【漁業】先輩インタビュー2
先輩インタビュー
漁業
地域の宝を守り、育てる
父の背中を追って
養殖業 外舘 和季(とだて・かずき)さん
地域の宝を守り、育てる
父の背中を追って
漁師の長男に生まれたものの、家業を継ぐつもりがなかったわたしは県外の大学に進み、全国転勤がある製薬会社に就職、海とは無縁の生活を送っていました。そんなわたしが父の仕事を継ぎたいと思ったきっかけは、野田村が誇る荒海ホタテを知った会社の上司や同僚の「こんな美味しいホタテは他にない!」、「お父さんは素晴らしい仕事をしているね」といった、周りの人たちの声でした。
サラリーマン生活を10年続け、改めて漁師の仕事を考えた時、自らの手でホタテを育て、漁をし、販売をするー。己の責任のみで成り立つ厳しい仕事を長年続けている父を素直に「かっこいい」と思いました。荒海ホタテは名実共に村の宝であり、日本の宝でもあります。その文化を守り、育てていくためには今こそ父のもとで学ぶべきと考え、漁師になることを決意しました。
厳しさももちろんあります!
でも、それを上回るのが収穫の喜び
漁師の生活は一般的なイメージ通り、朝が早いため、夜は早々に就寝する生活です。最初はリズムがうまくつかめず、体が慣れるまで苦労しました。また、自然相手の仕事なのでシケや台風の時は予定していた作業ができず、ジレンマを感じることもあります。こうした自然の厳しさや、体力的なキツさを凌駕(りょうが)するのが収穫の喜びです。立派に育った荒海ホタテを前にすると、それまでの苦労も吹き飛びます。家業を継いでからまだ半年弱のわたしですらそうなのですから、先輩の漁師や父の喜びはひとしおだと思います。
漁師仲間は小さい頃から可愛がってくれた近所のお父さんやお兄さんたち。おかげでコミュニティにすぐに入ることはできましたが、ひとたび漁に入れば師匠の顔に。最初はロープの結び方など基本的なことから学び、手伝いをしながら漁のやり方を覚えていきます。まだまだ元気な師匠たちですが、後継者不足から自身の代で引退を決めている人も少なくありません。地域の宝を継承するためにも1日も早く一人前になり、後継者育成にも尽力していきたいです。
お父さんってどんな人?
一言で言うなら「まっすぐな人」です。これまでの経験で培ったことがすべてと考える父は周囲の意見に流されることはなく、まずは自分に問うことで答えを導き出しています。だからこそ、行動に移したこと、やってきたことへの後悔は一切ないのだと思います。
あまり多くを語らない父ですが、海を心から愛するその背中は本当にかっこいいと思います。少し不器用だな、と思うこともありますがそれすらもクール。自分の父をここまで褒めるのは抵抗がないといえば嘘になりますが、それをもってしても、尊敬することしかない、自慢の父です。
一緒に働く仲間はどんな人?
漁師は職人気質なので、寡黙な人が多いのはイメージ通りだと思います。それは、海は常に危険と隣り合わせなので厳しさをもって仕事に向き合っているからです。ひとたび船に乗ればその表情は真剣そのもの。妥協のない仕事の姿勢からは緊張感が漂っています。船から降りると優しい表情に戻り、養殖技術や天候の読み方など、なんでもわかりやすく教えてくれます。わたしの場合、幼い頃から知っている方たちばかりなので、思い出話しで盛り上がることも。厳しさも含め、本質が優しいのが野田の漁師。何度も言いますが、漁師は最高にかっこいい人たちばかりなんです!