日本の農業活性化への提言 吉永 俊雄 氏

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日本の農業活性化への提言 吉永 俊雄 氏

NEXT AGRI  PROJECT 明日の日本農業を語る活性化会議

日本の農業活性化への提言

NEXT AGRI PROJECTに向けて

公益社団法人 日本農業法人協会
専務理事
吉永 俊雄 氏

Toshio Yoshinaga

農業経営者が組織する団体として、全国約2,000の農業法人のための活動を展開している公益社団法人 日本農業法人協会。農業経営の“現場の声”を取り込み、課題を明確化して解決方法を模索する――まさに農業活性化を図るうえで欠かせない知見を持った組織といえるでしょう。今回は、同協会で専務理事を務める吉永俊雄氏にお話しを伺い、日本の農業界が抱える課題と、これからの農業活性化において重要な要素を浮き彫りにしていきます。

全国の生産現場から聞こえてくる“労働力不足”の声

日本農業法人協会

日本農業法人協会

 約1年半前に日本農業法人協会の専務理事に就任した吉永氏。それまでは、日本政策金融公庫で約30年にわたり金融面から農業経営の課題解決をサポートしてきたといいます。「日本農業法人協会に来てからは、生産から販売、経営管理といった広範な課題の解決をサポートする立場になりましたが、農業活性化のための活動という意味では根本的には変わっていません」と吉永氏は話します。

 同協会では、会員である農業法人が抱えている課題の解決に向けた取り組みを継続的に行っており、毎年6月に開催される総会の場において、プロ農業経営者の目線で作成した政策提言を実施しているといいます。2018年も6月21日に第37回の総会が開催され、『農業の競争力強化に向けたプロ農業者からの提言』を発表し、齋藤健農林水産大臣に手交しました。

 この提言では、「次世代を担う人材の育成・確保」と「イノベーションの創出と時代に即した環境整備」を軸に、農業活性化の実現にあたり取り組むべき課題が明確化されています。「全国の会員からの声を集約すると、やはり最大の課題は“労働力の不足”になります。これをどのように解決して労働力を確保していくのかが、私たちとしても大きな取り組みとなっています」

 その取り組みの一環として挙げられるのが、日本農業法人協会とJA全農、JA全中、JA共済連、農林中金、全国農業会議所の6団体によって設立された「農業労働力支援協議会」だと吉永氏は語ります。日本農業法人協会の副会長である笠原節夫氏が座長を務める同協議会では、外国人材の活用や外国人技能実習制度の改善を関連省庁に要望。これにより外国人材を積極的に取り込み、労働力不足の解消を図っていくといいます。

 また、“環境整備”の面からも労働力不足解消へのアプローチを行っており、IoTやAIといった先端技術を活用した“スマート農業”を実践することで、高い生産性をより少ない人員で実現。労働力不足の解決につなげていくことを目指しています。同協会では、農林水産省の外郭団体である農研機構との連携により、先端技術の活用に関する取り組みを活発化させていると吉永氏は語ります。

先端技術の有効活用が生産性向上から人材不足の解消までを実現

日本農業法人協会

日本農業法人協会

 今回の政策提言では、米、野菜、果樹、畜産といった営農類型ごとに、農業経営者から “現場の声”をヒアリングして、どのような課題があるのかを明確化しています。今後はさらに品目別に細かく技術課題をあぶり出し、その解決に向けた取り組みも行っていきたいと吉永氏。今回の政策提言の内容は、日本農業法人協会にとっての大きな転換期を示唆しているのではないかと話します。「今回の政策提言では、従来の制度改革要望から踏み込んで、業種別、品目別の課題を取り上げ始めました。多くの会員が抱える“生産現場での課題”への取り組みに、本格的に着手できるようになったと感じています」

 また、人材の育成・確保という面では、外国人材の活用と並行し、国内での新規就農者拡充にも取り組み、農業インターンシップ制度を活用して、昨年は学生・社会人約800人からの申し込みがあったといいます。さらに、日本経済団体連合会との連携による経済界との人材マッチングも行い、農業界をリードする経営者の育成・専門人材の確保にも取り組んでいます。

