まずは動いてみることが大切 巡り合う縁を活かして踏み出した、果樹農家への一歩
- 石川県輪島市 陽菜実園代表
- 柳田 尚利さん (大阪府出身)
まずは動いてみることが大切 巡り合う縁を活かして踏み出した、果樹農家への一歩
「農業がしたいとは思うものの、今の生活を変える勇気はありませんでした」。大阪府で自動車整備業を営んでいた柳田さんは、そんな悶々とした気持ちを5年もの間抱えていたといいます。就農へ歩みを進めたのは、テレビで石川県の水稲農家のニュースを見たことがきっかけ。すぐさまパソコンで検索すると、石川県内で農業体験を募る情報を目にしました。締め切りは1週間後。すぐに家族へ思いを打ち明け、体験へ申し込むことに決めました。「すべてのタイミングが合って波に乗れたことで、就農への一歩を踏み出すことができました」。
水稲体験を希望した柳田さんは、輪島市の農業法人で初めて農業現場に触れると、「農業で生計を立てるために、どうやって儲けていくか」と思案するようになりました。その時、柳田さんの宿泊先には作物を自然栽培で育てる生産者が多く集まっており、意見を交わすうち「無農薬、無肥料など栽培方法で作物の価値を高め、収益をあげるやり方なら、この地域でもやっていけるのではないか」と、成功するための糸口を見出していきました。
柳田さんは農業体験が終わると、さらなる研鑽を積むために雇用就農の道へ進みます。入社当初から独立の意思を持ち、水稲に従事しながら自然栽培についても勉強し、独立に向けて栽培品目と土地を探す日々が続きました。独立へ向かって動き出したのは、結婚して住んでいた借家を購入すると決心したとき。「『石川でやっていく』と腹が据わると、情報が入ってきたんです」と振り返るように、後継者に困っているという柿農家を紹介してもらいました。
畑面積は2・6haと大規模。柿の栽培経験もなかったことから、当然不安はあったといいます。しかし、これまで培ってきた自然栽培の知識や人脈は強固な自信となっており、雇用就農時代から果樹への興味も抱いていたことから、圃場の借り受けを決意しました。現在、奥能登の気候風土に合った自然栽培を試行錯誤し、柳田さんが目指す「木を元気にする」栽培方法を体現しています。「私もそうでしたが、農業をしたいと漠然と考えている人は、まず動いてみることが大切。気になる地域に足を運び、就農をサポートする関係者に話を聞くことから始めてもいいと思いますよ」。