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倍率4倍の農業スクール!? 知識ゼロから多様な農の担い手を輩出。自治体が本気で取り組む一気通貫の就農支援とは

湯川真理子

ライター:

倍率4倍の農業スクール!? 知識ゼロから多様な農の担い手を輩出。自治体が本気で取り組む一気通貫の就農支援とは

仕事をしながら農業を学べる週末農業のスクールが人気を集め、副業として始める兼業農家が認知されてきた。そんな中、農に関わる人口を着実に増やしているスクールがある。2022年に開校した、奈良県生駒(いこま)市が運営する「いこまファーマーズスクール」だ。
対象は、現時点で農業をしていない人。6か月ごとに募集される受講希望者は毎回定員を超過している。生駒市民だけでなく大阪からの申込者も多く、中には受講を機に生駒市へ移住したいと相談する人もいるほどだ。
人気の理由について、指導に当たる生駒市地域活力創生部農林課の森田広幸(もりた・ひろゆき)さん、藤谷隆史(ふじたに・たかし)さんに話を伺った。

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動機はさまざまだが志は同じ。生駒で農業を始めたい人をサポートし、最初の一歩を後押し

◎2農林課の森田 広幸さん(写真左)、藤谷 隆史さん(写真右)

脱サラ後、新規就農した農林課の森田広幸さん(写真左)、地域活性化事業会社において中山間地域で就農した藤谷隆史さん(写真右)

生駒市は奈良県の北西端に位置し、生駒山を隔てて大阪市や奈良市に通じるベッドタウンでもある。山々に囲まれた土地柄、まとまった農地が少なく、そのほとんどが小規模農家だ。「いこまファーマーズスクール」は、半農半X人材などの育成を通じ、地域独自の農業モデル確立を目指している。広大な農地や目立った特産品があるわけではないにもかかわらず、なぜこれほど人気を集めているのだろうか。

2026年10月4日、生駒市役所で令和8年度後期の開校式が開かれた。受講生は、58組の応募の中から選ばれた15組(一世帯2人まで受講可能)。倍率は実に約4倍であるから驚きだ。

半農半Xの生き方への憧れ、副業としての農業検討、セカンドライフの充実、将来的な移住を見据えた大阪からの参加など、動機は千差万別。それでも「生駒で農業を始めたい」という希望に満ちた受講生が集まった。

本スクールは前期(春夏野菜)と後期(秋冬野菜)に分かれており、通年での受講を希望する人も多い。今回の15組中7組は、前期から引き続き受講を決めた人たちだ。

◎3開講式の様子

令和8年度いこまファーマーズスクール後期開校式

「大阪から近いこともあり、今回の受講者の3分の1は大阪の方です。中には将来的に生駒に住みたいという方もいます。関係人口を増やす意味でも、市外からのご参加は大歓迎です」と農林課の藤谷さんは話す。

募集は2月と8月の年2回。働きながら学べるよう主に日曜日に開催され、半年間で共同農園での体験と座学が行われる。いきなり農業を生業(なりわい)にするのはハードルが高いが、「半農半X」からスタートできること、そして市が直接運営し、まちぐるみで一気通貫の就農支援を行っている点が大きな魅力だ。受講料も1万円と手頃に設定されている。

農業知識ゼロからのスタートであっても、始め方から相談相手作り、消費者やレストランといった買い手との関わりのきっかけ作りまで学べる。将来的に何らかの形で農と関わり、実践していきたい人が第一歩を踏み出すための知識と実践が網羅されているのだ。

得意分野を生かした講師陣。窓口が集約されたワンストップの就農支援

「農林課の職員は、それぞれ得意分野を持っています。農業指導が得意な者、農産物の流通に携わってきた者、飲食店とのマッチングに長けた者などがそろっており、スクールの講師だけでなく農林課としての企画立案も行っています」と藤谷さん。藤谷さん自身も地域活性化事業会社で中山間地域の就農を経験し、現在は自宅近くの農地で野菜を育てている。

◎4圃場での実習8

圃場での実習

◎5耕運機の動かし方を学ぶ実習b

耕運機の動かし方を学ぶ受講生

藤谷さんとともに講師を務める森田さんは、脱サラして農家になった経歴を持ち、農業を続けながら2025年9月より農林課に入職した。

「私自身も知識ゼロからスタートしたため、最初は『何から聞けばいいのか』『相手が何を望んでいるのか』すら分からず苦労しました。ここでは『どこへ行って何を聞けばいいのか』を的確に伝えられるので、自分の経験を生かして同じ道を目指す方の助けになりたいです」と森田さんは語る。

就農時の悩みを実体験として知る森田さんの存在は、受講生にとって心強い。悩みへ親身に応じるだけでなく、農業委員会の近くで執務しているため、農地などの情報もスムーズに確認できる。

このように農業に関する窓口が一箇所に集約されている点は、新規就農を目指す人にとって最大のメリットだ。「農業の始め方」「相談できるつながり作り」「買い手となる消費者や店舗との連動」という3つのステップに寄り添ったワンストップの支援体制が整っている。

具体的には、新規就農者が出店できる市主催の「いこまニューファーマーズマルシェ」(不定期開催)があり、早い段階で販売体験を積むことができる。また、市内の生産者と飲食店をつなぐ農業応援イベント「いこまレストラン」も展開。担当者が仲介となり、飲食店のシェフが直接畑に足を運んで野菜の状態を確認し、生産者と会話を交わしながらメニューを考案する。完成した料理は、試食会に応募した一般参加者に振る舞われる仕組みだ。

◎6グラフィックス1

参加者の方々

生駒市の農業は、大規模生産地と競うのではなく、小規模農業や「半農半X」によって少しでも多くの農地を守り、荒廃を防いで街を守る「農の担い手づくり」を目指している。

多様な担い手を輩出することで農に関わる人口を着実に増やし、農地保全へとつなげる同スクール。第8期(2026年9月修了)は15組21名が修了した。スクールで知り合った仲間と遊休農地や市民農園を借りた人、来春の就農に向けて地元農家で研修を続ける人など、それぞれの形で農に関わる第一歩を踏み出している。

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写真提供:生駒市役所農林課

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