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先輩農家インタビュー 白子町・仲田吉範さん

白子町・
仲田吉範さん

仲田吉範(なかだよしのり)さん
      

仲田なかだ 吉範よしのりさん

千葉県船橋市出身。大学卒業後、新卒で食品メーカーに入社。営業職として勤務した後、山梨県北杜市の農業生産法人に転職して有機農業に従事。4年後にUターンし、千葉県立農業大学校での研修を経て、2017年に独立就農。主な出荷先はJA長生。※2023年9月時点

  • 年 齢

    49歳

  • 農 園

    白子 潮風ファーム

  • 営農地

    白子町

  • 出身地

    船橋市

  • 就農年数

    7年目

  • 生産品目

    たまねぎ・葉たまねぎ

  • 栽培面積

    延べ27,000m²

  • 家族構成

    妻、長女

年間スケジュール

  • 8月中旬

    葉たまねぎ種まき
    (育苗)

  • 9月上中旬

    新たまねぎ種まき
    (育苗)

  • 10月上中旬

    葉たまねぎ植え付け

  • 11月上中旬

    新たまねぎ植え付け

  • 1月上旬

    葉たまねぎ収穫・出荷

  • 3月中旬~
    6月上旬

    新たまねぎ収穫・出荷

1日の流れ(収穫期)

1日の流れ(収穫期)

現在の栽培作物と営農形態を教えてください

房総半島の東側、九十九里海岸を有する白子町で、新たまねぎと葉たまねぎを栽培しています。千葉県立農業大学校(以下農大、東金市)に通っているとき、県の農業や産地の状況を知り、白子町のたまねぎに興味を持ちました。
白子町は全国区の新たまねぎの産地。ミネラル分を多く含む土で作られ、甘味があります。乾燥・貯蔵せずに新たまねぎとして出荷される「白子たまねぎ」は、特産品として50余年の歴史とブランド力があります。

しかし、たまねぎを専門に作る農家は意外に少なく、大規模生産者は一握りです。白子町で農業をするからには、たまねぎに特化して集中的に投資をすることで、競合する産地との差異化をはかりたいと思いました。

妻の眞美子も白子町で出会いました。研修先の農家からの紹介が馴れ初めです。独立就農した翌年に結婚し、一緒に白子潮風ファームでたまねぎを作っています。
そのほかにも農福連携を活用して、多くの方の力を借りて営農しています。

千葉県で就農したきっかけは?

ご縁があり、山梨県北杜市の有機農業の農業生産法人に転職して4年間、生産に従事しました。しかし、未経験で飛び込んだため、知識不足を痛感していました。ましてや自然農法の栽培は、経営的にも難しい。慣行農業も学ばなければ事業として通用しないと考え、農業を一から勉強しようと生まれ故郷の千葉県に帰りました。
農大で農業者・新規就農者向けの研修を受け、先生方のサポートがあって独立就農を果たしました。

農地はどうやって見つけましたか

新規就農者が農地を借りることは、とても大変です。私は、地域の農業者のキーマンになる人と農大経由で知り合い、地域の皆さんにつないでもらいました。点在する農地のほとんどは、その人の紹介です。納屋付きの住居を借りることができ、トラクターも貸してもらうなど、いろいろと面倒を見てもらっています。

外から来た人がその地域で農業をするには、まず県の農大という信頼の看板を掲げた上で、地域の人とのハブになるキーマンとの接点が必要だと思います。さらに、営業の経験も役に立ちました。いろいろなお客様に飛び込む勇気、対人力は、会社員のころ培ったものだと思います。

一生懸命であることも大事です。うまくいかなかったらやめればいい、地元に帰ればいい、という気持ちは、農家の人に見抜かれます。私の場合は、白子町で就農して、結婚して、子どもが生まれ、もう後戻りはできない、絶対にここで生計を立てるぞという覚悟があったから、周りの人達が本気で助けてくれたのだと思います。

栽培技術はどのように習得しましたか

白子の新たまねぎは、形が良ければいいだけでなく、食味が強く求められます。
土作りは奥が深く、誰かに聞けば分かるというものではありません。というのは、生産者はそれぞれの環境や経験に基づくやり方や信条を持っていて、人によって答えが違うからです。農大の先生や県農業事務所の職員に聞くと、科学的な根拠のある答えが得られるので、自分で学んだ筋を1本持って、補完的に信頼できる人に聞くのがいいと思います。

