フレーバーは豊富ですが、材料はシンプル。
「シフォンケーキの基本の材料は4つだけ。シンプルだからこそ奥が深いんです」と生き生きと話す代表の浦田さんに、シフォンケーキへの思いや素材のこだわりを聞きました。
手作りのシフォンケーキは30種類
-Bon mu誕生のお話を教えてください。
料理やお菓子作りが好きで、友人を招いてホームパーティーを開いたり、ときどき友人にケーキ作りを教えていました。
そして、50歳の時に転機を迎えました。看護師としてこのまま働き続けるか、ケーキのお店を出すかを決めるラストチャンスが訪れました。
私にはパティシエの資格もなければ、ケーキ屋やカフェでの勤務経験もありません。
それでも、「仕事になったら楽しいな」という直感と「食べてもらうのが好き」、友人からの「お店を出せばいいのに」という自分の心の声と周りの友人たちの後押しがありケーキ屋さんの経営をスタートしました。
お店を始めたのは7年前。最初は自宅の小さなスペースでケーキを販売していました。
その時はシフォンケーキだけではなく、ショートケーキやモンブランなどさまざまなケーキを販売していました。そして試行錯誤の結果、シフォンケーキが一番人気があることが分かりました。当時ケーキが7、8種類しか並ばないショーケースを見て、もっとたくさんの種類を販売したいという思いが強くなり、いまの店に3年前に移ってきました。
-最終的にシフォンケーキをメインにされることになったのですね。
基本の材料は4つだけとのことですが、使う食材へのこだわりを教えてください。
シフォンケーキは、ちゃちゃっと焼いて食べるアメリカのおやつです。そのため、作り方はとても簡単で、小麦粉、卵、砂糖、油で作られています。
ショートケーキのようにクリームを塗ったり、フルーツを乗せたりしないので誤魔化しがきかないお菓子でもあります。シンプルだからこそ奥が深いのです。
そして、特にこだわっているのが「卵」です。
卵は平飼いの厳選した有精卵のみを使用しています。
ニワトリたちは養鶏場で小屋の中を自由に動き周り、青草や生野菜などが混ざっている飼料を食べています。
ヒヨコの時は人間の赤ちゃんが離乳食を食べるように、柔らかい飼料を食べますが、胃を丈夫にするために玄米など硬い飼料を食べて成長したニワトリの卵なのです。
こういった自然に近い状態でストレスなく成長したニワトリの卵は、ベーキングパウダーを使わずとも卵の力だけで膨らむ、力強い卵白と味の濃い黄身なのです。
また、小麦粉や油はシフォンケーキに最適なものを選んで使っています。
-シフォンケーキの調理法のこだわりはありますか?
基本の材料は4つですが、そこに様々なフレーバーが加わります。
「何となくその味がする?」という曖昧な出来上がりのシフォンはショーケースには並びません。素材の味に強くこだわって、ひとつ一つ作っています。
作っているとはっきりとした味が出にくいものもあります。そのため、材料を追加し過ぎてしまうとふわっと感やしっとり感が出なくなってしまいます。
きちんと味が出ているのは最低ラインで、膨らみすぎたり、基本の大きさから外れたりしないようトライ&エラーを繰り返します。
お菓子作りには、4つの基本的な混ぜ方があります。シフォンケーキ、バターケーキ、スポンジケーキ、クッキーですが、ヘラを使った混ぜ方一つで変わってきます。
満足できないときはレシピの見直しだけでなく、混ぜ方、焼き方、時間もチェックし、さらにはオーブンの中で置く場所もチェックします。
5個作って1個でも成功すれば、そのシフォンは必ず作れるはずなので原因を追究して
成功率をあげていきます。
-とてもストイックに研究を重ねて生み出されたシフォンケーキたちなのですね。
人気のフレーバーや他のカフェメニューのおすすめは何ですか?
人気のシフォンケーキはバニラ、チョコチップ、紅茶、バナナです。
今の時期はパッションフルーツ、スイートポテトが季節のフレーバーです。
パッションフルーツは夏が旬だと思われがちですが、旬は9月です。また、八王子で作られたものを原料に使っています。オレンジピールは手作りです。いよかんを使用しており、夏ミカンよりアクがなく、皮が柔らかく、発色もいいです。輸入ものはワックスがついているので国産を使用しています。
変わり種の西京みそは、チャレンジする人と定番のフレーバーを選ぶ人に分かれるようです。味噌汁を想像される方もいますが、実際は西京みその優しい甘さが口の中に広がります。また、スイートポテトはシフォンケーキ上部のほんのり焼き色がついた部分が、お菓子のスイートポテトの香ばしさと同じ懐かしい味がします。
移転後は、広いスペースを生かすためにイートインスペースを作りました。シフォンケーキを購入していただく以外に、食事も楽しんでいただけます。一番人気のキッシュはオープンからずっとある看板メニューです。キッシュとサラダのシンプルなプレートですが、食べ応えがあるキッシュなのでお腹いっぱいになります。
-これからどんなことに挑戦していきたいですか?
焼き菓子の種類を増やしていきたいです。
また、シフォンケーキを作るスタッフの育成をしていきたいです。
私がメインで作っていたのですが、年齢とともに体力や集中力が落ちてきています。今後は、志を受け継いでくれるスタッフに任せていきたいですね。
年齢を重ねるとともに、自分の役割が変わってきているのを感じます。
今までは現場でシフォンケーキを作っていましたが、これからは育てていく立場だと思います。
これからは、一番やりたい教室に力を入れていきたいです。
お菓子づくりが好きな方はたくさんいますが、基本の作り方が変わると味がだんぜん変わってくることを知らない人が多いと思います。
私自身は30年前から独学でお菓子を作ってきましたが、10年前にお菓子教室に通ったことがあります。先生に正しい方法で教えていただくと、自分のお菓子が激変したのをおぼえています。
こういった経験を活かして、教室では家庭で作りやすい身近なお菓子をたくさん紹介していきたいです。
-作る側から伝える側へ。夢が広がりますね。お客様へのメッセージをお願いします。
本物の美味しさを届けて行きたいです。
これからも皆さんに喜んでいただけるお菓子を作り続けていきたいです。
そして、教室に来てお菓子づくりの楽しみを知っていただきたいです。
材料はシンプルだけど、奥が深いシフォンケーキ。お店に訪れる度に迎えてくれる豊富なシフォンケーキに心が躍ります。
家に持ち帰って食べるもよし、ナチュラルな雰囲気の店内でその味を楽しむのもよし、さらには自分で作って出来た喜びを噛みしめるもよし。
お菓子のさまざまな楽しみ方、受け取り方ができるお店です。
■Bon mu
東京都八王子市明神町2-26-13
TEL:042-649-8056
営業時間:10:00~20:00(カフェはラストオーダー17:00、営業は18:00まで)
定休日:日曜日
HP:http://bon-mu.com/