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山梨県に就農したきっかけ、経緯は?
東京の会社で営業をしていました。八王子市のアパートのベランダで野菜を育てるうちに、もっと広いところで育てたいと思うようになりました。妻の実家が山梨の果樹農家で、遊びに行くたびにいろいろな農家さんと話す機会があり、ブドウに興味を持ちました。山梨県立農業大学校の週末農業塾に1年間通ってブドウづくりを学び、同じ志を持つ人たちからも刺激を受けて移住就農を決めました。2017年1月に会社を辞めて2月に移住。4月から山梨県立農業大学校の研修を受けました。同期生は、東京、神奈川、千葉、埼玉などからの移住者が8割。小さい子どもがいるなど、自分と似た状況の人が多く、農業で切磋琢磨し、プライベートの話もできる良き友人ができました。
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どのような制度を使いましたか
山梨県立農業大学校の週末農業塾等の研修、職業訓練を受講した後は、農業次世代人材投資資金(準備型)を活用して給付を受けました。その際、就農定着支援制度と併用ができたので、地域のブドウ栽培の師匠(アグリマスター)に1年間、研修してもらいました。アグリマスター側にも報償費が支払われたので、気持ちよく教えてもらえたと思います。アグリマスターは地域の農家の中でもリーダー格の人です。「東京から来ている子がいるから教えてやって」と、いろいろな人に引き合わせてくれました。みなさんに優しく接してもらい、いろいろ教わっているので、期待に応えなければという緊張感もありますね。
現在は経営開始型を活用して独立就農しています。アグリマスターには、技術だけでなく農家の心得を教えていただきました。「一人では働けないので仲間をつくれ」という教えが心に残っています。アグリマスターをはじめ近所に教えてくれる人がいて、研修を通して友人や先輩に巡り会えたことで就農にたどり着けたと思います。
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作物・農地はどのように決めましたか?
畑は最初の30aをアグリマスターが紹介してくれました。そこで頑張っていると、いろんな人が「あそこの畑が空くらしいから」と教えてくれて、現在は1haに拡大しました。ブドウは巨峰とシャインマスカット、モモは7品種をリレーしています。柿は「甲州百目」という渋柿で、干し柿への加工までやっています。私が住んでいる甲州市の松里地区では、ブドウ、モモ、柿の3つを生産する人が多く、柿は冬にボーナスのように入金があるという話を聞いていたので、自分も生産することにしました。
収穫した作物はすべてJAに出荷しています。シーズン終了後に作物ごとの成績表がもらえることがJA出荷の一番の理由です。5段階評価のほか病気の有無なども教えてくれます。自分の課題がわかり、翌年の目標もできるので、客観的に評価されることは大事。しっかりと技術が身につくまではJAに出荷したいです。職員のみなさんも面倒見がよく、営農に役立つ情報やアドバイスをいただけて良い関係が築けています。
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就農後のライフスタイルは?
妻には自由に職業を選んでもらいました。約5年間の産休・育休を取っていましたが、今年から職場復帰して八王子の会社へ特急かいじで通勤しています。5歳と3歳の子どもは私が保育園の送迎をしています。育児は分担しています。子供と一緒に自家用畑で野菜を作ったり、森や川で昆虫を捕まえたり、自然の中で遊んでいます。子供と遊ぶ時間が長くなり、成長を近くで見られるのは、山梨に移住しなければできなかったことだと思います。
妻は地域の子育て支援センターでママ友ができ、保育園の情報交換や「農家の嫁あるある話」で意気投合したようです。これまではアパート暮らしでしたが、今年、畑の近くに一軒家を新築しました。妻とお互いの仕事で家計を支え合っています。
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今後の目標をお聞かせください
現在、畑は成苗が半分ぐらいなので自分一人で管理ができていますが、やがて人が必要になります。もし東京などから新規就農したい人がいたら体験がてら手伝ってもらえるように、あと2~3年で人に教えられるぐらいまで技術を高めることは一つの目標です。移住就農者に技術だけでなく、地域で人のつながりを広げるアドバイスなど、県外から移住してきた自分だからできる支援をしていきたいです。それから、アグリマスターがやっているビニールハウスの加温栽培を習って収入アップを目指したいです。時期尚早と言われると思うので、5年、10年後にそこを目指して動いていきたいですね。
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就農希望者へメッセージ
就農や移住したら、もう戻るところはないと考える人もいるかもしれませんが、そんなに思い詰める必要はありません。1~2年間、試しにやってみようという気持ちで、ストレスやプレッシャーを抱えずに臨んだほうが農業も生活も楽しめると思います。就農を決めるまでに、何度も山梨に足を運んでほしいです。アウトドアが好きならキャンプ、車が好きならドライブで自然や農業にふれて、ぜひ山梨を好きになってほしいです。