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ナフィールドジャパンがトップ交代 非農家出身の第一期スカラーが初代から託されたバトン

吉田 忠則

ライター:

ナフィールドジャパンがトップ交代 非農家出身の第一期スカラーが初代から託されたバトン

将来を担う農業者を奨学生(スカラー)として世界に送り出すナフィールドジャパンが1つの節目を迎えた。代表理事が初代の前田茂雄(まえだ・しげお)さんから森上翔太(もりがみ・しょうた)さんに代わったのだ。ナフィールドの意義と森上さんに期待される役割について話を聞いた。

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日本のスカラー10人を輩出

農業者を育成する奨学金制度「ナフィールド」は1950年代に英国で誕生した。スポンサーになるのは、各国の農業や食品関連の企業。農業者が国際感覚を養い、グローバルなネットワークをつくるのを支援するのが目的だ。

ナフィールドジャパンの設立は2019年。北海道で畑作を営む前田さんがその3年前にゲストとして参加して意義の大きさを感じ、三重県でトマトなどを栽培する浅井雄一郎(あさい・ゆういちろう)さんらと立ち上げた。

スカラーとして世界を回る期間は原則2年。それぞれ訪問国を決め、現地の農場や食品企業、農政担当の政府部局などを訪ねて課題を深掘りする。日本からは現在進行形を含めて10人がスカラーに選ばれ、知見を広めている。

初代の代表理事に就いた前田さんは在任中にスカラーを選出し、送り出す体制づくりに努め、今回バトンタッチを決断した。京都府でネギやスイートコーンを育てる森上さんは第1期スカラー。9月28日に代表理事に就いた。

前田茂雄

前田茂雄さん

日本での会合を機にトップ交代

前田さんは日本の農業界がナフィールドの存在すら知らなかったときに単身ゲストとして参加し、日本の組織の代表理事を務めて7年。なぜ交代を決めたのか。理由の1つは各国のナフィールドの組織の代表の経歴だ。

ナフィールドの組織は、元スカラーが代表を務めるのが原則。森山さんと違い、前田さんはゲストなので2年間のプログラムは経験していない。日本には経験者がいなかったので、先駆者の立場で初代の代表理事を務めた。

ただし、これは形式的な話。より大きいのは、今年スカラーになった世界の農業者が一堂に集まるキックオフミーティングを3月に日本で開いたことだ。前田さんによると「日本だけでなく、アジアでも初めて」。

「日本の農業を世界の農業者に知ってもらう機会をつくることができた」。前田さんはそう話す。ナフィールドジャパンをアピールする場にもなった。

それを踏まえ、活動をもっと本格化するという課題は森上さんに託すことにした。ナフィールドは元スカラーたちが互いに協力し合い、運営することが活動の基盤になる。前田さんは「そのためには20人が必要」と語る。

これまでは限られた人数で多くの仕事を引き受けてやってきたが、それは過渡的な体制。奨学金制度の経験者が増えれば役割をそれそれ分担し、負担を減らすことが可能になる。バトンを受け継いだ森上さんのミッションになる。

日本会合

ナフィールドの日本会合(2026年3月、兵庫県淡路島)

スタッフへの感謝の思いが強まった

森上さんの話に移ろう。非農家の出身で、2013年に「あぐり翔之屋」を立ち上げた。栽培面積は20ヘクタールで、社員とパートを含めて25人が働いている。

スカラーになったのは2020年。ちょうど新型コロナの感染爆発の年に当たったため、いったん中断。2024年までにかけてチリ、アルゼンチン、米国、スペイン、イタリア、南アフリカなど各国を回り、見聞を広めた。

世界を回って何を感じたのだろう。そうたずねると、「精密農業」という言葉が返ってきた。「トラクターもドローンもGPSで操作し、施肥量も農薬の散布量も人間の感覚に頼らずに決める」。スマート農業の進化形だ。

判断のもとになるのはデータ。海外の先進農家の実情を知り、営農のあり方を変えた。もともと畑ごとの収量は測っていたが、調整作業で各自どれだけこなせているかも計るようになった。これは「どこまで愚直にやるかが重要」。

これにより生産性は向上した。だが森上さんがより感じているのは、経営者としてのマインドの変化だ。「目に見えて経営に生かせることとは別に、人間的にものすごく成長できたと感じている」。続けてこう語った。

「経営上、利益を出さなければならないのは当然。でもこれからの世の中はそれだけでは足りない。農場で働いている人がやりがいを持てているか。従業員やその家族に感謝しないといけない。そういう気持ちが強まった」

海外の農業者だけではなく、日本のスカラーとの交流も糧になっている。「国体でありながら、ナフィールドジャパンは大きな可能性を持っている。バトン内の有望な農業者と話すことで、たくさん勉強させてもらっている」

ナフィールドジャパンの代表理事としての抱負も紹介したい。真っ先に挙げたのが「知名度の向上」。求めるのは「英語ができて、しっかり営農していて、課題意識を持っている人」。スカラー選出の裾野を広げるのが目標だ。それが実現すれば、組織の運営はより強固になる。

森上

ナフィールドの旅に参加したときの森上さん

新規就農者が代表になった意義

最後に前田さんのインタビューに戻ろう。

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