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アーティチョークはどんな野菜? 味や栄養、育て方、おいしく食べる下処理とレシピも紹介

sato tomoko

ライター:

アーティチョークはどんな野菜? 味や栄養、育て方、おいしく食べる下処理とレシピも紹介

見た目はゴツゴツですが、中身は意外にもホクホク。アーティチョークはヨーロッパでは定番の野菜ですが、日本では手に取る機会が少なく、食べ方もあまり知られていません。でも、ひと手間かけて調理すれば、栄養豊富でやさしい甘みが楽しめる魅力的な存在。家庭菜園で育てることもできます。本記事では、アーティチョークの特徴や育て方、下処理の方法、味わい方までやさしく解説します。

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アーティチョークとは?


キク科チョウセンアザミ属の多年草で、地中海沿岸が原産地。和名を「チョウセンアザミ」と言います。アーティチョークという呼び名は、大きなアザミという意味のアラビア語「アル・カルチュフ」が語源です。日本で見るアザミよりもかなり大型で、主に花が咲く前の蕾を食べるほか、若い花茎を食用とする品種もあります。

ギリシャ・ローマ時代にはすでに用いられ、15世紀にはイタリアで栽培が始まり、その後フランス、イギリス、アメリカ大陸へと伝わって一般化し、特に南ヨーロッパではよく使われています。日本でも江戸時代中期には栽培されていた記録がありますが食用としては普及せず、現在も国内での生産量は少ない西洋野菜です。

アーティチョークの特徴

アーティチョークは、鎧のようなゴツゴツとした外見からは想像できないほど、やさしい味わいを持つ野菜です。加熱するとホクホクとした食感になり、ほんのりとした甘みが広がります。ユリ根やタケノコにも似た、上品でクセのない味わいが特徴です。

食用とするのは、花が咲く前の大きくふくらんだつぼみの部分。開花が進むと繊維質を増して硬くなってしまうため、つぼみの状態が最もおいしく食べられるタイミングで、旬は5月から6月にかけての初夏。水煮やオイル漬けなどの加工品も流通していますが、採れたての新鮮なアーティチョークならではの香りや食感は格別です。

アーティチョークの栄養とその効能


アーティチョークは古くから薬草(ハーブ)として利用されてきた歴史を持つ植物です。薬草としては主に葉や根がハーブティーやエキスとして利用され、肝機能のサポート、コレステロール値の改善、血糖値の上昇抑制、消化促進などがあるとされています。

近年では、栄養価の高さにも注目が集まり、スーパーフードとしても評価されています。なかでも、ゴボウの1.5倍の食物繊維と、カリウムやカルシウム、マグネシウムなどのミネラルがバランスよく含まれている点が特徴です。ここでは、アーティチョークの主な栄養成分とその効果を紹介します。

食物繊維

水溶性食物繊維の一種であるイヌリンが多く含まれています。イヌリンには腸内環境を整えるほか、血中のコレステロールを下げたり、食後の血糖値の急激な上昇を抑える働きがあります。

カリウム

筋肉の動きや神経伝達に関与するほか、体内の水分バランスや血圧の調整に欠かせないミネラルです。

カルシウム

骨や歯などの硬組織をつくるほか、心筋や筋肉の収縮作用を促進するミネラルです。血液をアルカリ性にする働きもあります。

マグネシウム

骨の弾性維持や神経や筋肉の正常な機能を維持するほか、酵素の作用を活性化する働きがあります。

リン

骨・歯などの硬組織をつくるだけでなく、エネルギー代謝を円滑に進めるATP(アデノシン三リン酸)などをつくるのに不可欠な成分です。

血液中のヘモグロビンや筋肉中のミオグロビンとして酸素を運び、全身の細胞に届ける重要な働きを担っています。

アーティチョークの育て方


アーティチョークは希少性が高く、ユニークな見た目で家庭菜園でも人気の作物です。種から育て、株分けによって増やすこともできます。多年草なので一度植えれば、毎年収穫できることが魅力ですが、1年目は株を充実させて、越冬後の2年目から収穫します。ここでは、種から育てる基本的な方法を紹介します。

