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神奈川は安全な野菜作りに最適な土地「都市農業」の可能性

神奈川は安全な野菜作りに最適な土地「都市農業」の可能性

「大都市周辺で行われる農業を“都市近郊農業”といいますが、神奈川県は都市の中に農業がある“都市農業”とも言えます」とは、神奈川野菜を扱う行商人の三好さん。生産地と販売先が近くにある神奈川県だからこそのメリットとは、どのようなものなのでしょうか?

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神奈川野菜の販売に携わって30年、神奈川県産の野菜のみを移動販売している三好豊(みよしゆたか)さんの持論は、「神奈川県は日本で一番安全な作物を作れる可能性がある」ということです。
大都市横浜を有する神奈川県に、はたしてそれほどのポテンシャルがあるのでしょうか。神奈川県産の野菜を知りつくした三好さんに、お話をうかがいました。

都市生活の中に農地がある神奈川

神奈川県では、地域ごとにさまざまな農林水産業が営まれています(※1)。温暖な気候の三浦半島ではダイコン、キャベツなどの畑作が盛んで、畜産では葉山牛が有名です。都市に近い横浜、川崎エリアでは、市場出荷だけでなく直売を行う個人農家がいたり、観光や農作業体験などを行う県民参加型農園があったり、湘南はトマト、バラなどの施設園芸が多いエリアです。

そのような神奈川県の農業に共通する特長として、生産地と消費者の距離が非常に近いことがあります。「大都市の周辺で行われる農業を“都市近郊農業”といいますが、神奈川県の場合は都市の中に農業がある“都市農業”です。県人口は約900万人という多さで、この中に都市型の生活をしている人と農家が混在していることが、神奈川の持つポテンシャルですね」と三好さんは言います。

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神奈川最大の都市、横浜は約370万人もの人が暮らす大都市ですが、横浜駅から数キロの距離にも農地が点在しています。大都市圏でありながら、生産者と消費者は距離が近いどころか同じ町内にいることもあります。

都市生活を送る住民のすぐ隣に農地があるため、通勤途中や通学途中に、近くを通っているかもしれません。
生活の中に農地がある地域住民にとって、農地でどんな農業が行われているかということは、人ごとではありません。「関心や意識を持ちやすい距離に農地がある」ことが神奈川の可能性の一つだと三好さんは言います。

安全でおいしい野菜を買うことが、安全な野菜作りにつながる

有機農業の基本理念を定める「有機農業の推進に関する法律」が2006年に定められたことを受け、神奈川県では有機農業や有機農産物に関する調査などを開始し、2009年に「神奈川県有機農業推進計画」を策定。有機農業者の取り組み支援や、有機農業参入への支援などが推進されています(※2)。また、2011年度に神奈川県民に行われた調査では、「有機農業で生産された農産物を購入したい」と答えた人は8割以上にのぼることが明らかとなっています。

神奈川県にいる農業者は、2015年度の調査(※3)によると33,458人。農薬を使わないことにこだわる生産者は、さらにこの数より少なくなりますが、三好さんが野菜を仕入れる農家は、肥料などの工夫と努力を重ね、できる限り農薬不使用で栽培しようと取り組んでいる方々です。

農薬に頼らない栽培は手間が掛かり、必然的に価格は多少高くなります。しかし一方で、子どもがいる家庭や健康に気を使っている家庭などでは、「安全でおいしい野菜を買いたい」という思いを持つ方々がいます。この二者をつなぐことが大事であり、神奈川が安全な作物を作る可能性につながると、三好さんは指摘しているのです。

「手間ひまが掛かる栽培方法で愛情をこめて育てられる、おいしくて安全な野菜を選ぶことは、彼らの栽培方針を応援することになるんです。それに、安全な野菜を日常的に食べられるのは、同じ地域に生産者と消費者が住んでいて、双方が出会うから可能になるのです。生産者だけが栽培を頑張ってもそのやり方は維持できないし、守り切れません。だから、そのような安心安全な野菜を消費者が購入することで、有機野菜生産の循環が作られていくんです」

神奈川県なら、都市の中に農業があるという特性があり、生産地と販売先が近くにあります。だから短時間で野菜を出荷でき、消費者は新鮮な野菜をすぐに手に入れられるという、生産の循環が生まれやすくなるのです。

生産者と消費者の循環をつくる

農薬に頼らない野菜作りを心掛ける生産者と消費者の双方の輪を広げるための取り組みを、三好さんは積極的に行っています。

移動販売にやってくるお客さんを連れて、生産者の畑へ出かけ、夏にはブルーベリー農家の農園で摘み取りに行ったり、流しそうめんを生産者と一緒に食べて語り合ったり、様々な催しを行っています。

実際の農園を見ることで、どれだけの作物が大切に育てられているかが消費者に伝わります。さらに生産者と直接話をすれば、農作業や栽培に関する、農家の信念を知ることもできます。三好さんは生産者と消費者を結びつけることが大切であると、その役割を担っているのです。

農薬に頼らずおいしい作物を育てる作り手がいて、それを受け取る買い手がいる。それが横浜や川崎、相模原といった都市を持ちながら、神奈川県が今よりもさらに、安全でおいしい野菜が食べられる場所として広がる可能性を持っているということなのです。

生産者と消費者の輪がもっと大きく広がっていけば、三好さんが言うとおり、神奈川県は「日本で一番安心な作物を作れる」土地になるのかもしれません。

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よこはま里山研究所(NORA)

横浜市南区宿町2-40大和ビル駐車場
三好さん野菜販売時間は毎週火曜日17:00〜19:00頃
http://nora-yokohama.org/
三好さんのコラム(ペンネーム:おもろ童子)
http://nora-yokohama.org/reading/archives/category/okogenoohanashi/

※1 わたしたちのくらしと神奈川の農林水産業(平成29年度版)
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6572/p1147738.html
※2 2015年農林業センサス(農林業経営体調査)神奈川県
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6792/p1102591.html#ichiran
※3 神奈川県有機農業推進計画(平成24年4月改定)
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f6651/

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