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先輩農家インタビュー 南房総市・神作 陽介さん

南房総市・
神作陽介さん

神作陽介(かんさくようすけ)さん
      

神作かんさく 陽介ようすけさん

千葉県館山市出身。同市で旅行会社に勤務する傍ら、南房総市の農業生産法人で食用なばなの生産を手伝う。後に同法人への雇用就農を経て独立。2018年6月、共同経営者と2人で株式会社房総スカイファームを設立。食用なばな(9ha)をメインに、びわ(0.3ha)、トウモロコシ(1.5ha)、ゴーヤ(3ha)などを生産している。※2023年9月時点

  • 年 齢

    40歳

  • 農 園

    株式会社房総スカイファーム

  • 営農地

    南房総市

  • 出身地

    館山市

  • 就農年数

    9年目

  • 生産品目

    食用なばな、びわ、トウモロコシ、ゴーヤ

  • 栽培面積

    138,000m²

  • 家族構成

    妻、長男、長女、次男

食用なばな年間スケジュール

  • 3月

    土づくり、
    飼料用ヘイオーツ種まき

  • 6月

    飼料用ヘイオーツ刈り取り

  • 7月

    堆肥まき

  • 8月末

    種まき(~11月初旬)

  • 9月

    育苗(捕植用)

  • 10月~
    翌3月

    収穫

びわ年間スケジュール

  • 3月末~
    4月末

    袋かけ

  • 5月~
    6月

    収穫

  • 9月

    剪定

  • 12月

    摘花

1日の流れ(収穫期)

1日の流れ(収穫期)

就農するまでのきっかけと経緯を教えてください

きっかけは、南房総市で食用なばなを栽培していた高校の同級生を手伝ったことです。
それまで馴染みのなかった田や畑がすぐ近くにある農業という環境が刺激的でした。関心を持ち、雇用就農で友人の農園に入ったのが2015年、私が32歳の時でした。そこで農業の面白さを確信し、70歳を過ぎてもこの仕事で健康的に働くことを考えると会社を作ったほうがいいと考えました。同じ思いだった農業法人の同僚・古川健志(取締役)と2人で、2018年6月、南房総市に株式会社房総スカイファームを設立しました。

古川は南房総市の出身ですが、2人とも非農家出身で、農地も農機もありません。運よく、なばなの卸先となる会社の会長から撤退した農地を借りることができ、残されていたコンテナをオフィスにしました。畑だったところに農業倉庫を建て、農機を買い、借金を抱えてスタートを切りました。

栽培作物はどのように決めましたか?

南房総市は特徴的な粘土質の土壌なので、作りたいものがなんでも作れるわけではありません。この土地や気候風土に合った作物のひとつが、市の特産品・食用なばなです。産地としてすでに有名なことから、ブランドの強みもあり、栽培作物に決めました。
現在は地域の農業法人5社が南総なばなネットというグループを組んで販売促進をし、量が足りないときはお互いに融通し合っています。

房州びわも特産品ですが、新規参入が難しい作物です。農業法人の立ち上げを知った古川の友人が、やる人がいなくなった畑をやらないかと、びわ山を丸ごと貸してくれました。引き受けたものの、栽培は初めてで知識は全くありません。安房農業事務所に在籍するびわ専門の普及員に相談すると、びわ農家に研修のアポを取ってくれました。普及員を通さず飛び込みで教えてくださいと言っても、門前払いだったと思います。

なばなの収穫がない夏の収入を得るために、野菜の栽培も始めました。露地畑でゴーヤ、トウモロコシ、そら豆を手掛けることに決め、栽培方法を学ぶために何軒もの農家を回りました。知らないことは恥だと思わずに、知らないので教えてほしいと正直に言ったほうがいいですね。そんな姿勢が農家さんの信頼につながり、教えにつながったのかなと思います。

農地はどのように見つけましたか?

初年度の圃場面積は0.8haでした。古川が地元の知り合いにお願いして回ってかき集めましたが、この規模ではとても食べていけません。事業として成り立たせるためには、最低でも5haは必要です。
南房総市は6町1村が合併してできた市で、私たちの法人がある岩井地区には、生産法人がほとんどありません。なぜなら、夏は民宿の経営、閑散期に田んぼや畑を手掛けるという兼業農家が多い特殊な環境だからです。

そんな地域の人たちにとって私たちは、突然やってきた見知らぬ人間で、信用はありません。1年目は様子を見られていたのでしょう。当然だと思います。よくわからないよその人間に大切な土地を貸せるはずありません。

畑を丁寧に管理し、地域の草刈りにも参加していると、「農地を貸してあげたい」と少しずつ声をかけていただけるようになりました。
こうして地域の信頼を得ることで少しずつ農地を増やし、現在、食用なばな畑の面積は、延べ9haになりました。

販路はどのように開拓しましたか?