準備・土づくり

アーティチョークは、日当たりの良い場所で、水はけのよい土壌を好みます。酸性土壌を嫌うため、植え付け前には苦土石灰をまいて土を中和し、腐葉土や堆肥を混ぜ込んで土壌を肥沃にしておきましょう。株が大きく育つので、プランターの場合は深型で大型のものを選び、鉢底石を敷いて排水性を高めます。土は野菜用培養土を使うと便利です。

種まき

種まきの適期は、春(2~4月)または秋(8~10月)です。セルトレーやポットで育苗する場合は、1cmほどの深さに種をまき、苗は本葉が5枚前後になったら定植します。直まきする場合は株間を1mほど空けておきましょう。

管理・水やり

1年目の秋になったら月に1度を目安に追肥を行いましょう。越冬中は株元にマルチをして施肥は控えめに。翌年の生育期の3~6月にも追肥をすると株が充実します。水やりは、表土が乾いたらたっぷり与えますが、過湿にならないように注意が必要です。

収穫

2年目以降の5~7月ごろ、つぼみの直径が10cm程度に育ったら、うろこ状の総苞(そうほう)がかたく閉じているうちに、茎を3~5cmほどつけて切り取ります。また、直径4~5cmの若いうちに収穫すれば、丸ごと食べることができます。

株分け

株分けは9月ごろに行います。親株の根元から生えた枝のうち、長さ30〜40cmで4~5枚の葉をつけたものを、根ごと親株から取り分けて植え付けます。畝幅5~2m、株間1mが目安。プランターで育てる場合も、深型で大型のものを使い、深さ15〜20cmの植え穴には、毎年堆肥を入れて元肥とします。

アーティチョークの選び方


アーティチョークを購入する際は、つぼみが開いておらず、がくが肉厚でふっくらとし、重みのあるものを選びましょう。がくが鮮やかな緑色で、茎の切り口が変色していないものが新鮮です。

アーティチョークの保存方法

アーティチョークは日持ちがしないため、できるだけその日のうちに調理して食べます。すぐに食べない場合は、乾燥を防ぐために新聞紙などで包んで、ビニール袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保管し、2~3日以内に食べましょう。

アーティチョークの食べ方


見た目のインパクトとは異なり、アーティチョークには柔らかくて上品な味わいの可食部が隠れています。ただし、繊維質の「チョーク」や硬い外皮を取り除くなど、少し手間のかかる下処理が必要です。ここでは、アーティチョークのおもな食べられる部位と、おいしく味わうための基本的な下処理の方法をご紹介します。

がくの付け根

アーティチョークの外側を覆っている花びらのような部分が「がく」です。がくは全体的には硬いですが、根元の内側にあるわずかな肉質部分は柔らかく、風味もあって食べることができます。
よく洗って茹でるか蒸したあと、1枚ずつがくを剥がしながら歯でしごいて味わうか、包丁の背などでしごいて取り出して食べるのが一般的です。

芯(ハート・ボトム)

がくを全て取り除いた中心部にある丸くて柔らかい部分が「芯」で、通称「ハート」あるいは「ボトム」と呼ばれる可食部です。芯はほくほくとした食感と甘みがあり、グリル、マリネ、フライ、煮込みなどに幅広く利用できます。
中心にある「チョーク」と呼ばれる細かい繊毛状の部分は食べられないため、丁寧に取り除いてから料理します。

茎の内側

茎は硬く繊維質ですが、外皮を厚めに剥けば中心部は柔らかく、芯と同様に調理して食べることができます。芯と一緒に調理すると味も食感もほどよくまとまります。

アーティチョークの下処理方法

アーティチョークは外側のがくが硬く、品種によっては刺もあるため、下処理が必要です。中心部のチョークは繊維質が強く口当たりが悪いため取り除きます。また、切り口は空気に触れるとすぐに黒くなるため、レモン水に浸すなどのアク抜きも欠かせません。やや手間はかかりますが、丁寧に下処理した「ハート」は格別の味わいです。

1.レモン水を用意する

ボウルに水を張り、レモン汁(酢でもよい)を加えておきます。アーティチョークを切ったらすぐにレモン水に浸して酸化や変色を防ぎます。

2.茎とがくの先端を切る


アーティチョークをよく洗い、茎を根元から切り落とし、がくの先端が尖っている場合は、ハサミで切り取って安全に扱えるようにします。茎は皮を厚めに剥くと食べられるので取り分けておきましょう。

