ハウス栽培作物をモニタリングして病害を予測するサービス「Plantect(プランテクト)」が登場しました。IoT(モノのインターネット)とAI(人工知能)を活用したシステムは、乾電池で動くセンサーをハウスの中に吊るし、通信機をセットすれば、スマートフォンやパソコンでハウス内の状況がチェックできるようになる優れものです、センサーが収集した温度や湿度、日射量などのデータをもとに、病害の発生を予測してくれるというサービスです。病害の発生が先に分かれば、農薬を効果的に散布するなどの対策ができて、被害が拡がることを防ぎます。
「Plantectプランテクト」は、自動車部品や電動工具で知られる世界的な企業「ボッシュ」が発表した新しいサービスです。あらゆる分野でIoTやAIの活用が進む中、農業分野において、「食の持続可能性の改善」をテーマに展開しています。
AI技術を用いて開発したアルゴリズムで92%の病害予測を実現
「Plantectプランテクト」は、大きく2つの機能から成り立っています。すべてのハウス栽培に対応した「センサーによるモニタリング機能」とハウス栽培のトマトに特化した「AIを活用した病害予測機能」です。
リアルタイムでハウス内の環境を確認できる、センサーによるモニタリング機能
収集されたデータは内蔵された無線機能を通して、同社のクラウドに送信されます。ユーザーは専用アプリを使って、スマートフォンやパソコンなどから、クラウドに送信されたデータにアクセスできるため、いつでも、どこでも、リアルタイムでハウス内の環境を確認したり、過去のデータを参照することができます。
92%の予測精度を誇る、AIを活用した病害予測機能
さらにボッシュは、100棟以上のハウスのデータと、同社の強みであるAI技術を用いて開発した病害予測アルゴリズムが、クラウドに送信されたデータをもとに、葉濡れなどの病害発生の可能性を診断。さらに気象予報と連動して、植物病の感染リスクをアプリに表示します。
従来の広域での注意喚起ではなく、各ユーザー向けにカスタマイズされた病害予測が可能になります。同社の実用実験において蓄積した過去データとの照合を行い、92%の精度で病害予測が可能になりました。
病害予測で収穫量の安定化をサポート
これまで、トマトの病害を防ぐためには、病害に感染をする前後に予防薬を散布することが効果的と言われてきました。しかし、病害に感染するタイミングは予測できないため、定期的に予防剤を散布するか、病害が発生した後に薬剤を散布することになっていました。定期的に薬剤を散布するとコストがかかりますし、病害が発生した後では被害が拡大してしまう恐れがあります。
このシステムは、こうした散布コストと被害拡大の問題を解決するための一つの手段となりそうです。農業にとって、病害の発生は収入源に直結する大きな問題。2017年7月現在で、病害予測対象となる作物はハウス栽培トマトのみです。
ハウスに吊るすだけ! 通信ケーブル、電源不要で病害を予測
「Plantectプランテクト」のセンサーハードウェアには、省電力などのメリットを考慮して、長距離無線通信「LoRa(※)」を採用し、通信ケーブルは不要です(通信機には電源が必要になります)。また、市販のアルカリ電池で約1年稼動が可能なため、電源コンセントも不要。ワイヤレス、電源レスでハウス内のどこにでも簡単に設置できます。
(※)省電力で広いエリアをカバーする通信規格「LPWA(Low Power Wide Area)」のひとつ
スマートフォンやパソコンで病害予測を毎日チェック
モニタリングの結果や病害予測は、専用のアプリで分かりやすく表示されます。特にユーザーがモニタリングしたいデータは大きく表示し、さらに詳細情報を知りたい場合は、画面をタップするだけで情報を確認することができます。
現在、Plantectプランテクトの病害予測機能は、ハウス栽培のトマトのみが対象となっていますが、今後はイチゴ、キュウリ、または花卉など他の農作物へも展開していく予定です。
Plantect プロジェクトリーダーからのメッセージ
「弊社の調べでは、95%以上のハウス栽培農家の方が病害に悩まされています。病害や適切なハウス内モニタリングができていないことで、今日も多くの農家が収穫量を減らしています。
長年病害に悩まされながら、まだ多くの農家の課題として病害があります。それは、「目に見えない」ものを相手にしており、対応が大変困難であることが挙げられるのではないでしょうか。モニタリングに関しても、初期費用が高額であったり、使い方が難しい等の理由で、使ってはみたいが手が出ないと思われている農家の方も少なくないのではと思います。弊社がご紹介するPlantectは、病害の感染リスクを見える化し、適切な農薬散布のタイミングをお知らせします。また、モニタリング機能を通じてハウス栽培農家の作業負荷を軽減し、収穫量を向上させる事ができます。
ボッシュは自動車で培った確かな技術力を施設園芸の分野で応用し、これまでにない使いやすさを実装しています。スマート農業にこれから取り組みたいハウス農家には是非ご利用いただきたいサービスです。
病害予測に関しては現在はトマトのみですが、今後イチゴやキュウリ等の作物を拡大するなど、さらに開発を続けハウス栽培農家をご支援し続けたいと思っています」(Plantect プロジェクトリーダー 鈴木涼祐[すずき りょうすけ]さん)
ボッシュは2017年、研究センターを新設。これまでAIの研究に取り組んできた組織を集約させています。さらに今後2021年までに3億ユーロ約380億円を投資して研究開発を拡大させる予定です。
このような世界的な企業が農業分野の取り組みに加わることで、さらなる農業技術発展への貢献が期待できます。
Plantectに関するお問い合わせ
お電話 : 048-470-1746 (受付時間 月~金 – 9:00 ~ 17:30)
メール : plantect@jp.bosch.com
Web : http://www.bosch.co.jp/plantect