PROJECT.03 スマート農業技術体系(大規模露地野菜複合経営)の実証

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PROJECT.03 スマート農業技術体系(大規模露地野菜複合経営)の実証

農林水産省 令和元年度スマート農業実証プロジェクト

PROJECT.03スマート農業技術体系(大規模露地野菜複合経営)の実証

スマート農業で描く
働き方の未来予想図

スマート化で人材配置を最適化し、農業法人の働き方を変える

農業生産法人 有限会社新福青果
ICT改革チーム
(宮崎県都城市)
社長室長兼事業統括部長
栗原貴史さん

勘や経験をデータ化するためICTを積極的に導入

新福青果は、宮崎県南西部に位置する霧島連山の麓に位置する都城市で、先進的な農業経営を実践している農業生産法人です。従業員数は35名。約20haの自社農場でゴボウ、ニンジン、バレイショ、里芋、ラッキョウなどを栽培しています。
「1987年の設立以来、ICTを活用した効率的な営農の在り方を模索してきた経験を生かし、生産者視点での最先端テクノロジーの活用法を確立するため、コンソーシアムの実証代表としてスマート農業実証プロジェクトに応募しました」と社長室長兼事業統括部長の栗原貴史さんは語ります。

データ収集方法の見直しの先に見据える営農モデルの変革

新福青果では2013年から栽培情報のデータ化に取り組んできましたが、2016年に一旦中止しています。というのも、携帯端末に栽培情報を入力する作業が営農スタッフの負担となっていたからです。しかも得られたデータは、圃場名、作業者名、作業内容、作業日時、天気のみ。2018年から始めた見直し作業で、以前と同じ入力方法で「作業の進捗率」や「土壌分析の結果」など、栽培記録の分析に必要なデータの収集を試みたところ、1人当たり月間100時間以上かけても集められなかったと言います。
こうした過去の失敗を踏まえ、2019年春から栗原さんを中心としてデータ関係の業務を一手に引き受けるICT改革チームが始動。営農、営業、経理の各部門から記録用紙で回収した情報をICT改革チームがデータ化し、分析結果を各部門にフィードバックする形でICT活用が再スタートしました。
「この結果、1人当たり月間50時間以上のデータ収集にかかる作業量の削減に成功しました」と栗原さん。

しかし、栗原さんは大勢の熟練技術者を必要とする従来の営農モデルそのものを変えなければならないと考えていました。
「これまでは豊富な技能と経験を持つ熟練技術者が中心となって圃場を管理していました。しかし深刻な人手不足のため、彼らの業務範囲は単純作業にまで広がっています。このまま人件費の高い熟練技術者の負担が増え、作業の非効率化と人件費の増加が進むことは経営にも悪影響です」と語る栗原さん。

高度なデータ活用による営農モデルの変革イメージ

そこで新福青果は、より高度なデータ活用による熟練技術者だけに頼らない営農モデルを構築するため、スマート農業実証プロジェクトへの参画を決断。自らコンソーシアムを設立し、ドローン画像の分析技術に強みを持つオプティムをはじめ、スマート農機メーカー、自治体、地元大学などの協力を得て実証プラン策定、採択に至りました。

ロボットやドローン活用で業務をスクラップ&ビルド

新福青果は、2019年春からの実証プロジェクト開始に合わせて、ロボットトラクターや草刈ロボットを導入しました。これにより、熟練技術者でなくても正確かつ安全な畝立て、耕うん、播種、収穫、草刈り作業が実現します。農機の走行データはGPSと連動したシステムからICT改革チームが直接取得するため、データ収集に関わる作業量はさらに削減されます。

自動操舵補助システムにより熟練作業者でなくても高精度な直線走行ができる

正確な播種により、ドローンで作物の生育状況を確認できるようになることにも栗原さんは期待を寄せます。
「自社農場が広範囲に分散しているため見回り作業だけで1日がかりです。そこで、熟練技術者が圃場に行かなくても生育状況を診断できれば作業効率の改善ができるのではと考えました」。そう語る栗原さんが白羽の矢を立てたのがオプティムのNDVI※1技術でした。
マルチスペクトルカメラを搭載したドローンの空撮画像から作物の葉色を解析するアプリケーションが完成すれば、広範囲の圃場環境をピンポイントで診断できます。ドローンなどのスマート農機から得られるデータをGIS※2に落とし込んだ圃場情報管理システムも開発中。将来的には、少人数の熟練技術者で複数の圃場を管理することによる人件費の削減と、タイムリーかつ精度の高い農場マネジメントが期待できるとのこと。

本プロジェクトスタートに向けてアプリケーションを調整するため、空撮画像データを蓄積中の栗原さん

「テスト段階の空撮画像には当社農場と他の農家の畑が一緒に写っており、画像を解析しても作物と雑草を見分けることができません。多くの情報が混在している中から、必要な情報だけを抽出する機能を持たせていく必要がありますので、オプティムさんと密に連携しながら当社の農場に最適なアプリケーションを開発していきます」。
今後、栗原さんはテスト飛行で得たデータをオプティムで分析してもらいながら、アプリケーションをブラッシュアップしていくそうです。

