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NEXT AGRI PROJECT 2018 秋 一般社団法人イノプレックス

NEXT AGRI  PROJECT 明日の日本農業を語る活性化会議

日本の農業活性化への提言

先進的な農業ビジネスを支援するイノプレックスの取り組みとは

一般社団法人イノプレックス

一般社団法人 イノプレックス
代表理事
藤本 真狩 氏

Fujimoto Makaru

農業分野へ新規参入を考える企業、新たなビジネスを模索する生産者。どちらにとっても、必要でありながら手に入りにくいのが本業以外のノウハウとネットワーク。その橋渡しを行っている専門機関が一般社団法人イノプレックスです。国内外の企業や研究機関など年間100社への取材に基づき、コンサルティングとWebメディアによる情報発信で先進的な農業ビジネスをサポートしています。その取り組みについて、代表理事の藤本真狩(ふじもとまかる)氏に伺いました。

「食と環境制御」をテーマに、農業分野へアプローチ

一般社団法人イノプレックス

 一般社団法人イノプレックス(以下 イノプレックス)は「食と環境制御」をテーマに先進的な農業を支援する専門機関です。

 ここでいう「先進的」とは、新しい技術や画期的なアイデアを取り入れたビジネスモデルのことで、代表理事の藤本氏はもともと大学で産学連携の技術評価や企業との橋渡しを行う傍ら、Webメディアを立ち上げ、エネルギーや医療などさまざまな分野で社会貢献性の高い技術情報を発信してきました。その中で最も情報が不足していると感じたのが農業分野だったと言います。

 そこで、イノプレックスは国内外の企業や研究機関を中心に年間100社以上を取材。10年間で積み上げた約1000社とのネットワークをベースに、Webメディア「植物工場・農業ビジネスオンライン(http://innoplex.org/)」を運営。コンサルティング事業として、農業分野への新規参入を考える企業に対し、市場調査から、事業プラン策定、設備評価・導入、人材育成、販路開拓までトータルに支援しています。

新しい農業ビジネスの創出のチャンスと課題

一般社団法人イノプレックス

一般社団法人イノプレックス

一般社団法人イノプレックス

「植物工場・農業ビジネスオンライン」のアクセス状況からもIT、商社、バイオ、建設、デザイン業界など、今までとは異なるプレイヤーが農業ビジネスに関心を示していることがわかっています。その理由について藤本氏は次のように見解を述べています。

「農業は中長期的に市場がなくなることはありません。むしろ、世界人口の増加に伴い市場が拡大しています。人口が集中する都市部では新しいビジネスチャンスが生まれるでしょう。また、企業が植物工場や施設園芸などの先端農業に参入するメリットは、本業とのシナジーにあります。

 メーカーでは空き工場や倉庫を活用でき、半導体メーカーでは自社でセンサーを、金属加工業では栽培用ラックを、自前で作ることができるでしょう。既存の農業ビジネスは、すでに業界団体などがあり、市場を切り崩すことは困難ですが、新しい分野でなら一からネットワークを構築することが可能です」

しかし、新規参入には課題も残ります。イノプレックスが市場調査・事業計画作成を請けた企業でも7~8割は「やらない」と判断を下したと言います。その理由を伺いました。

「それは他のビジネスと比べると農業の利益率が極めて低いからです。従来の新規事業であれば15~20%の利益率を目指したいところ、農業は3~5%にとどまっています。収益化するまでにもさまざまなリスクが考えられ、事業の失敗や無駄な投資を避けるためにも、調査を役立てほしいですね」「一方で先端の農業は、さまざまな分野と連携することができます。植物工場で植物の栄養機能を向上させたり、作業性を改善させて高齢者や障がい者のリハビリに活用すれば、医薬・医療分野に繋がるビジネスになります」と藤本氏は課題とともに可能性の一端も語ります。

 一方、生産者側は世代交代が進み、農業をもっとビジネス化しようという意欲的な若手が増えています。その支援として、イノプレックスでは個人の農業従事者や小規模な農業生産法人を対象に無償でアドバイスをしていると言います。「農作物の海外輸出、観光農園などのインバウンド向けサービス、六次産業化などを提案・支援しています。特派員が海外のニーズを取材し、例えば日系の小売企業が日本の安全基準に適合する農産物を現地調達できるよう、日本の生産者が農閑期に海外に赴いて技術指導をするお手伝いもしています」

 新規参入の企業は農業がわからない。農業従事者はビジネスがわからない。その両者の橋渡しによって課題を解決することから、新たなビジネスが生まれています。

国内外の最新動向から、次世代の農業を予想

一般社団法人イノプレックス

一般社団法人イノプレックス

 5年先、10年先の日本の農業を藤本氏に予想してもらいました。

「10年後、人工光型多段式の植物工場は当たり前になっています。現在、リーフレタス・玉レタスなどのレタス類の全生産量に占める植物工場の割合は数%にすぎませんが、10~15%にシェアが拡大し、海外では5割を占める国もでるでしょう。もちろん、生産品目も増えています。また、5年以内に高い精度で1~3カ月先の市場予測(天候予測を含む)ができるようになり、農作物の価格変動が少なくなるでしょう。小規模生産者は、複数品目を市場予測と連動させて作付けすることで利益を最大化することが可能になります」

 日本の農業を支援するために私たち生活者も変化が求められているのではなでしょうか。

「生活者は科学データに興味を持つことです。それが農作物に対する評価基準になります。オーガニックが日本で普及しないのは食品がイメージで選ばれているからです。有機栽培における面積比率は、日本では0.2%ですが、海外の先進国では3~5%、スイスや北欧では10%にのぼります。また、Co2の排出量も考えて、輸入品より価格が多少高くても地元の農産物を購入すれば、環境貢献だけでなく国内農家を応援する行動にも繋がります」

 農業の可能性は、教育、医療、スポーツ、外食、都市開発など、さまざまな分野と連携できることです。「生産者は作るだけでなくアイデアマンとして、アンテナを張り、ビジネスと農業の融合ポイントを探すことです。企業とのネットワークは私たちがお手伝いします」と藤本氏。さまざまな分野や立ち位置から、誰もが農業のネットワークに参加できる時代。次世代の農業はますます面白くなりそうです。

一般社団法人イノプレックス

一般社団法人 イノプレックス
代表理事 藤本 真狩 氏

神戸大学経済学部を卒業後、京都大学医学研究科在籍中、2008年にNPO法人イノプレックスを設立、2015年に一般社団法人化。「食・農業」ビジネスを中心に、年間100社以上の最先端技術をグローバルに取材。近年は、店内で野菜を栽培する「地産地消型レストラン」、体験型・観光農園など農業を通じて人々を楽しませる「アグリテイメント」、環境に配慮した町づくり「環境都市・スマートシティ」にも力を入れている。

【関連リンク】

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