 今回の政策提言における「イノベーションの創出と時代に即した環境整備」――つまりは農業法人が抱えている技術面での課題と解決手法についても、積極的に取り組んでいると吉永氏。同協会の自主的研究会のひとつとして「先端技術研究会」が発足され、賛助会員・企業会員(アグリサポート倶楽部)の民間企業や団体と連携してドローン、IoT、AIを始めとした先端技術の活用について意見交換が行われていると話します。アグリサポート倶楽部には、先端技術を取り扱うIT企業も数多く参加しており、日本農業法人協会でヒアリングした現場の課題を取り上げることで、非常に有意義な議論が展開されているといいます。

 これらの活動により、生産現場のニーズに応える技術革新や、費用対効果に見合う品目別・作型別の農業機械、技術開発の推進、若者が参加しやすい“環境整備”の実現をサポートしていると吉永氏は話します。

目指すべき農業界の未来を見据えて農業活性化を推進

日本農業法人協会

日本農業法人協会

 このほかにも、農業界が抱える課題を解決するために「自由に経営展開できる環境の整備」や「地域政策、食の安全・安心に向けた取り組み」といった提言も行われています。前者は物流構造の見直しによるコスト削減や、輸出・海外展開に向けた支援の必要性などで、後者は地域特性を活かした農業活性化への取り組みや、食・農分野における安定供給の重要性などを提示。「農業法人が地域経済を牽引する役割を担っているケースも少なくありません。また、社会に対する責任として“安定供給”の仕組みを作ることも私たちの使命であると思っています」と吉永氏は力を込めます。

 また、農地法改正などもあり、企業が参入して農業経営に取り組むケースも増えてきている現状においては、同協会としても今後の農業の担い手として、参入企業に注目しているといいます。「参入企業を当協会の会員としてどう取り込んでいくのかは喫緊の課題で、企業的な知見が入ってくることで、技術革新や構造改革が加速されるのではないかと期待しています」と吉永氏は話してくれました。

 同協会では、“世界最高品質の農業経営を実現し、その成果によって社会を幸福にする”という目標を掲げ、『農業が若者の将来就きたい職業の第1位となる』というビジョンを具現化するため、会員と密接に連携しながら数々の活動を行っています。

 毎年11月に日比谷公園で開催し、今年で9回目を迎える「ファーマーズ&キッズフェスタ」もその一環で、農業や食の楽しさを小さな子どもたちに伝えるため、さまざまなプログラムを用意しています。昨年からは、フェスタに参加した方を中心に声をかけて、会員の農業法人・団体による体験ツアーも開催し、好評を博していると吉永氏。また、昨年のフェスタからは、農学関連の大学などにワークショップへの参加も呼びかけ、こちらも好評とのこと。『農業が若者の将来就きたい職業の第1位となる』というビジョンを実現するためにも、こうした取り組みは今後も積極的に行っていきたいと話します。

 ここまで確認してきたように、日本全国の農業法人・団体を会員として、現場の声を反映した日本の農業活性化に取り組む日本農業法人協会が肌で感じる“農業界の課題”としては、「労働力の不足」と「先端技術の有効活用」が挙げられます。少子高齢化による労働人口の減少は、特に農村地域で顕著となっており、今後ますます人材不足は深刻化していくと予想されています。こうした課題を紐解き、解決のための手法を確立することで活性化が進み、若者の将来就きたい職業の第1位となる“成長産業としての農業”が現実化していくはずです。

公益社団法人 日本農業法人協会
専務理事 吉永 俊雄 氏

農林漁業金融公庫(現:日本政策金融公庫)に入庫以来、約30年にわたり農林水産業の政策金融に携わる。この間、北海道の畜産・畑作、北陸の水稲、九州の畜産・施設園芸など、主要な農業地域において大規模投資のほか事業再生など数多くの事案を手掛ける。現在、日本農業法人協会の専務理事として、政府への政策提言や各種セミナーの実施など、法人の経営改善に向けた取り組みを主動している。

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