※1 NDVI(Normalized Difference Vegetation Index):正規化植生指標。植物の繁茂の状況を把握することを目的として考案された指標で、植物の量や活力を表します。マルチスペクトルカメラなどを用いて計測した植物に当たる光の反射具合と、簡易な計算式を用いることで算出されます。

※2 GIS(Geographic Information System):地理情報システム。実世界をコンピュータ上でモデル化し、「地図」という視覚的に分かりやすい形で情報を整理したもの。

ドローン空撮画像の分析技術が営農スタッフの働き方を変革する

株式会社オプティム
ビジネス統轄本部 農業事業部
(東京都港区)
スマート農業スペシャリスト
サブマネージャー 中坂高士さん(左)
サブマネージャー 関口吾一さん(右)

「〇〇×IT」で全ての産業に第4次産業革命を起こす

モノをネットワークにつなげ、AIで自動制御する「第4次産業革命」を推進すべく、独自技術の開発に取り組むオプティム。農業、建設、医療など、さまざまな産業で活用できる最先端技術を開発することで、業務効率化や新たな価値の創造を目指す『〇〇×IT戦略』に注力しています。
同社の「農業×IT」の歴史は、佐賀県、佐賀大学との三者連携協定により2015年から始まりました。以来、農業専用ドローンや遠隔作業支援専用スマートグラスなど、ロボット技術とAIとIoTを組み合わせた技術を次々と開発。この技術力に注目した新福青果から声がかかり、大規模露地野菜複合経営体におけるスマート農業実証プロジェクトに参画することになりました。

熟練技術者が担当していた見回り作業が誰でも可能に

スマート農業実証プロジェクトにおけるオプティムのミッションは、女性や高齢者などの農業経験が浅い人でも操作できるドローンを用い、空撮画像で作物の生育状況を判断するアプリケーションを栽培現場に適用させることです。
オプティムが新たなプロジェクトに参画する時、既存の技術を提供して終わりということはありません。特に農業の場合、圃場の環境が千差万別なだけにカスタマイズが必須です。新福青果とのプロジェクトでも圃場のデータ収集から、分析、検証結果を踏まえたチューニングまで、何度も話し合いながら、より良いアプリケーションやシステムへと再構築しているとのこと。
「マルチスペクトルカメラを搭載したドローンで撮影した画像データから、作物が元気に育っているかどうかを定量的に示すNDVIを算出し、生育状況に応じて1区画単位ではなくピンポイントで色分け表示するアプリケーションを開発しています。この画像データを当社の圃場情報管理システム『Agri Field Manager』で分析できるようにすれば、熟練技術者が圃場をわざわざ巡回しなくても各圃場の状態を把握できるようになります」と関口さんは語ります。

ドローンで撮影した空撮画像データからNDVIを算出し、作物の生育状況を色分け表示
目標である作付面積の拡大と単収の増加を目指す

新福青果の農場は分散して立地しているため、これまでは熟練技術者が1日がかりで見回り作業を行っていました。更に、農場マネジメントや機械運転・整備、農薬散布など、多くの作業の合間に圃場を巡回しており、日々変化する生育状況に応じたタイムリーな対応が困難でした。その結果、圃場ごとに品質にばらつきが発生することが課題となっていました。開発中のアプリケーションが完成すれば、熟練技術者は分析結果から最適なタイミングで各圃場のスタッフに作業指示を出せるようになり、圃場ごとの品質のばらつきを抑えられるため、単収の増加が期待できます。
また、これまで熟練技術者が担当していた圃場の見回りや農薬散布に費やしていた時間を、農場マネジメントや機械運転・整備など、技術や経験が求められる作業に注力できるようになります。作業時間に余裕ができれば、これまでより多くの農場を管理できるため、作付面積の拡大にもつながります。
生育状況を見える化することで、これまでは熟練技術者の経験と勘に頼っていた作業ノウハウを新規就農者が継承しやすくなるメリットもあります。
「将来的には、新規就農者でも蓄積したデータを見れば生育状況を判断できる仕組みができればと考えています」と関口さんは語ります。

ドローンの飛行経路や撮影ポイントは事前に設定済。現場スタッフは出発ボタンを押すだけ

オプティムがこのプロジェクトに参画した狙いは、技術提供による業務の効率化だけではないと中坂さんは語ります。
「日本の農業を事業として成り立たせるため、技術開発と並行して手掛けているのが、稼げるビジネスモデルの構築です。例えば、当社には害虫に食われている作物をドローンで見つけ、ピンポイントで農薬をまく技術があります。この技術を導入して栽培した作物を全量買い取り、付加価値の高い減農薬作物として販売し、得られた利益を当社、販売会社、農家で分け合う『レベニューシェア』のビジネスモデルを展開中です。農家はこれまで多くの手間をかけて農業に携わってきました。この手間をかけずにさらに付加価値を生み出す技術を開発することで、楽しく、かっこよく、稼げる農業の実現を目指します」。

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 農林水産技術会議事務局 研究推進課

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