3.外側のがくを取り除く

がくを手で外側から剥いていき、白く柔らかい芯が見えるまで取り除き、すぐにレモン汁に浸します。

4.チョークを取り除く


がくを取り除いたアーティチョークを半分にカットして、中心部の繊毛(チョーク)をスプーンなどで取り除き、可食部のみに整えて再びレモン水に浸します。

剥いたがくも付け根の部分に可食部があるので、廃棄せずに茹でてソースを浸けて食べるか、料理の付け合わせにするなどの有効活用ができます。茹でて冷凍保存も可能です。

5.下茹でする

アーティチョークは火が通るまで時間がかかるため、下処理後に下茹でしておくといいでしょう。
下茹での方法
1.鍋にたっぷりの水と塩少々、レモンスライスを加えて火にかける
2.沸騰したら半分または1/4にカットしたアーティチョークを入れる
3.竹串がすっと通るまで、20~30分茹でる
3.茹で上がったら冷水にとって粗熱を取り、水気を切って調理に使う

アーティチョークをおいしく食べるレシピ5選

アーティチョークは、調理法によって味わいや表情が大きく変わる奥深い食材です。ほくほくとした食感とやさしい甘みは、前菜にもメインにもぴったり。ここでは、素材の個性をいかした5つのレシピをご紹介します。マリネやグリル、煮込みなど、定番からアレンジまで、アーティチョークの魅力を引き出すメニューをぜひ試してみてください。

アーティチョークのマリネ


アーティチョークに、レモン、ニンニク、ハーブを効かせたマリネ液をたっぷり吸わせた一品。前菜や付け合わせにしたり、サラダ、パスタの具材としても活躍します。

材料(作りやすい分量/2〜3人分)
・アーティチョーク(下処理済み)200g(1/4カットか半割)
・レモン果汁          大さじ1
・レモンの皮(すりおろし)   少々
・ニンニク(薄切り)      1かけ分
・イタリアンパセリ(粗みじん) 大さじ1
・タイムまたはローズマリー   少々(乾燥でも可)
・赤唐辛子(輪切り/好みで)  少々
・白ワインビネガー       大さじ1
・エクストラバージンオリーブオイル 大さじ2〜3
・塩・黒こしょう        適量

作り方
1.鍋にたっぷりの湯を沸かし、レモン汁(分量外)を加えておく
2.下処理したアーティチョークを縦4等分にカットし、柔らかくなるまで下茹でする
3.ボウルにアーティチョーク以外の材料を全て入れ、かき混ぜてマリネ液を作る
3.マリネ液にアーティチョークを浸け、密閉容器に移して冷蔵庫で30分以上(できれば数時間から一晩)なじませる

丸ごと蒸しアーティチョークのレモンバターディップ


アーティチョークを丸ごと蒸して、レモンの香りをきかせたバターソースで味わうシンプルかつ贅沢な一品。葉を1枚ずつ剥がし、ディップしながら楽しみます。

材料(2人分)
・アーティチョーク(下処理なし)2個
・レモン            1個(半分を輪切り、半分は果汁に)
・バター            30g
・ニンニク(みじん切り)    1かけ
・塩              適量
・水              適量

作り方
1.アーティチョークは、茎を2〜3cm残して切り、外側の硬いがくを数枚むき、先端を1/3ほど切り落とす
2.蒸し器または鍋に蒸し台をセットして、水、輪切りレモン、塩を入れて火にかけ、アーティチョークを並べ、ふたをして中火〜弱火で40〜50分蒸す
3.その間にレモンバターソースを作る。小鍋にバターを溶かし、ニンニクを加え、香りが立ったら火を止めてレモン果汁を加える
4.蒸し上がったアーティチョークを器に盛り、葉を1枚ずつ剥がし、3のバターソースにつけて食べる
5.中心部のハート(芯)が現れたら、チョークを取り除いてスライスし、ソースをかけて食べる

