水は農作物の「命」
農作物の生育のために欠かせないのが「潅水」という作業です。潅水の効果は、植物に必須な水を与えるだけではありません。がい虫の防除、凍霜害、日焼け防止の他、野菜の糖度などにも潅水は影響を与えます。
例えば、トマトは水やりの量を適度に抑えることで作物にとって厳しい環境を作り、結果的に糖度が高くなり、甘くなると言われています。
どの作物にとっても時期を問わず、適切な水量コントロールが求められるため、農家にとって経験や知識が試される部分です。農産物の収量や質を決める要素のひとつです。
場所や目的に応じたさまざまな潅水システム
今回ご紹介するのは、40年の歴史を持ち、個々の農家に適した潅水システムを提案してきた株式会社サンホープです。
同社は、国土の半分を砂漠で占めるイスラエルの農業技術に40年前から注目し、少量でも効果を出す潅水技術を日本でも普及するため、場所や目的に応じた潅水システムを開発してきました。
潅水システムの例をご紹介します。
露地栽培など広範囲に水をまくインパクトスプリンクラー
頭上潅水のハンガースプレータイプ
凍霜害防止の技術を初めてスプリンクラーで実現
1983年に宮崎県の茶農家「上水園」がこれを使用し、宮崎日日新聞社の農業技術賞を受賞しています。
半円を描いて水をまけるタイプ(散水亭 半円楽)
傾斜地でも上下に遍なく潅水できるタイプ
潅水と液肥を組み合わせて養液栽培ができる簡易養液栽培キット(肥家効蔵)
小・中規模農家から支持を集める「電池式潅水タイマー」
前述の潅水システムの一つとして、長年愛用されてきたのが、サンホープのロングセラー製品「電池式潅水タイマーのスプリンクラーシンカー」です。
1台につき、乾電池1個でタイマーを設置できるため、電源設備がない圃場においても簡易的な潅水システムを作ることができ、30年前の発売以降、近年では年間平均約300台、トータルで約3,000台を売り上げています。
同社によると、主に小、中規模の農家が簡易的な潅水の自動化を行うために取り入れることが多く、ビルや公園等の緑化対策のために、この潅水タイマーが使用されていることも少なくないそうです。電源設備を作る場合と比べ、設置コストを1/2から1/3ほどに削減することができます。
昨今、クラウドを用いて、潅水をプログラム制御するサービスも登場していますが、「費用対効果で少しでもコストを抑えたい」「そもそも資金に余裕がない」という農家に適した製品なのです。
Bluetoothとアプリを導入しオリジナルプログラムで自動潅水
2017年5月、電池式潅水タイマーがリニューアルされました。
日本で初めてBluetooth(デジタル機器の近距離間データ通信に使う無線通信技術)を搭載し、スマートフォンやタブレットからアプリを利用して水量や時間を自動プログラムで設定し、潅水作業を行うことができます。
機械はイスラエルから輸入し、サンホープがアプリケーションの言語を日本語へ翻訳しました。また、日本国内でのBluetooth使用時に必要となる国内電波法の認証を、メーカーと認証会社の間にサンホープが入って行っており、同社が国内独占販売しています。
電池式潅水タイマーの使い方をご紹介します。
1. スマートフォンやタブレットに専用アプリをダウンロードして、農作物に合った潅水のプログラムを設定します。水やりの開始時間から水量までを設定でき、ワンタッチで潅水を止めることもできます。
2. Bluetoothの無線を通じて、プログラム指示がタイマーに送られます。(Bluetoothは5メートル範囲内で作動します)
3. プログラムされた時間にタイマーが起動して、接続したスプリンクラーや点滴チューブから潅水されます。潅水の設定情報がアプリケーション側に設定されているため、圃場、ハウスを離れているときでも、潅水スケジュールを確認できます。
取り付け部口径は、20ミリ(蛇口取り付け型)、25ミリ、40ミリ、50ミリの4タイプ。最大流量は1分あたり20リットルから669リットル(50ミリタイプの場合)までを設定できます。
Wifiや電源のない場所でもプログラムした潅水ができる
全国どこでも活用できる電池式潅水タイマーですが、リニューアル後の製品は、Bluetoothが搭載されているため、インターネット環境が整っていない場所や、wifiのつながりにくい場所でも安心して導入できるのが強みです。電波干渉に強く、消費電力が少なくて済むのもうれしいところです。「アプリ画面がカラーで大きくて使いやすい」といった感想があり、好評を博しているようです。
また、「リニューアル以前の製品と価格差がないのも良い」というコストパフォーマンスの良さもあります。小規模から農業を始めたい新規就農者などにとって、心強いものでしょう。
株式会社サンホープ
http://www.sunhope.com/