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山梨県に就農したきっかけ、ブドウ栽培を選んだ理由は?
ブドウが大好きで、青森の観光農園に遊びに行っては農家さんに栽培の話を聞いていました。自分でブドウ栽培をやろうと考えたのは、東日本大震災がきっかけです。妻も移住就農に賛成してくれました。全国の候補地を探した中で、ブドウで新規就農する際の支援制度が最も整っているのが山梨県でした。県立農業大学校で夫婦そろって職業訓練生として果樹栽培を学べることになり、2014年に2歳の子どもを連れて移住しました。
職業訓練修了後は、農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)の準備型を活用して、笛吹市の農業生産法人 葡萄専心で2年間の研修を受けました。子どもを保育園に送り迎えして、妻は家事をしながら、私はアルバイトをしながらの研修でした。
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ブドウ栽培のこだわりは?
高品質・多品種栽培をコンセプトに経営しています。現在は、巨峰、シャインマスカット、山梨県育成品種であるサニードルチェ、ワイン用のベリーAなども含めて、10品種以上のブドウを栽培しています。借りた畑で栽培されていた品種を継続して作りながら、老木を計画的に改植して畑の収益性を高めています。
ブドウは実をつけるまでにたくさんの作業工程があります。品種ごとに作り方が違い、花が咲くタイミングも異なります。多品種栽培は特に、畑ごとに一房一房よく観察して適切に手をかけていくことが必要です。最近では、ギフト商品として黒・赤・青の3色を詰め合わせています。異なる品種を同じ時期に収穫できるように管理するのは手はかかりますが、このような形でお客様に喜んでもらえるのは多品種ならではですね。
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就農する際に困ったことはありますか?
農地と住居の確保です。農地は研修先の紹介や農業委員の方から情報をいただいて、見つけることができましたが、畑の近くで作業小屋付きの借家となると探してもなかなか見つかりません。子どもの小学校入学もあって居住先を決めなければならず、畑から車で10分のところで妥協しました。忘れ物をすると取りに帰るのに往復20分かかるので、時間を無駄にしないようにメモを取り、持ち物を確認する習慣が身に付きましたね。
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地域の魅力は何ですか?
地域の絆が強く面倒見がいいことが魅力ですね。移住者には地域コミュニティとの繋がりが一番重要。居住して4年ですが、地域の一員として、区の役員会議や子どもの学校のPTAにも積極的に参加しています。地域には同業者も多く、コミュニティがあるからこそ、畑を紹介してもらえたり、栽培のアドバイスを得ることができます。ブドウは作業を待ってくれないので、タイミングを逃すとお金になりません。今、何をするべきか、ベテラン農家さんが教えてくれるから、新規就農者でも消費者に届けられるブドウを作ることができるとつくづく思います。
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農業のやりがい、嬉しかったエピソードは?
シンプルですが、自分たちでブドウを作って、出荷して、お金を稼いで生活していくのは、やりがいです。やり遂げる醍醐味もありますね。ブドウの収穫は年1回しか経験できません。新規就農者はどうしても経験不足で、作業が後手になったり、技術的な失敗もします。だからこそ、失敗した時点で目標ができるんですよ。翌年の作業工程をイメージして、次はうまく作ろうと目標を持ち続けられるのは、ブドウ栽培のやりがいですね。
こうして自分が作ったブドウを食べた人から「おいしかった」という声が聞けるのは、やっぱり嬉しい。生産者冥利に尽きますね。今のところ青森の親戚や友人が中心ですが、リピート注文してくれる顧客が増えていくのが嬉しくて、本当に品質のよいブドウを作ろうという励みになっています。
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今後の目標をお聞かせください
自分たちで生産したブドウの収入だけで生活していくことです。そのために計画を立てて規模を拡大してきました。就農4年目の今は、まだ経営開始型の給付金を受けていますが、6年目からはいよいよブドウだけで食べていくことになるので身が引き締まる思いです。
ブドウは農閑期が長いので、その間の収入基盤を整えるために6次産業化を検討しています。加工技術も含めて勉強をしたり、企画書を作成して、商品開発を進めているところです。数年後には、国際食品見本市で山梨県のブースに出品できるようにしたいですね。将来的には、農業生産法人として人を雇用して経営を拡大し、地域に貢献していきたいです。
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就農希望者へメッセージ
今、働き方が多様化する中で一次産業が見直されています。農業をやりたいという方も増えていますが、生活があっての農作業なので、自分のライフプランを明確にすることが大切。ライフプランと就農プランをセットで描いて進んでください。作物が決まっているなら、就農先が「産地」であることは重要です。山梨県はモモ・ブドウの技術が長けていてブランド力もあり、出荷される作物は単価も魅力的です。だからこそ、農業に専念して心豊かな生活が送れると思います。