アーティチョークとホウレンソウのチーズ焼き


アーティチョークの旨味、チーズのコク、ホウレンソウのやさしい苦味が絶妙にマッチ。グラタン感覚で楽しめる一品です。

材料(2〜3人分)
・アーティチョーク(下処理済み) 200g(2~3個分)
・ホウレンソウ          50g
・シュレッドチーズ        50〜80g
・パルメザンチーズ(すりおろし) 大さじ2
・ニンニク(みじん切り)     1かけ
・オリーブオイル         大さじ1
・塩               適量
・黒こしょう           適量
・パン粉(好みで)       大さじ1〜2

作り方
1.下処理したアーティチョークは、食べやすい大きさに切って下茹でする。ホウレンソウは4~5cmの長さに切る。
2.フライパンにオリーブオイルを熱し、ニンニクを炒めて香りが立ったら、ホウレンソウを加え、さっと炒めて塩・黒こしょうで味をととのえる
3.耐熱皿にアーティチョークと2のホウレンソウを並べ、チーズをたっぷりのせ、好みでパン粉を散らす
4.200℃のオーブンまたはトースターで7〜10分、チーズに焼き色がつくまで焼く
5.好みで刻んだイタリアンパセリ(分量外)を散らす

アーティチョークと鶏肉の白ワイン煮込み


鶏肉とアーティチョークのうまみを白ワインで引き立てた洋風の煮込み料理。パンにもごはんにも合う、ほっとする味わいです。

材料(2〜3人分)
・鶏もも肉(一口大にカット)  300g
・アーティチョーク(下処理済み)200g
・タマネギ            1/2個
・ニンニク           1かけ
・白ワイン           100ml
・水              100ml
・鶏ガラスープの素       小さじ1
・ローリエ           1枚
・タイム(あればフレッシュ)  1〜2枝
・オリーブオイル        大さじ1
・塩・こしょう         適量

作り方
1.下処理したアーティチョークは、縦1/4にカットする
2.鶏肉は一口大に切り、タマネギは薄切り、ニンニクはみじん切りにする
3.フライパンにオリーブオイルを熱し、鶏肉を両面に焼き色がつくまで焼いて取り出す
4.同じ鍋でタマネギとニンニクを炒め、しんなりしたら鶏肉を戻し、アーティチョーク、白ワインを加えて中火にかけてアルコールを飛ばす
3.水、鶏ガラスープの素、ローリエ、タイム、塩・こしょうを加えて蓋をし、弱火で20〜25分煮込む。
4.味を調えて器に盛り、好みでパセリやレモンを添える

アーティチョークとポテトのソテー


ホクホクのジャガイモと、旨味のあるアーティチョークを一緒にグリル。オリーブオイルとハーブ、レモンの香りで、素材の味を引き出す地中海風の一皿です。

材料(2〜3人分)
・アーティチョーク(下処理済み)2個
・ジャガイモ(中サイズ)    2〜3個
・レモン            1/2個分
・ニンニク(潰す)       1かけ
・オリーブオイル        大さじ3
・塩・黒こしょう        適量

作り方
1.下処理したアーティチョークは、縦1/4にカットして下茹でする
2.ジャガイモは皮ごとよく洗ってくし型に切り、下茹でするか、電子レンジ(600Wで3〜4分)で竹串が通る程度に加熱しておく
3.ボウルにアーティチョーク、ジャガイモ、ニンニク、ハーブ、塩・こしょうを入れ、オリーブオイルを回しかけて全体を和える
4.フライパンにオリーブオイル(分量外)を熱し、3のアーティチョークとジャガイモを炒め、ジャガイモに焦げ色がついたらレモンの果汁をしぼって回しかけして仕上げる

育てて食べるのがおもしろい西洋野菜

アーティチョークは、育てる楽しみと食べるよろこびを兼ね備えた、ちょっと特別な野菜です。初夏に旬を迎えるつぼみは、加熱することでホクホクとした甘みが引き出され、サラダや煮込み料理、グリルなど、主役にも脇役にもなる万能食材です。日本ではまだ珍しい存在ですが、家庭菜園でも挑戦でき、栄養も豊富。下処理のひと手間をかければ、食卓に彩りと話題を添えてくれるはずです。日々の暮らしに取り入れて、アーティチョークの奥深い魅力を楽しんでみてはいかがでしょう。

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