作ることにも、売ることにも情熱を注ぐ 北陸一のトマト産地で、理想の農業像を体現
- 石川県小松市 本田農園代表
- 本田 雅弘さん (石川県出身)
作ることにも、売ることにも情熱を注ぐ
北陸一のトマト産地で、理想の農業像を体現
「農家は儲からなきゃダメだ」。千葉県内の農業法人で勤務する中、先輩農家らのこの一言がきっかけで、独立就農を目指すようになったという本田さん。同法人では約20年前から、当時では珍しかった産地直送に取り組んでおり、本田さん自身も先輩農家に倣いながら、キュウリやトマトなどの施設園芸に従事。「作ることはもちろん、売ることにも情熱を持っていた先輩農家の姿が格好よく目に映り、自分もこんな農家になりたいと思いました」と当時を回顧します。
雇用就農での経験を生かし、施設園芸で独立したいという方向性も固まっていた本田さんですが、就農場所には大いに悩んだと言葉を続けます。出身地の石川県小松市に出戻りするか、このまま千葉県に残るか。事あるごとに上司や知り合いの農家に相談してきましたが、背中を押してくれたのは、先輩農家の一言でした。「農家は引っ越しができない。地元に戻った方が、将来的に農業がしやすいのではないか」。
25歳で小松市に戻ってきた本田さんは、すぐさま県の農林事務所やJAへ相談。当初はすぐにハウスを設営してトマトを栽培しようと考えていましたが、収入の安定しない新規就農者にとってはリスクが大きいとの助言を受け、「最初はトマトをつくることに専念し、ハウス建設は実績と資金を積んでから」と方向転換。6棟の空きハウスを借り受け、農家としての第一歩を踏み出しました。
小松市は北陸地方一のトマトの生産地。その気候風土を生かして栽培された本田さんの『かがやきトマト』はフルーツのような甘さが好評を博し、これに伴って農業経営も安定。就農3年後には念願のハウスを建設し、現在は63棟にも規模を広げ、市内屈指のトマト農家として活躍しています。「就農当初は若さもあって、生計を立てる大変さを思い描けていなかったと思います。就農を考えている方には、いきなり農業に入り込むのではなく、研修や体験などを通じて、農業を生業としてやっていけるかどうか確かめることをお勧めしたいです」とアドバイスする本田さん。勝負をかけるのは、それからでも遅くはないのかもしれません。