食用なばなは、道の駅「富楽里(ふらり)」での直売、地元の加工会社、飲食店、ホテルなどで販売しています。これは古川の地元の人脈があったからこその販路です。
このほか、JAの担当者と一緒に都内のスーパーへ営業にも行き、自社の名称を入れたオリジナルパッケージで納品しています。ゴーヤはコンビニの惣菜の材料に採用してもらいました。ほかにも、土地を貸してくれた会社とメニュー提案をして、寿司店に菜の花のり巻きを展開してもらうなど、営業でもいろいろな人の力を借りて販路を開拓しています。

南房総市に声がけをいただいて、房州びわ、トウモロコシ、そら豆などで、ふるさと納税の返礼品も始めました。南房総市も返礼品の拡充に力を入れており、私たちの販売経路として大きなウエイトを占めています。年末の先行販売でサイトに載せるとすぐに完売しますが、天候不順などで予定収量が取れる保証がないのが露地栽培の恐さです。価格や販売手数料を当社で設定できますが、資材や輸送コストの上昇などを予測するのも難しいですね。

このように、販路に関しても人の力や知恵をたくさん借りています。ひとりでは開拓は難しかったと思います。

栽培のこだわりを教えてください

資源を循環させ環境の負荷軽減を目指す、循環型農業に取り組んでいます。
なばなのネコブ病対策として裏作でヘイオーツ栽培を始めましたが、先輩農家から飼料用に作れば資金源になると聞き、本腰を入れて生産しています。

自分たちでは手が回らない刈り取りは市に委託して、ヘイオーツを酪農家に納めて堆肥をもらって撒いています。
この取り組みで化学肥料を半分に減らすことができ、なばなとトウモロコシで「ちばエコ農産物」の認証を取得しました。牛の飼料価格は高騰しているので、酪農家の方からも「助かっている」と言ってもらいました。

なばなの生産では、2022年にJGAP認証を取得して、食の安全や環境保全に取り組んでいます。現在はゴーヤでの認証取得を進めているところです。得意先の青果市場から、取引先のコンビニやスーパーで認証取得が仕入れ条件として必須になってきているので、管理が自己流にならないうちに取り組んだほうがいいとアドバイスをもらいました。

千葉県で農業をする魅力はなんでしょうか

千葉は緑豊かながら都心に近いので、市場的にも物流的にも非常に恵まれた場所だと思います。各地域でいろいろな作物が生産され、何でも挑戦できるのが千葉県のいいところだと思います。

南房総市に移住する人も増え、農業を生業にしたいと、私たちのところに相談に来る人も増えています。
ただ、作りたい作物があればその適作地を選んだほうがいいし、住みたい地域があればその土壌や気候に適した作物を選んで就農するのがいいと思います。事前に地域のことをよく調べるといいと思います。

また、南房総市は就農の支援が充実していると感じます。私自身、圃場探しや補助金についてなど、親身に情報を寄せてもらい、お世話になりました。
市独自の支援制度もあります。新規就農を目指す若者を対象に最長3年間、作業場付きの住宅を貸し出し(3棟)、市から認定を受けた研修機関で研修をすると最長2年間、市から毎月5万円を需給することができるというものです。
私たちも積極的に研修生を受け入れて、産地を守っていきたいと思っています。

農業のやりがいと今後の目標を教えてください

やりがいは、食べていただいた方、買っていただいた方に「おいしかった」と言っていただけることです。そのためにも、もっと多くの人に「房総スカイファーム」の名を知ってもらいたいです。なばなを全く食べたことがない人もいるだろうし、レシピもそれほど出回っていないので、その販売促進もしていきたいです。

地域では耕作放棄地が増えていて、土地を借りてほしいという依頼を受けます。しかし、現在の会社の力では全てを引き受けられず、歯痒い思いをしています。会社の力をつけて1人でも多くの人材を雇用することで、少しでも多くの耕作放棄地を借り受け、地域に貢献したい。それが、いまの目標です。

就農を希望する人へのメッセージ

わからないことがあったら聞けばいいので、積極的に周りの人に尋ねてください。農家は毎年1年生ですから、他の農家さんと情報交換するのは必須です。ぜひ、横のつながりを大事にしてください。
千葉県や南房総市は行政の体制がしっかりしていると思います。就農の意思があれば、まずは相談してみましょう。

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