私は、白子町たまねぎ出荷組合の品評会で5連覇している人に、弟子のように付きっきりで技術を教えてもらいました。それが実を結んで、2021年に葉たまねぎで最優秀賞を頂戴することができました。そのとき感銘を受けたのは、師匠がケーキを持ってお祝いに来てくれたことです。自分を抜いた弟子をこうして祝福してくれるのが嬉しく、作物には作る人の深さが表れるのかもしれないと思いました。

農業のやりがいを教えてください

私は、物作りが性に合っています。
農業では、人によって注力するところが違い、販売拡大に力を注ぎたい人もいますが、私は本当に良いもの、よりおいしいものを作りたいと思っています。だから栽培についてあれこれ考えるのが好きで、作っている最中にも、次はこうしたい、ああしたいと妻につぶやいています。

大学は工学部で、もともと実験や研究が好きですが、農業にも同じ楽しさがあります。自然相手のため、天気、土、水、空気、肥料など複数の要素が複雑に絡み、なかなかうまくいかないことが多いです。しかし、そのことが逆にモチベーションになっています。
だからこそ、お客様に「こんなたまねぎ食べたことがない」と言われることに大きなやりがいを感じます。白子名物のたまねぎ狩りなど対面販売の環境も大事にしたいと思っています。

これからも一層、食味と収量を追求していこうと考えています。
そのためには、販売先に合わせた品種の選定が重要です。販売量の8割を占めるJA出荷には玉揃えの良い品種を選び、個人売りでは食味の良い品種を選びます。しかし品種によっては、味が良くても大きさがそろわず歩留まりが悪いことがあるので、より食味が良く歩留まりの良い品種を探すため、毎年新たに5品種ほどを試験栽培しています。

農福連携の取り組みについて教えてください

生計を成り立たせるにはある程度の規模が必要で、規模を拡大するには人手が必要です。そこで、JA長生の担当者の紹介で農福連携に取り組んでいます。
地域の7つの福祉事業所を利用する障がいのある人に、たまねぎでは掘り取りと葉・根のカット、葉たまねぎでは袋詰めをお願いしています。多い時には40人以上が来てくれて、きちんと説明して環境を整えれば、素早く上手に作業してくれます。かつては「農福連携なんて無理」と周りから言われていましたが、いまや普通のパートさんと変わらないか、それ以上に活躍する人もいます。

福祉事業者の方から聞いたところでは、私の「ありがとう」「助かっている」という言葉に、障がい者の方はやりがいを感じているということです。これは経営者として重要な学びでした。人を雇用するようになったら、従業員に感謝の声を届ける環境を作りたいと思います。

現在は、白子町、長生村、一宮町そしてJA長生が一気通貫の支援組織「長生農業独立支援センター」を立ち上げ、新規就農者に手厚いサポートを行っています。私自身、新規就農から定着するまで、そして今も、JAをはじめたくさんの人に力を借りています。それだけに、自分も恩返ししていきたいという気持ちがあります。
ぜひ、自分一人だけでなく、誰かのために農業をしたいという気持ちを持って挑戦してください。

今後の目標。就農希望者へのメッセージ

今後の目標は、白子たまねぎのブランドを底上げすること、そして新規就農者が根付くための土台づくりを担うことです。それが、先輩就農者としての役割だと思っています。

ブランドは生産者が決めるものではなく、市場やその先の消費者が決めるものです。私が白子町で就農したときは、5月収穫の1品種だけが作られていましたが、ブランドとしてもっと幅が必要だと思います。早生、極早生、超極早生の品種の栽培に挑戦し、JA長生を通して安定出荷につなげて、収量や売上で結果を出せば、みんなが作ろうと思うはず。その先導役を担うことで、地域の活性化につなげたいです。

長生(ちょうせい)農業独立支援センターとは

長生地域の自治体「一宮町」「長生村」「白子町」そして「JA長生」が、県の協力を得ながら、新規就農・営農に関する相談をワンストップで対応する窓口のことです。相談、研修、育成、就農後のフォロー、生活の相談などに一貫して対応することで、就農者が地域に定着し経営が安定することを目指し、2019年に開設しました。
国の就農準備資金の認定機関として研修生の受け入れも行っており、全国各地から幅広い作物の就農希望者が集まっています。

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