活用したスマート農業を実現するための学習、フードビジネスや6次産業化に関する学習、学生が実際に出資する「模擬会社」を運営する経営学習、などをカリキュラムに取り入れている点です。
「ICTの活用については、就農人口が減少する中、儲かる農業を実現するためには、スマート農業へのシフトが必然であることは明白で、2016年頃より事業者、生産者の協力を得てカリキュラムを整備しています」と田中学科長。具体的には1年次の講義・演習として「ICT基礎」「ICT活用」があり、「ICT基礎」では電気通信事業者の環境モニタリングシステムをはじめ、農機具メーカーのロボットトラクター、ドローンなどの開発思想や機能などについて学びます。
「ICT活用」では実際にICTシステムを導入している農業法人などの圃場を見学し、どういう場面で生かされているか、また、その効果や課題などについて学びます。

「戸上先生の講義は対話形式で分かりやすいと生徒からも評判」と語る農学科学科長の田中俊彦さん

最先端ツールと植物科学の関わりを学び、応用する

『e-kakashi』の開発者で農業大学校でも教鞭を執る、ソフトバンク株式会社e-kakashi推進課課長の戸上崇さん

ICT活用のカリキュラムの立ち上げ時より、同校で『e-kakashi』を教材とする講座を担当しているのがソフトバンク株式会社です。『e-kakashi』は圃場の気温、相対湿度、日射量、CO2濃度などのデータを可視化し、生育を妨げるリスクがあればその対策方法を提示し、ナビゲートしてくれるトータルソリューションです。ソフトバンクがモニタリング用のデモ機を実際に提供し、「ICT基礎」の講義やフィールドワークを実施しています。講義を担当する、同社のe-kakashi推進課課長で農業ICTを専門とする戸上博士は講義のポイントをこう語ります。
「一つ目は『収穫量を高める』『糖度を高める』などの農業課題を科学的に認識し直すこと。二つ目はその課題を解決する最先端ツールと植物科学がどう関わっているかを学ぶことです。例えば、糖度を高めるためには水を与えずにストレスをかける必要がありますが、どこまでカットするのか、どの数字を見るべきか、その数字を測るにはどのセンサーを使うのかなど、全てが関連していることを理解してもらいます。圃場演習では目的に沿って、どんなデータが必要か、どこにセンサーを設置すべきかなどを、まずは生徒に考えてもらい、対話形式で解説していきます」
生徒は自ら考え、理論と実践を繰り返しながら体得できるため、ある生徒は、自身の肌感覚と植物の状態を数値データと掛け合わせて観察するうちに、植物の状態の確認とハウス内の温度・湿度を肌で感じて飽差(ある温度と湿度の空気に、あとどれだけ水蒸気の入る余地があるかを示す指標)を言い当てられるレベルにまで成長したそうです。
「現在はスマート農業の基礎を学ぶことがカリキュラムの中心ですが、2020年度以降、施設や機器の拡充を図り、より本格的にスマート農業を展開していくための知識が習得できるカリキュラムにしていきたい」と田中学科長は今後への意欲を語ってくれました。

生徒たちはタブレット端末で栽培環境を確認し、比較し合います

カーナビのような親しみやすい操作画面で栽培をナビゲートします